【研究成果のポイント】
◆with コロナ/after コロナ時代に必要とされる学生の海外におけるリスクに関する理解度の向上に向けて、理解度が見えるEラーニング・プログラムを開発
◆一方通行の危機管理研修から、学生の理解度を把握した双方向のリスク対策研修へ
◆来日する留学生・技能実習生向けの多言語で危機管理Eラーニング・プログラムも提供予定
【概要】
大阪大学大学院国際公共政策研究科グローバル・リスク・ソリューションズ・センター(GRSC)(センター長:星野俊也教授・前国連大使)では、研究主幹の塚本俊也特任教授(常勤)が企業(6th株式会社)との連携による共同研究を2019年9月から開始し、今回その成果の一つとして、日本から海外に出る学生、インターンシップなどの短期研修、国際ボランティア活動などに参加する学生のための危機管理Eラーニング・プログラムを開発しました。
本プログラムは、日本の教育機関から海外に留学、研修、インターンシップ、ボランティア活動、旅行などに出る学生のリスク意識やリスク対応能力を向上させることを目的としています。
このEラーニング・プログラムは、学生自身のリスク管理の理解度をA-Dランクで数値化して「見える化」することにより、各自が自分のリスクに対する理解度のレベルを把握することができます。また、大学全体、学部、留学プログラムごとに、各学生の海外での学びに伴うリスクの理解度を分析することが可能で、その分析結果に基づいた助言を学生に提供することが出来ます。
with コロナ/after コロナ時代の教育機関においては、グローバル教育や世界を知る学びを提供する上で、学生たち自身が世界で起こっているリスク、災害など自然現象について学び、さまざまなリスク要因から自身を守る意識や能力を高める教育も必要な時代になってきています。本プログラムはそうしたニーズに応えるものとなっています。
この学生向けのプログラム「グローバル活動(留学・研修など)に参加する学生向け」は、11月中に企業によってシステム化し、試用する段階に入ります。大学・教育機関には、2021年から提供を行えるように進めています。将来的には、Webアプリで提供し、日英2言語で利用可能とします。
また、このプログラムとは別に、学生のみならず、派遣する側の大学の教職員向けの危機管理Eラーニング・プログラムを日英2言語で開発中です。
【研究の背景】
通常、日本の大学など教育機関では、出発前の学生のリスク研修は、出発直前に1~2時間の研修を受けるだけで、学生がどこまで理解しているかを十分に確認することのないままに派遣してしまっているのが実情です。リスクに関する理解は学生任せで、学生たちがどこまでリスクに対して具体的に理解しているかを大学側が把握できていない場合が多くあります。また、大学が行う研修は大学が認定する正規の交換留学プログラムや研修に参加する学生を対象としたものが多く、個人的な留学や海外研修、インターンシップ、ボランティア活動などの一般的な海外プログラムに参加する学生まで手が届いていないケースが多いようです。他方、その学生たちがいったん海外に出て、災害や犯罪に巻き込まれたりすることは、大学にとってのリスク・マネジメントの課題ともいえます。背景には現状の大学教育においてリスク・マネジメント教育が不十分であることが考えられます。
本研究グループでは、インドネシアにおける防災対策、リスク・マネジメントを研究してきており、日本では、熊本地震以降、日本国内の災害時の多言語情報を提供しており、インバウンド対策で関西空港周辺の防災対策を泉佐野市役所などと連携しています。
【開発中のEラーニング・プログラムの内容】
大阪大学GRSCで提供するEラーニング・プログラムの内容は下記のようなものです。この度、with コロナ/after コロナの状況を考え、基本的なコロナ対策、または一般的な感染症対策にも力を入れました。
(1)グローバル活動(留学・研修など)に参加する学生向け(日英)
A:海外に出るための基礎知識
B:旅行前に準備しておくこと
C:テロに対する心構えに関する質問
D:トラブルの事例と対策
E:禁制品や制限品目に関する質問
F:宗教や習慣に関する質問
G:麻薬に関する質問
H:交通に関する質問
I:海外で災害に見舞われた時の質問
J:健康に関する質問
K: 未知なる感染症に関する質問(新型コロナウイルス、新型インフルエンザなど)
(2)海外に留学生を派遣する教職員向け(日英)
A 教職員が準備する安全対策(渡航前・渡航後)
B 学内の危機管理セミナーの実施について
C 留学(研修)の実施/中止の判断
D 学生の渡航後の安全対策
E 危機管理(危機災害発生時)
F 緊急対策チームおよび危機対策本部の役割
G 海外研修・引率教員の注意事項
H 海外滞在中の注意事項について
I コロナ禍以降の感染症対策
J 新型コロナウイルスでの新しい生活様式に関して
【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】
本研究開発によって、大学・教育機関において with コロナ/after コロナ時代の海外での危機管理の在り方を再認識し、学生たちの弱点などを分析し、今後さらにアップグレードして、一人でも多くの学生、教職員が安心安全に海外での勉学・経験・学生対応を計画し、準備が出来るようになることが期待されます。
2021年度中に、来日する留学生、技能実習生向けなどへの多言語によるEラーニング・プログラムも大学・教育機関に提供できるように準備中です。
【現在、開発中のEラーニング・プログラム】
(1)グローバル活動(留学・研修など)に参加する学生向け(日英)<現在試用段階>
(2)海外に留学生を派遣する教職員向け(日英)<2021年1月末利用開始>
*この教職員向けのEラーニングは(1)の学生向け利用の大学には無料で提供予定。
(3)海外から日本に来る留学生向け(日本語・多言語)<2021年度利用開始予定>
(4)海外に長期・短期出張するビジネス向け(日本語のみ)<2021年度利用開始予定>
【特記事項】
・6th株式会社との共同研究プロジェクト内容は、下記参照
https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/grsc/project/
・以下 URL よりサンプルをお試しいただけます。
https://6thosakau.typeform.com/to/HNjHetfC
※ 「グローバル活動(留学・研修など)に参加する学生向け」のEラーニング・プログラムは、試用版が2020年11月に完成しており、試験実施を行っています。
【研究者のコメント】
いまや世界は with コロナ/after コロナ の時代に入り、危機管理の中で特に見えない敵と戦わなければならなくなった。ますますリスクを適切に管理することが重要な時代になり、留学生も現地の社会や文化のみならず、リスク要因にもしっかりと目を向けていかなければならなくなった。また、日本に来る留学生や技能実習生にも災害の多い日本での生活の中で安心安全に過ごせる情報を提供していきたいと願っている。
GRSC HP:
https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/grsc/
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/