日本産トキとともに、トキウモウダニが絶滅していたことが明らかに



鳥にとっては良い働きをするウモウダニは、鳥と相利共生していると考えられています。法政大学島野智之教授と東邦大学の脇 司講師は、国内で400羽程度に増え野性復帰した中国由来のトキについて、調査可能な限りのウモウダニ(約1万7000個体)を調査しました。その結果、すべてトキエンバンウモウダニで、トキウモウダニは全くみつかりませんでした。トキウモウダニは、日本では(おそらく地球上からも)絶滅したと結論づけました(5月発行の学術誌に受理済・掲載予定)。
これをうけて、2020年3月27日公開された環境省レッドリスト2020でのトキウモウダニのランクは「野生絶滅(EW)」から「絶滅(EX)」に変更されました。宿主である中国の個体を始祖として繁殖したトキは日本の空によみがえり2019年に「野生絶滅(EW)」から「絶滅危惧IA類(CR)」にランクダウンしていました。





 トキは、古来はロシア、韓国、日本、中国の数カ所に広く生息していました。しかし、トキウモウダニは、ロシア沿海地方と中国国境に位置するハンカ湖から新種として記載され、ロシア、韓国、日本のトキについていたと予想されています。現在、日本では中国陝西省のトキを借り、これらを始祖として繁殖に成功し野生復帰が果たされ、日本の空にトキが戻ってきました。



 ウモウダニはさまざまな種の鳥の羽に共生するダニで、鳥を傷つけることはなく、羽の古い油やカビなどを食べて生活していると考えられています。トキ Nipponia nippon は学名(ニッポニア・ニッポン)に''日本''を冠する日本を代表する鳥の1つです。日本在来のトキには、トキウモウダニ Compressalges nipponiae とトキエンバンウモウダニ Freyanopterolichus nipponiae の2種のウモウダニがついていました。これら2種は、いずれもトキ以外の鳥種からは見出されていません。

 法政大学の島野智之教授と東邦大学の脇司講師は、環境省のレッドリスト見直しに係る現地調査の一環で、国産トキで1995年に死亡した「ミドリ」ならびに最後の日本産個体で2003年に死亡した「キン」の羽合計17枚を調べました。
 その結果、トキウモウダニCompressalges nipponiae 68個体とトキエンバンウモウダニFreyanopterolichus nipponiae 35個体を確認しました。また、あわせて1999年以降に中国からトキを用いた人工繁殖が行われている佐渡トキ保護センターにおいて、調査できる可能な限りの2018年のトキの羽686枚を調べたところ、17,800個体ものウモウダニが見つかりましたが、それは全部トキエンバンウモウダニでした。



 この結果から、今の日本にいる中国産のトキには、トキウモウダニは付いておらず、トキウモウダニは日本産トキとともに絶滅していたと考えられました。
 このように、ある生物が絶滅すると、その種とかかわりあってきた他の生物も、同時に失われてしまうという例となってしまいました。

■発表雑誌:Journal of the Acarological Society of Japan(日本ダニ学会誌)
 論文タイトル:A report of infection in the crested ibis Nipponia nippon with feather mites in current Japan.(英文)
 著者: Waki, T. & Shimano, S.*(*: 責任著者)



【本件に関するお問合せ】
 法政大学自然科学センター・国際文化学部 教授 島野 智之
 E-Mail: sim@hosei.ac.jp
 ※新型コロナウイルス感染症による政府の緊急事態宣言に伴い、教職員の出勤を制限しているため、申し訳ございませんが、お問合せはメールのみとさせていただいております。


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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