日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、北海道古宇郡(ふるうぐん)泊村、および古宇郡漁業協同組合とで、2019年11月に古宇郡泊村地区に鉄分供給鉄鋼スラグ製品「ビバリーⓇユニット」を埋設し、磯焼けで藻場が失われた海域を再生する「海の森づくり」をスタートしています。本年7月、「ビバリーⓇユニット」を埋設した海域において海藻の再生が確認でき、豊かな海の創造による村の水産振興がさらに一歩前進したのでお知らせします。
泊村の海域では、かつて、ウニやアワビなどの魚介類が豊富に採れていましたが、近年、コンブやワカメなどの海藻類が失われ、不毛の状態となる磯焼けによって魚介類を育む藻場が失われ、地元の水産業に影響が出始めていました。そこで、日本製鉄が2002年から北海道増毛町で行ってきた「海の森づくり」を参考に、2018年秋に、日本製鉄と泊村役場、古宇郡漁業協同組合の3者で藻場再生の実証実験を開始しました。その結果、鉄分不足が磯焼けの要因となっていることを確認し、2019年11月に鉄分供給鉄鋼スラグ製品「ビバリーⓇユニット」を2カ所の海岸線に合計3トン埋設しました。そして本年7月に現地の海藻繁茂状況を調査した結果、ビバリーⓇユニット埋設位置近傍の海底で、ホソメコンブ・ナンブワカメ・褐藻植物など多様な海藻が再生していることがわかりました。再生した藻場は、CO2 の吸収・固定作用もあることがわかっており、ブルーカーボン※生態系として、地球温暖化対策への寄与も期待されています。
※ブルーカーボン:海の生態系によって吸収・固定されるCO2のこと。陸上の森林などに吸収・固定されるCO2であるグリーンカーボンに対して、ブルーカーボンと呼ばれている。
▼北海道泊村長 髙橋鉄徳氏コメント
泊村は、日本海に面した漁業の村として栄え、泊・盃の二つの漁港を中心として、古きより海から多くの資源を享受してきました。しかし、近年の磯焼け等により、魚介類を育む大切な藻場が失われ続けてきたことにより、水産資源に大きな影響が出ており、漁獲量の減少等が懸念されているところです。
このような状況の中、この藻場再生プロジェクト「海の森づくり」が本格始動したことにより、失われていた藻場が少しずつ再生していることを確認しました。ビバリーⓇユニットを埋設した近傍では、見てはっきりとわかるくらいまで海藻が再生し、磯焼け以前にはコンブで真っ黒になっていた海辺を思い出し懐かしく感じております。これからも、藻場の再生事業を継続させていき、海の恵みが多くの人に届くことを期待し、さらには泊村の浅海漁業が発展することを願っています。
▼古宇郡漁業協同組合代表理事組合長 池守力氏コメント
磯焼けは日本全国の課題ですが、特に北海道の日本海沿岸海域においては、長年の磯焼け現象によって海藻類の繁茂状況が悪化し、浅海資源であるウニやアワビに大きな影響を与えております。
このような課題に対し、当組合においては2018年から失われた海藻を復活させるために日本製鉄と泊村と共同で、臼別海域の前浜にて海の森づくりをスタートさせました。2年目となる今年も、実施箇所においてはコンブの繁茂状態が良いことから、今後に期待を持ちながら引き続き活動を継続してまいります。海藻藻場は、ブルーカーボン生態系としてCO2を吸収・固定することも期待されていることから、海の森づくりの取組みは、地球温暖化の抑制にも貢献できるものと思っております。
日本製鉄は、2002年より北海道増毛町をはじめとして、日本全国38か所で「海の森づくり」によって藻場の再生に取り組んできました。日本各地の海岸約5,000kmにわたって、コンブやワカメなど海藻類が失われ、不毛の状態となる磯焼けが起きています。磯焼けの原因は、水温の上昇やウニなどの食害などのほか、鉄をはじめとする栄養分の不足もその一因とされています。日本製鉄は、鉄分不足の解消に向けて、製鉄プロセスにおける副産物である鉄鋼スラグと腐植土の混合物をヤシの繊維で編んだ袋に入れることで、鉄イオンを腐植酸鉄として長期間持続的に海藻まで届けることを可能とするビバリーⓇユニットを開発しました。ビバリーⓇユニットを磯焼け地域に設置することで、これまで森から川を通じてコンブなどの海藻類へと届けられてきた腐植酸鉄を人工的に生成し、海藻へと供給する藻場再生プロジェクトに日本製鉄は取り組んでいます。
日本製鉄は、今後も、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した「海の豊かさを守ろう」活動を通じて、これからも社会の発展に貢献していきます。
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