2018年6月25日
ロシアで開催されているワールドカップに世界中が夢中になっているその間にも、シリア南部ではロシアの支援を受けたシリア政権軍による空爆や地上攻撃が続いています。国際社会の関心が低くなることを狙っての攻撃なのでしょうか、シリアの市民生活や命を脅かし、多くの避難民を生みだす戦闘の激化に対し、世界の医療団(MdM: Médecins du Monde )は深い憂慮と懸念を表明します。人道危機は今も続いています。国際人道法に照らして、市民の保護、市民の医療アクセスを確保するために医療施設と医療者の保護を、国際社会に対して要請し、そして警鐘を鳴らし続けます。
現地から届いたニュースは信じ難いものでした。昨年、同地域では見せかけの停戦合意が取り交わされ、緊張緩和地帯であったはずのダルアーが再び攻撃されています。6月24日夜、ボスラの医療施設が破壊され、激しい空爆がダルアーの街を襲いました。激しい攻撃で市民が犠牲になり、多くの負傷者が出ています。また、少なくとも12,000人の避難民が、ダルアーからクネイトラへと、ヨルダン国境へと逃げています。それら地域には、避難できるシェルターが足りていません。
ダルアーからの逃げ道となる東、西、および北部への道にも攻撃が続き、およそ75万の人々が逃れることができずにダルアーにとどまっているとされます。ヨルダンの国境は閉鎖されました。ダルアー東部全域に非常事態宣言が発令されました。また、現地のMdMスタッフは、国際法で禁止されている非通常型武器の使用が確認されたと証言しています。
「一連の暴力によって、医療従事者たちは新たな困難に直面しています。例えば、ダルアー東部にある病院、ここは透析を含む2次的ケアを提供する地域で唯一の病院ですが、攻撃によって負傷した多くの患者が治療を受けに押し寄せています。ますます激しくなる暴力を前に、すべての患者に対応しきれず、かつ同時に自分の家族をも守らなくてはならない状況に立たされています。スタッフの数人は、自らの命を優先し、その場、医療施設を離れる決断をせざるを得ない状況にも追いやられました。少し前にスタッフの助産婦と彼女の幼い娘が砲撃に巻き込まれ、命を落としました」あるMdMスタッフの証言です。
避難所、キャンプとされる場所では、医療スタッフが診療活動を行っています。MdMは、同地域の5つの医療施設にて、医薬品の提供や技術的なサポートを行っています。
世界の医療団フランスの理事長フィリップ・ド・ボトンは、次のように述べています。
「世界の関心がロシアでのワールドカップに集まるなか、同時にシリア南部で起こっている激しい暴力、攻撃に目が向けられることはない。数十万人の市民の命がかかっている。私たちは、影響力を持つあらゆる外交実行者、政策決定者に対し、国際人道法、人権法の名のもとに、停戦協定の履行、市民の保護、そして医療施設と医療従事者の保護を求めます。アレッポや東グータの悲劇は二度とあってはならない、そしてそれが現実になってしまうことを恐れています」