摂南大学(大阪府寝屋川市)理工学部住環境デザイン学科の川上比奈子教授と生命科学科の松尾康光教授が、 植物の葉緑体を利用した光バイオ燃料電池を建築の素材とした「光合成建築」を提案している。国内外の技術展で注目を集めたのをはじめ、このほど英国雑誌「Impact」で取り上げられ、「エネルギーと建築環境の両分野に革命を起こす可能性を秘めた研究」と紹介された。2月25日に大阪工業大学OIT梅田タワーで開催した両教授によるメディア向け説明会には、テレビ、新聞などのメディア8社が出席し、研究への関心の高さを示した。
植物の葉緑体には光エネルギーを利用して水を酸素と水素に完全分解する光化学系II複合体(以下PS II)が存在するが、松尾教授はPS IIを含む溶液を燃料に電解質には魚の鱗という廃棄物を利用したバイオ燃料電池を開発した。従来の燃料電池水素極には不可欠な白金触媒を使用しなくても、蛍光灯の光でも発電する優れものだ。この電池をパネルやチューブ状にして屋根や壁、窓などの建築材料に利用できると川上教授が注目し、共同研究につながった。
これまでの研究では、わずか30mlのPS II溶液でデジタル時計やLEDランプを1カ月以上点灯させることが分かっている。概算すると光合成パネル16平方メートルから20Wの発電が可能で、住宅に使えばパソコンやスマートフォンの充電、LED照明に十分使え、災害時にも対応可能。15.5分で1lの酸素(ケヤキ1本に相当)を発生させる。伐採樹木や廃棄野菜から酸素と水素をつくり発電するため「光合成建築」と名付けた。太陽光パネルとは違い、このパネルは透過性があるため、緑の光で覆われたデザイン性にも優れた建築が可能である。
メディア向け説明会では両教授がスライドや模型などを使って光合成建築の理念や光バイオ燃料電池のメカニズムのほか、光合成建築の具体例や今後の展望などについて解説した。記者からは光バイオ燃料電池の燃料となる溶液の生成方法や、建築とエネルギー供給の機能を兼ね備えた「植える建築」の実用化に向けた課題などについて多くの質問が寄せられた。
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