4.各機関の役割
・NTT:植物のIVF法や栽培、評価に関する知見を活用し、研究の立案と計画、および多親雑種の作出とその形質評価を行いました。
・東京都立大学:植物のIVF法に関する基盤技術を整備するとともに、技術に関する知見を提供しました。さらに、植物のゲノム情報の解析に関する知見を活用し、作出した多親雑種が4つの親品種のゲノムをそれぞれ均等に保持することを明らかにしました。
5.今後の展開
今後は、作出したイネ多親雑種について収量性、環境ストレス耐性、品質に関連する特性を詳細に解析し、多親雑種化が植物の収量や食味、機能性に与える影響を解明すると同時に、実用品種としての有用性の実証をめざします。
本研究で確立した技術はイネにとどまらず、IVF法が確立された他の植物種への適用も期待できます。今後は、様々な植物種におけるIVF法の確立や、交雑する品種の組み合わせを最適化する技術開発を進めることで、本技術の適用範囲の拡大と効果の最大化をめざします。それら技術を活用することで、収量や機能性、CO2吸収能力に優れながら、肥料や農薬の投入を必要としない、”低環境負荷型の農作物や樹木”の育成に取り組みたいと考えています。将来的には、農業生産量の増強・安定化による食料安全保障の確保、ならびに農地や森林におけるCO2吸収量の増加による気候変動対策への貢献をめざします。
【研究担当者の情報】
NTT株式会社 宇宙環境エネルギー研究所
迫田 和馬 准特別研究員
東京都立大学大学院 理学研究科 生命科学専攻
岡本 龍史 教授
TEL:042-677-2566 E-mail:okamoto-takashi@tmu.ac.jp
【用語解説】
※1. 生殖細胞:次の世代の個体をつくるもとになる半数性(1倍体)の細胞。
※2.
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/09/28/210928a.html
※3. ゲノム:生物が持つ遺伝情報の一式。DNA配列としての生物の設計図全体を指し、生物の形や性質
などを決定する主要因。
※4. 倍数化:生物が持つゲノムのセット数が増えること。
※5. F1品種:異なる2つの親品種を交配して得られる雑種第一代 (F1) を品種化したもの。両親よりも
優れた収量や品質などを示すことがあり、多くの農作物を対象に育成されている。
※6. 卵細胞:植物のメス性の生殖細胞。
※7. 精細胞:植物のオス性の生殖細胞。
※8. 顕微授精法:生殖器官 (植物の場合は花) から単離した生殖細胞に電気的な刺激を与えることでそれ
らを顕微鏡下で人工的に融合 (授精) させたのち、作出した受精卵を培養して植物体などに発生させ
る方法。
※9. ジャポニカ型:イネの主要な系統の一つで、日本を含む東アジアで広く栽培されている。一般に、
粒が比較的短く丸みを帯び、粘り気のある米になりやすい特徴を持つ。
※10. アウス型:イネの系統の一つで、主に南アジアで栽培されている。一般に高温や乾燥などの環境条
件に適応した特徴を持つものが含まれる。
※11. インディカ型:イネの主要な系統の一つで、主に東南アジアやインドなどで広く栽培されている。
一般に、粒が細長く、粘り気が少ない米になりやすい特徴を持つ。
※12. フローサイトメトリー:単離された細胞やその含有物にレーザー光を当て、DNAの量や細胞の性質
を個々に測定・解析する方法。
※13. SNPマーカー: DNA配列中の1塩基の違い (一塩基多型, SNP) を目印として用いる遺伝マーカ
ー。品種や系統の違いの識別や、どの親に由来するゲノムが受け継がれているかなどを調べるため
に利用される。
※14. 登熟期:イネなどの穀物において、受粉・受精後に種子が発達し、内部にでんぷんなどの養分が蓄
積して種子として成熟していく時期。
※15. 止葉:イネなどの植物において、茎の最上部につく最後に展開する葉。
※16. 芒 (のぎ):イネやムギなどの穂にみられる、籾(もみ)の先端から伸びる針状の突起。
※17. 稔性:植物が正常に花粉や種子を形成し、次世代を残す能力。