小さな貝の「グレート・ジャーニー」-- 北海道から北米沿岸まで拡散したクロタマキビ -- 東京農業大学

東京農業大学(学長・高野克己)生物産業学部(網走市)、ロシア科学アカデミー(ウラジオストク)、(公財)知床財団(斜里町)、蘭越町貝の館(蘭越町)の研究者らは、遺伝子解析によって小型の貝「クロタマキビ」について、北米の個体群は約2万年前以降日本周辺から移住していったことを明らかにした。この研究成果は、遺伝進化の国際専門誌Geneticaで2017年2月に電子版として公表された。


 研究グループはロシア沿海州から北米まで、北太平洋北部の岩礁潮間帯に広く分布する「クロタマキビ」について、遺伝子解析によって進化や分散を推定した。その結果、北米の個体群は北海道周辺から最終氷期後(約2万年前以降)に分散していった可能性が高いことを明らかにした。

 これは、太平洋を西から東に横断する沿岸生物の分散を世界で初めて遺伝的に明らかにしたもので、クロタマキビの東進は、人類がアフリカから全世界に分散した「グレート・ジャーニー」の核心部分、干上がったベーリング海峡を渡って人類がユーラシアから北米に達した旅に匹敵すると言えるだろう。

 本研究の成果は、環境や地形と沿岸生物個体群の遺伝的多様性との関係を明らかにし、今後の希少種や水産重要種を含むほかの沿岸生物についても、保全計画や資源環境管理に役立つと考えられる。

【論文情報】:Genetica(ISSN: 0016-6707 (Print) 1573-6857 (Online))2017年2月(電子版)
 Phylogeography of Littorina sitkana in the northwestern Pacific Ocean: evidence of eastward trans-Pacific colonization after the Last Glacial Maximum
 Noriko Azuma, Nadezhda I. Zaslavskaya, Tomoyasu Yamazaki, Takahiro Nobetsu, Susumu Chiba
 Genetica (in press)

※この研究は、東京農業大学の先端研究プロジェクトA「極東亜寒帯地域における局所個体群の遺伝的多様性評価とその保全」の一環として行われたものです。

▼研究内容についての問い合わせ先
 東 典子 (あずま のりこ)
 (研究当時)東京農業大学生物産業学部生物資源開発研究所
 (現在の所属)北海道大学大学院水産科学研究院
         〒041-8611 北海道函館市港町3丁目1-1
         TEL: 0138-40-5551(直通)
         E-mail: norikoazuma@gmail.com
 千葉 晋 (ちば すすむ)
  東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科
         〒099-2493 北海道網走市八坂196
         TEL: 0152-48-3903(直通)
         E-mail: s2chiba@bioindustry.nodai.ac.jp

▼このリリースに関する問い合わせ先
 学校法人東京農業大学戦略室 上田・矢木
 〒156-8502世田谷区桜丘1-1-1
 TEL: 03-5477-2300
 FAX: 03-5477-2707
 http://www.nodai.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター http://www.u-presscenter.jp/

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組織名
東京農業大学
ホームページ
http://www.nodai.ac.jp/
代表者
高野 克己
上場
非上場
所在地
〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1

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