ノバルティス ファーマAG(スイス)は、日本を含む世界31カ国にわたり、8,338人の乾癬の患者さんが参加した過去最大規模の乾癬患者調査「Clear about Psoriasis Patient Survey(クリアな肌に関する乾癬患者調査)」の結果を発表しました。この調査は、世界25の患者団体の協力のもと「クリアな肌」に対する乾癬患者さんの想いを初めて調べたのものです。
◆調査概要:
実施時期: 2015年10月-2016年3月
調査手法: 患者はオンライン・パネルか患者団体を通じてリクルート
調査はオンラインで実施
調査対象: 世界31カ国の尋常性乾癬と診断されている患者
◆世界31カ国(8,338人)の調査結果:
中等症から重症の乾癬患者さんの84%は、差別や侮辱された経験があり、多くの患者(40%)は、公衆の面前で皮膚をジロジロと見られたりした経験を持っています。また、約半数(45%)の患者は、「うつる病気か」と聞かれたことがあります。
16%の患者さんが、自分を守るために引きこもっていることから、乾癬が患者さんの人生や精神衛生に与える深刻な影響についても明らかになりました。
希望や自信のなさから、皮膚に症状がみられる患者さんの56%が「クリアな肌」を取り戻すことが出来ないと考えています。
◆日本(204人)の調査結果:
●差別などの経験
・日本でも差別や侮辱を経験している患者が72%にも上っており、24%の患者さんが公衆の面前で皮膚をジロジロと見られ、恥ずかしい思いをしたり(64%)、22%の患者が「うつるのか」と聞かれ、侮辱された(43%)と感じています。
●治療のゴールと期待
・皮膚に症状がみられる日本の患者の82%が「クリアな肌」を取り戻すことは、難しいと考えています。これは31カ国中で最も高い数字です。
・「自分の希望に対し、これまで医師と話し合ったことがない」という人は世界31カ国で17%に対し日本は30%と高い結果でした。
・「クリアな肌/ほぼクリアな肌」になった薬剤に出会うまで5年以上かかった人の割合が世界31カ国で28%、日本は40%でした。
・日本では患者は有効な治療手段を見つけるまでに平均3名の医師を受診し、平均4つの薬剤を試しています。
●パートナーとの関係
・37%の患者が乾癬がパートナーとの関係に影響したと感じています。また、25%がパートナーに対し劣等感を感じています。
・誰かが自分の肌に触れることを嫌悪している患者が24%おり、性的な関係を持つことを避けている人が29%います。
●仕事に対する乾癬の影響
・55%の患者が仕事に対して乾癬は影響していると回答しており、はがれ落ちた皮膚がそこら中に散らばっていること(57%)や、集中が出来ないこと(51%)が悩みとして挙げられていました。
・職場でも同僚や顧客から差別された経験を持つ方が12%います。また、17%の患者が、仕事を失わないか心配をしています。
●心の健康
・19%の患者は、乾癬が原因で精神疾患と診断されています。具体的には11%が不安神経症、12%はうつ病でした。
・また、日本でも引きこもりになっている患者が約1割(9%)いることから、この疾患の精神的負担の大きさを示しています。
・約3割(29%)の患者が、乾癬が原因で夢を諦めたことがあると回答、一方で半数の患者が乾癬治療は希望であると回答しています。
東京逓信病院皮膚科 江藤 隆史先生は、次のように述べています。「日本で、乾癬という疾患が良く知られていないことが原因で、患者さんが精神的に大きな負担を負っていることを、この調査は示しています。また、皮膚症状が残る患者さんの8割以上が寛解は難しいと考えていること、そしてその割合が31カ国中最も高いことが明らかになりました。ここ最近、乾癬の治療は大きく進み、患者さんの治療選択肢は、大きく広がり、自分にあった治療をうけることで寛解も夢ではありません。自分にとって最適の治療を見つけるために、皮膚科専門医と治療のゴールについてしっかりと話し合うことが大切です」
また、日本乾癬患者連合会(JPA) 会長 柴崎弘之さんは、次のように述べています。「今回の調査結果は、私たち乾癬患者の経験そのものです。ここ数年で乾癬の治療選択肢が広がり、『クリアな肌』を取戻し普通の生活を過ごすことも夢ではなくなりました。各地域の患者会は、患者同士のコミュニケーションを図りながら、正しい治療の知識を得ることを目的としています。乾癬に関して相談したいこと、知りたいことがあるのであれば、まずは近隣の患者会か日本乾癬患者連合会までご連絡ください」
調査の詳細は「はだねっと」特設ページでも公開しております:
http://hadanet.jp/survey/
◆乾癬について
