世界に先駆けて広域・大規模な量子暗号通信網の実用化・普及を目指す
当社をはじめとする12機関
(注1)による、総務省の令和2年度委託事業「情報通信技術の研究開発に係る提案の公募-グローバル量子暗号通信網構築のための研究開発-」への共同研究提案がこのたび採択された
(注2)ことを踏まえ、7月より研究開発を順次開始します。
(注1)参加機関:株式会社東芝、日本電気株式会社(NEC)、三菱電機株式会社、古河電気工業株式会社、浜松ホトニクス株式会社、東京大学、北海道大学、横浜国立大学、学習院大学、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)
量子暗号通信技術は、量子力学の原理に基づき盗聴の不可能な絶対安全な暗号通信を可能にする技術で、世界各国で活発な研究開発が進められています。
東芝では英国ケンブリッジ研究所で基礎研究を開始して以来精力的に研究開発を進め、近年では実環境下で世界最高の鍵配信速度を達成
(注3)するとともに、国内で全ゲノム配列データの伝送による実証
(注4)や、世界各国のパートナーとの実証実験など、社会実装に向けた検証を行っています。
本委託事業では、量子暗号通信の国家レベルのグローバルな規模での普及を目指し、100台以上の量子暗号装置および万単位のユーザ端末を収容可能な、より広域かつ大規模なネットワークの実用化に必要となる技術開発および検証を行います。具体的には、(1)量子暗号通信ネットワーク上の各リンクの高速化、長距離化、高可用性
(注5)を実現する「量子通信・暗号リンク技術」、(2)暗号鍵管理システムの堅牢化・耐タンパー性
(注6)の保証、および量子暗号通信の機密性・完全性・可用性を向上させる「トラステッドノード技術」、(3)量子暗号通信の地上系での更なる長距離化、およびより安全な暗号鍵の中継を可能にする「量子中継技術」、(4)広域・大規模な量子暗号通信網の管理・制御を行う「広域ネットワーク構築・運用技術」の4つの技術課題を12機関の連携により実施します。研究期間は令和6年度までの5年間の予定で、初年度の総務省における実施予定額は14.4億円となっています。
東芝は代表研究機関として12機関の研究開発成果をとりまとめる役割を果たすとともに、上記4つすべての技術課題の研究開発に参画します。具体的には、現在敷設環境で動作中の量子暗号装置と比較し鍵配信速度を3倍程度高速化する技術、鍵配信の更なる長距離化を目的とした全光量子中継方式の基盤技術、配信された暗号鍵データを安全に保持管理することを保証するストレージシステムセキュリティ技術などの開発を行うとともに、5Gなどの広域ネットワーク機器と量子暗号技術との結合検証等も実施します。本研究開発を通じて、日本の量子暗号通信技術の国際競争力を確固たるものにするとともに、より多様かつ広域・大規模なネットワークでの量子暗号通信サービスの実用化を目指します。
(注2)https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000306.html
(注3)https://www.toshiba.co.jp/about/press/2018_08/pr_j2701.htm
(注4)https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/2001_01.htm
(注5)高可用性:盗聴攻撃や災害等への高い耐性
(注6)耐タンパー性:コンピュータシステムの内部構造の解析のしにくさ、見破られにくさのこと。ここでは特に、量子暗号装置で生成された暗号鍵が電気的に保管・処理されている鍵管理サーバの安全性を指す。