みらかホールディングス株式会社(東京都新宿区、代表執行役社長:竹内 成和、以下「みらかHD」)の子会社である合同会社みらか中央研究所(東京都八王子市、職務執行者:小見 和也、以下「みらか中研」)は、医療法人鉄蕉会亀田総合病院及び亀田IVFクリニック幕張と共同で、顕微授精における精子の判別を支援するAIの開発に成功いたしました。
近年、女性の社会進出などライフスタイルの変化や挙児希望時期の高齢化などにより、体外受精をはじめとした不妊治療の需要が高まっております。不妊治療の一つである顕微授精では、胚培養士※1が顕微鏡観察を通して精子の形態・運動性を確認し、それらが良好であると判別した精子を回収し、受精に使用しております。
但し、その判別作業は、胚培養士の目視作業であること、さらに判別が胚培養士の知識・経験に依存することから、ばらつきが懸念されております。また胚培養士が評価技術を習得するのは容易ではなく、作業負荷が大きいことから、各医療機関において胚培養士の人材不足や働き方改革等が課題に挙がっています。
亀田総合病院、亀田IVFクリニック幕張、みらか中研は、2018年11月より胚培養士の作業効率化、判別の客観性、及び再現性の改善を目的とした顕微授精支援AIに関する共同研究を開始いたしました。本共同研究においては、管理胚培養士※1が判別した精子をディープラーニング※2を用いて機械学習させ、その結果、(1)形態に異常がある精子を高い精度(正解率 89%)で判別可能とし、(2)その判別の根拠となる異常部位を可視化することに成功いたしました。
本技術により、胚培養士は、機械学習モデルが検出した形態に異常のある精子につき、その判断基準を確認しながら予め除外することで、顕微授精に用いる精子の判別が容易となることから、顕微授精の作業効率化が期待されます。今後は、正常受精率等の臨床成績の向上を支援する機械学習モデルを探索するとともに、複数施設から協力を頂き、本技術の汎用性の向上、早期実用化を目指します。
みらか中研は、本技術をはじめとする医療及びヘルスケアにおけるオペレーションのAI化・標準化を通して、医療の最適化に貢献してまいります。
以上
本内容については、第37回 日本受精着床学会総会・学術講演会(2019年8月1日~2日、京王プラザホテル・東京都新宿区)において、演題名「深層学習法を用いた精子形態異常検知の有用性の検討(発表者:山下英俊/みらか中研)」として口頭発表いたしました。
※1. 胚培養士、管理胚培養士:日本卵子学会が認定する生殖補助医療の資格。胚培養士は生殖補助医療胚培養士とも呼ばれ、胚の培養だけでなく、卵子や精子の調整や保存に加え体外授精等も行う不妊治療において欠かせない存在です。胚培養士のうち、直近の学術論文の発表数や生殖補助医療の実施数等の優れた条件を満たした者が管理胚培養士として認定されております。2019年5月31日現在、1,255名の胚培養士と共に、19名の管理胚培養士が有資格者として登録されております。
※2. ディープラーニング:人間の神経回路を模倣した多層のニューラルネットワークから構成された、機械学習モデルの一種で、深層学習とも呼ばれております。近年、画像認識をはじめとして多くの分野で優れた性能を発揮し、その産業応用が進んでおります。