東京大学医学部附属病院と全国の協力医療機関では、スキルス胃癌、膵癌、大腸癌を対象として、腹膜播種を抑えるための腹腔内化学療法の研究開発を行っています。この度、より質の高い研究開発をより迅速に遂行するため、基金を立ち上げました。患者さんにより良い治療を提供できるようにするため、全国の皆様のご支援を賜りたいと考えております。
東京大学医学部附属病院と全国の協力医療機関では、スキルス胃癌(注1)、膵癌、大腸癌の克服を目指して、新しい腹腔内化学療法の研究開発を行っています。この度、より質の高い研究開発をより迅速に遂行するために、基金を立ち上げました。
難治性がんの代表であるスキルス胃癌は、手術で切除できた場合でも、術後に腹膜に再発することが多く、5年生存率は約20%に過ぎません。膵癌は早期診断が難しく、肝臓や腹膜などへの転移を伴うことが多いため、手術で治せる患者さんは限られています。大腸癌でも腹膜転移は診断が難しく、手術で切除できないほど進行して発見されることが多くなっています。これらの癌においては化学療法が重要な役割を担っていますが、現在の標準的な治療では腹膜播種(注2)に対する効果は十分ではありません。これまでに当院では、腹膜播種を伴う胃癌、膵癌、大腸癌を対象として、抗癌剤を直接腹部に注入する腹腔内化学療法(注3)の臨床研究を主に先進医療制度下に実施し、良好な成績を報告してきました。現在、より有効な治療法を開発するため、以下の3つの臨床研究を実施または計画しています。
1.医師主導治験「4型進行胃癌に対する術後または周術期補助化学療法としての全身・腹腔内併用化学療法と全身化学療法の無作為化比較第III相試験」(2020年7月より開始)
<試験情報>
http://plaza.umin.ac.jp/~phoenix2/scirrhous/
2.先進医療「腹膜播種を伴う膵癌に対するゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル点滴静注+パクリタキセル腹腔内投与併用療法の第I/II相試験」(現在実施中)
<試験情報>
https://todai-tansui.com/research/announcement20190710.pdf
3.医師主導治験「腹膜播種を伴う大腸癌に対する全身・腹腔内投与併用療法の第II相試験」(現在計画中)
将来的に全国の医療機関で腹腔内化学療法を保険診療として実施できるようにするためには、臨床研究を国が定めた厳しい基準に従って実施し、有効性を証明する必要があります。臨床研究は東京大学医学部附属病院の研究費を用いて実施しますが、より質の高い研究をより迅速に実施するためには、更に研究費が必要な状況です。
現状では治すことが難しいスキルス胃癌、腹膜播種を伴う膵癌、大腸癌の患者さんにより良い治療を提供できるようにするため、ご支援を賜りたいと考えております。
東京大学医学部附属病院 病院長 瀬戸 泰之
外来化学療法部 石神 浩徳
胃食道外科 山下 裕玄
消化器内科 中井 陽介、高原 楠昊
大腸肛門外科 石原 聡一郎、室野 浩司
<東京大学基金>
https://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt117
【注釈】
注1:スキルス胃癌
胃癌には様々な形のものがありますが、はっきりとした潰瘍やその周りの盛り上がりがなく、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃癌を4型胃癌(スキルス胃癌)といいます。他のタイプの胃癌と比較して、若い方や女性に多く、腹膜播種を起こしやすいという特徴があります。
注2:腹膜播種(ふくまくはしゅ)
胃、腸、膵臓などの臓器とお腹の壁の内側は腹膜という膜で覆われています。臓器にできた癌が進行すると、癌の表面から癌細胞が腹腔内にこぼれ落ち、腹膜にくっついて大きくなる転移を起こすことがあります。このような転移を腹膜播種といいます。一般的な全身化学療法では、ごく少量の抗癌剤しか腹膜播種に届かず、十分な効果は得られません。
注3:腹腔内化学療法(ふくくうないかがくりょうほう)(図1)
腹膜播種が散らばっている腹腔の中に抗癌剤を直接注入する治療法です。お腹の皮膚の下に埋め込んだ腹腔ポートから生理食塩水に溶かした抗癌剤を注入します。全身化学療法と比べて極めて多い量の抗癌剤を直接腹膜播種に届けることができ、より効果的です。また、副作用が少ないという利点もあります。
【お問い合わせ先】
<本件に関するお問い合わせ先>
東京大学医学部附属病院 外来化学療法部
担当:石神 浩徳(いしがみ ひろのり)
電話:03-3815-5411(内線 37088)
E-mail:ishigami-tky@umin.net
<広報担当者連絡先>
東京大学医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター
担当:小岩井、渡部
電話:03-5800-9188(直通)
E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/