日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、公益社団法人発明協会による令和元年度全国発明表彰において「固体潤滑被膜を用いた油井管用ねじ継手の発明」にて「発明賞」を受賞しました。
全国発明表彰は、発明の奨励・育成を図り、我が国科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的として行われている伝統と権威のある賞です。なお、表彰式は本年6月10日に、ホテルオークラ東京にて行われます。受賞した発明の概要は以下のとおりです。
1.受賞案件:「固体潤滑被膜を用いた油井管用ねじ継手の発明」
2.受賞内容
【発明賞】
日鉄テクノロジー株式会社 尼崎事業所技術営業部 上席主幹 後藤 邦夫
(元 技術開発本部 鉄鋼研究所鋼管研究部)
技術開発本部 鉄鋼研究所材料信頼性研究部 部長 上村 隆之
技術開発本部 技術開発企画部技術企画室 上席主幹 高橋 克
技術開発本部 鉄鋼研究所鋼管研究部 主幹研究員 松本 圭司
鋼管技術部 岩本 理彦
鋼管技術部 上席主幹 今井 竜一
3.本発明の背景
油井管締結用のねじ継手には、ねじ部の焼付き防止のため環境負荷が大きいグリスが塗布されてきました。このグリスが、海上プラットフォームでの掘削時に海中に流れ出すことが問題となっていました。これに対して、環境対応型グリスも開発されましたが、耐焼付き性能が低下するなどの課題が残っていました。
4.本発明の概要
本発明は、ねじ部に施工する各種固体被膜を従来にない発想で組合せることによって、海中へのグリスの流出を防ぎつつ、高機能性(防錆性、耐焼付き性、耐衝撃性、気密性)を実現しました。
ピン(油井管本体側雄ねじ)は、加熱が不要な紫外線硬化型樹脂に着目し、従来は難しかった紫外線硬化を妨げない防錆剤とその粒径および配合量の最適化により透明で疵検査の容易かつ高い防錆性を有する被膜を考案しました。
また、ボックス(ねじ継手側雌ねじ)は、耐衝撃性を担保する特殊金属めっきと、さらに防錆性と耐焼付き性を担保する粘塑性型の高潤滑固体被膜の組み合わせを考案しました。同被膜の基剤にはガラス転移点の異なる各種ホットメルト型基剤(ポリマー、ワックスなど)を配合し、保管時には固体被膜でありながら、摩擦時に被膜が流動することで高い潤滑性を発揮しています。
図1:本発明の特徴
図2:本発明被膜の外観と構成
5.本発明の成果
本発明により、海上油田・ガス田の開発における環境負荷ゼロを実現し、環境規制の厳しい地域での開発を継続可能とし、将来にわたるエネルギー安定供給を実現するとともに、地球環境保護に寄与しております。
また、本発明を活用した製品CLEANWELLⓇDRYは、グリスの洗浄・再塗布無しで油井管同士の繰り返し締結が可能であることから、海上のみならず陸上での操業においても滑り・転倒防止による作業者の安全確保に貢献します。また作業能率の向上による油田開発プロジェクト全体でのコスト削減にも貢献しております。
日本製鉄は、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献して参ります。
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以 上