東京農業大学（学長：高野克己）農学部バイオセラピー学科佐々木剛教授、情報システム研究機構 新領域融合研究センター・国立極地研究所の瀬川高弘特任助教らのグループは、絶滅したニホンカワウソは日本で独自に進化した固有の生物であることをDNA解析によって明らかにした。この研究結果は「PLOS ONE」に掲載された。


　四国に生息していたニホンカワウソは日本固有の種か亜種だった可能性が高いことが、ミトコンドリアゲノムDNAを調べることで判明した。これまでニホンカワウソは進化史的にユーラシア大陸に生息するユーラシアカワウソと同一系統であると考えられていた。

　本研究では、絶滅したニホンカワウソの高知県産個体と神奈川県産個体の毛皮や剥製標本からDNAを抽出し、次世代シーケンサーを使うことでDNA配列を決定した。そして、ユーラシアカワウソ（中国、サハリン、韓国）のDNA配列とともに分子系統解析を行った結果、高知のニホンカワウソは約127万年前に大陸から日本に渡って来た古い系統であることが明らかになった。この結果はニホンカワウソ（高知県産）が大陸のユーラシアカワウソとは遺伝的に異なる独自の進化史を持っていたことを示している。

　本研究は、日本固有であり絶滅してしまった動物の価値を見直すとともに、日本の生態系を作り出した生物たちが、いつどのように日本に渡って来たか理解するうえでも重要な発見と言える。今後、解析個体数と地域を増やすことで神奈川産の大陸系統の由来を明らかにし、本州におけるニホンカワウソの正体に迫っていく予定。

■掲載情報
【雑誌名】　PLOS ONE
【英文タイトル】
　Evaluating the Phylogenetic Status of the Extinct Japanese Otter on the Basis of Mitochondrial Genome Analysis
【DOI】　10.1371/journal.pone.0149341
【著　者】
　Waku, D., Segawa, T., Yonezawa, T., Akiyoshi, A., Ishige, T., Ueda, M., Ogawa, H., Sasaki, H., Ando, M., Kohno, N. and Sasaki, T.

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