最近認可された小児用HIV治療薬の試験がケニアで始まります

  • 特定非営利活動法人DNDi Japan

子供たちへのより良い治療に向けた小さくも重要な一歩<DNDiが昨年の世界エイズデーにちなんで12月1日に発表したプレスリリースの和訳です>

[ケニア・ナイロビ-2015年12月1日]Drugs for Neglected Diseases initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ‐DNDi)は、HIVに感染した子供たちへのより良い薬の必要性に早急に対処するため、最近認可された小児用抗レトロウイルス(ARV)治療薬の実施研究を開始しました。ケニアで開始されたこの研究は、インドのジェネリック医薬品会社シプラ社と共同でユニットエイド(UNITAID) 注1と提携し、子供たちが成人期を通して生存するために必要とされる複数の主要HIV薬を改良して、服用しやすい配合剤として開発するというDNDiの究極の目標に向けた重要な一歩です。

米国食品医薬品局(FDA)は、シプラが開発したロピナビル/リトナビル(LPV/r)の経口顆粒剤を、2015年6月に認可しました。世界保健機関(WHO)は、3歳未満の子供にLPV/rをベースとした配合剤を推奨していますが、この配合剤の利用は限られていました。これまでLPV/rは冷蔵保存が必要な味の悪いシロップ剤しかなく、(保存のため)アルコールを40%含んでいました。シプラの新しいLPV/r顆粒剤は冷蔵保存を必要とせず、アルコールを含みません。また、食品や母乳に混ぜて簡単に投与することができるなど、重要な改良が行われました。ウガンダで初めて実施され、英国の医学研究審議会(Medical Research Council)の臨床治験ユニットが率いる主要な試験において、本顆粒剤はアルコールを含む液剤による治療を終える重要な一歩となりました。

LIVING試験と呼ばれる今回のDNDiの新たな実施試験では、この顆粒剤を(別の2種のARV薬を含む分散可能な錠剤と併用して)医療現場で使用し、その有効性、安全性、使用性、受容性を評価します。LIVING試験は、第IIIb相非盲検非無作為化単群試験で、対象は錠剤を飲み込むことができないHIVに感染した子供に限定されます。

「HIVに感染した子供が、これまで少数しか治療を受けていない理由の一つは、小児用ARV製剤が熱帯環境に適応しておらず、子供が服用することが非常に難しかったことです。」とDNDiの小児HIVプログラム担当責任者のマルク ラルマン(Marc Lallemant)博士は述べています。「260万人の子供がHIVに感染している今、私たちは最善の治療と製剤を利用可能なものとし、大至急子供たちに届ける必要があります。」

さらに今後のDNDiの小児HIVプログラムの主な目標は、4種の主要ARV薬(LPV/r +ラミブジン+ジドブジンまたはアバカビル)を含む、子供向けの固定用量の改良配合剤2種の開発です。「4-in-1(4剤配合)」と呼ばれるこれらの配合剤は、味もよく、LPV/rの顆粒剤よりも服用がさらに容易になります。現在、シプラはこれらの新製剤を開発中で、開発をさらに進める候補として無味の製剤3種を特定しています。

「私たちは、このような命を救う治療のための優れた製剤を必要としていますが、一方でHIVに感染した母親から生まれた赤ちゃんのための検査を改良する必要もあります」とナイロビ大学小児科・小児保健講座准教授でLIVING試験の調整治験責任医師であるダルトン ワマルワ(Dalton Wamalwa)博士は話しています。「もし改良された検査によって赤ちゃんを早期に治療することができれば、何千人もの命を救うことができます。」治療しなければ、HIVに感染した子供の50%が2歳の誕生日を迎える前に死亡し、80%が5歳の誕生日を迎えることなく死亡します。

患者はすでにケニヤッタ国立病院、ガートルード子供病院、FACESキスムの3施設でLIVING試験のために登録されています。この試験は間もなく、ケニアのさらに多くの施設で実施され、その後ウガンダ、タンザニア、南アフリカ、ジンバブエなど、HIV/エイズ流行の中心部にあるサハラ以南の国々に拡大される予定です。LIVING試験に参加する子供たちの治療は、改良4-in-1製剤が利用可能になった場合、直ちにそちらに切り替えられます。

DNDiの小児HIVプログラムは、UNITAID、フランス開発庁(AFD)、国境なき医師団(MSF)、およびUBSオプティマス財団の支援を受けて実施されています。

DNDiは、地域医療従事者、活動家、および介護者向けの小児HIVツールキットも発行し、小児HIVプログラムの最新アップデートを提供しています。

注1:UNITAIDについて
UNITAIDはHIV/エイズ、マラリア、結核との闘いに継続的資金提供をすることを目的とし、2006年、ブラジル、チリ、フランス、ノルウェー、イギリスの各政府により発足した世界保健衛生イニシアティブです。UNITAIDの財源の約70%は、少額を航空券に課税する航空券連帯税からもたらされています。UNITAIDはパートナーである実施機関を通じて、途上国の人々のために確かな品質の薬や診断器具購入に資金を投入し、その市場支配力を活用して供給拡大、より優れた製品の開発促進、配給時間の短縮、そして価格引き下げを実現します。

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オリジナル英文プレスリリース:
http://www.dndi.org/2015/media-centre/press-releases/pr-phti-fda-approval-pellets/

【DNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシャティブ)について】
1990年代後半、発展途上国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団のチームは、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。そこで、国境なき医師団は、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、患者のニーズを重視して、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発(R&D)に取り組むための革新的な組織の設立に充てることに決定し、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として2003年7月に正式に発足しました。DNDiはヨーロッパを中心とした多くの政府機関および私設財団から資金援助を受けて活動しています。2013年度からは日本政府も参画する公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)による資金援助も受けています。また、WHOの熱帯病医学特別研究訓練プログラム(WHO-TDR)が常任オブザーバーとして参加しています。www.dndi.org/

【DNDi Japanについて】
DNDi Japanは、2003年に日本の活動を開始し、2009年に特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。顧みられない熱帯病(NTDs)に苦しむ途上国の人々を援助するために日本の窓口として、DNDi本部のプロジェクトを支援し日本国内外の協力先と協働して、NTDsの治療薬開発、それに関連する能力開発、ならびに啓発活動など、発展途上国の人々の保健医療、福利厚生に貢献することを目的とした活動を行っています。www.dndijapan.org/
本件に関するお問合わせ先
特定非営利活動法人DNDi Japan
広報担当 松本眞理
160-0023:東京都新宿区西新宿8-14-24西新宿KFビル704
TEL:03-4550-1195 FAX:03-5937-6977
E-mail:mmatsumoto@dndi.org

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組織名
特定非営利活動法人DNDi Japan
ホームページ
https://www.dndijapan.org
代表者
山田 陽城
上場
非上場
所在地
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-12-1パークウエスト3階
連絡先
03-6258-0303

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