乾癬は、青年期から中年期に好発する厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)を伴った紅斑を臨床的な特徴とする非感染性の慢性再発性炎症性疾患です[1]。世界の人口の約3%にあたる約1億2,500万人が乾癬に罹患していると言われており[2]、日本では人口の0.3%にあたる43万人が罹患していると報告されています[3]。苦痛を伴うこの疾患は、単に美容上の問題ではなく、きわめて軽症の症状であっても患者さんの日常生活に影響を及ぼします。
また、関節症性乾癬は、皮膚症状に加えて全身の関節に腫れと痛みを伴う炎症、こわばり、変形などの関節症状が出現します。約60%の患者で乾癬の皮膚症状が先行し、残り40%のうち関節症状先行型と皮膚および関節症状が同時に見られる場合がそれぞれ20%ずつと言われています1。日本では、乾癬患者の3.3%と言われており、25から30歳に発症しやすいと言われています[4],[5]。また、関節症性乾癬の患者さんの関節の変形は不可逆性であり、早期から炎症の徹底した治療が必要とされています[6]。
膿疱性乾癬は、発熱や皮膚の発赤とともに無菌性の膿疱が全身に出現する乾癬の一病型で、再発を繰り返す難治性の疾患です。皮膚病変は外観を著しく損なうことから、患者さんの生活の質(QOL)は身体的および精神的に著しく低下します[7]。この疾患による全身性の炎症が長期に継続することにより、二次性の全身性アミロイドーシスの惹起、関節炎の合併による関節の不可逆的な変形、ぶどう膜炎など眼の合併症による失明、心・循環不全、呼吸不全、悪液質や腎不全の合併により生命が脅かされることもあります[8],[9],[10]。
参考文献
[1].古江増隆、大槻マミ太郎(2012年)『ここまでわかった乾癬の病態と治療』中山書店
[2].International Federation of Psoriasis Associations (IFPA) World Psoriasis Day website. “About Psoriasis.”
http://www.worldpsoriasisday.com/web/page.aspx?refid=114. Accessed August 2013.
[3].[久保田潔, 佐藤嗣道, 大場延浩 他 (2013)] ナショナルレセプトデータベースの活用可能性を探る -乾癬の疫学研究から-. 日本薬剤疫学会, 11月16日-17日 2013, 東京, 2013:39.
[4].Tkahashi H, et al. Analysis of psoriasis patients registered with the Japanese Society for Psoriasis Research from 2002-2008. J of Derm. 2011; 38: 1125-1129
[5].瀧川雅浩、白濱茂穂(2011年)『これでわかる乾癬の新しい治療生物学的製剤からトータルケアまで』南江堂
[6].Ohtsuki M, Terui T, Ozawa A, et al. Japanese guidance for use of biologics for psoriasis (the 2013 version). Journal of Dermatology. 2013; 40: 683-695
[7].Rapp SR, Feldman SR, Exum ML, et al. (1999) Psoriasis causes as much disability as other major medical diseases. J Am Acad Dermatol; 41:401-7.
[8].照井正,秋山真志,池田志斈, 他 (2014) 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014:日皮会誌:125(12),2211-2257
[9].小宮根真弓,岩月啓氏,黒沢美智子,他 (2014) 診断の手引き II 膿疱性乾癬. In: 岩月啓氏,天谷雅之,橋本隆,他. 稀少難治性皮膚疾患に関する診療の手引き[改訂版]. 岡山:稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班事務局, p. 38-55.
[10].厚生科学審議会2014
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダー、ノバルティスの医薬品部門の日本法人です。ノバルティス グループ全体の2015年の売上高は494億米ドル、研究開発費は89億米ドル(減損・償却費用を除くと87億米ドル)でした。ノバルティスは約118,000人の社員を擁しており、世界180カ国以上で製品が使われています。詳細はホームページをご覧ください。http://www.novartis.co.jp