DNDiの最高責任者であるベルナール ぺクール医師がジュネーブで開催されたNTD Summit(顧みられない熱帯病サミット)で発言しました
DNDiの最高責任者であるベルナール ぺクール医師がジュネーブで開催されたNTD Summit(顧みられない熱帯病サミット)で発言しました
【2017年4月19日ジュネーブthe WHO NTDs Global Partners MeetingにおけるDNDi最高責任者ベルナール ぺクール医師(Dr Bernard Pecoul)の発言の参考和訳です】
皆さまご存知のように、商業的な観点からメリットの乏しい疾患に対して、新しい診断法、医薬品やワクチンを開発するといった製品開発パートナーシップの構築は、商業的メリットのある場合とは異なり、極めて困難です。したがって、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)の創設は、「製品開発のパートナーシップは公的機関と民間機関による新しい革新的なモデルによって始めて可能になる」との合意に基づいています。
5年前のロンドン宣言(2012年採択の「NTDsに関するロンドン宣言」)に署名するに当たり、私たちには2つの願いがありました。
第一の願いは、NTD治療薬のパイプラインを補うために、製薬会社の化合物ライブラリーへのアクセスを改善することでした。お蔭様で、過去数年にわたり、すでに約300万に及ぶ化合物をテストすることができました。さらに5つの製薬企業がその知識と化合物を共有する新しい革新的なモデルとして、「顧みられない熱帯病(NTD)創薬ブースター」コンソーシアムの構築に到りました。本日(4月19日)、メルク社(ドイツ)が6番目の製薬企業として「NTD創薬ブースター」コンソーシアムに参加することが発表されました。
第二の願いは、顧みられない熱帯病の新薬開発に当たり、製薬産業界とパートナーシップを構築することでした。さしあたって2、3の例を挙げますと、オンコセルカ症では、バイエル社と、またアッヴィ社とは別のパートナーシップを構築しています。シャーガス病では、ムンド・サノ財団およびエーザイと密接な協力関係にあります。さらにエーザイとは、顧みられない病気の中でも最も顧みられない病気の一つであるマイセトーマ(Mycetoma真菌性菌腫)についても協力しています。アフリカ睡眠病では、疾患の管理を根本から変える経口治療薬が、サノフィ社の協力を得て来年中には使用できると期待しています。最後になりましたが、リーシュマニア症については、現在、様々なパートナーと協力して、管理がとても困難なこの疾患に使用できる経口治療薬をもたらす努力を行っています。
しかしながら、成功するためには、WHOの強力なリーダーシップが必要であり、疾患を抱える国々の保健省やコントロールプログラムによる強固な取り組み、同時に公的学術機関や研究機関との協力が不可欠となります。強力な公共のリーダーシップなしには、持続可能な変化を起こすことはできません。
最後になりますが、この分野への投資が必要であるということです。この機会に、公的および個人の皆さま方による資金援助に心から感謝申し上げます。
まだまだ目標達成とは行きませんが、本日は、顧みられない病気に対する「革新への投資」といったことへの私たちの責任を喚起させる良い機会であると思います。顧みられない病気の患者さんに、より良く、より安全な治療法を提供して行かなければなりません。
注1:2012年採択の「顧みられない熱帯病に関するロンドン宣言」とは
2008年第34回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)において顧みられない熱帯病に感染した人々に支援を届ける宣言がなされ、2012年1月30日、世界の製薬会社、WHO、各国政府、世界銀行などが集まって、顧みられない熱帯病の10の疾病を2020年までに撲滅・抑制するために寄付や研究などで協力する「顧みられない熱帯病に関するロンドン宣言」が採択されました。
以上
【Drugs for Neglected Diseases initiative, DNDi :顧みられない病気の新薬開発イニシアティブについて】
1990年代後半、発展途上国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団のチームは、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。そこで、国境なき医師団は、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、患者のニーズを重視して、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発(R&D)に取り組むための革新的な組織の設立に充てることに決定し、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として2003年7月に正式に発足しました。DNDiはヨーロッパを中心とした多くの政府機関および私設財団から資金援助を受けて活動しています。2013年度からは日本政府も参画する公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)による資金援助も受けています。また、WHOの熱帯病医学特別研究訓練プログラム(WHO-TDR)が常任オブザーバーとして参加しています。www.dndi.org/
【DNDi Japanについて】
DNDi Japanは、2003年に日本の活動を開始し、2009年に特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。顧みられない熱帯病(NTDs)に苦しむ途上国の人々を援助するために日本の窓口として、DNDi本部のプロジェクトを支援し日本国内外の協力先と協働して、NTDsの治療薬開発、それに関連する能力開発、ならびに啓発活動など、発展途上国の人々の保健医療、福利厚生に貢献することを目的とした活動を行っています。www.dndijapan.org/
お問合せ:広報担当 松本眞理(mmatsumoto@dndi.org/ TEL03-4550-1195)