【昭和医科大学・関西医科大学】ヒトiPS細胞から傷ついた腹膜を修復する細胞の作製に成功 ―腎臓病患者の腹膜透析を支える再生医療の実現へ前進―

昭和医科大学(東京都品川区/学長:上條由美)大学院医学研究科腎臓内科学分野の加藤憲講師、本田浩一教授らの研究チームは、関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座の人見浩史教授らと共同で、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から機能的な腹膜中皮様細胞を作製する新規分化誘導法を確立しました。この技術により、腹膜透析患者に対する再生医療の開発に加え、腹膜障害の病態研究・創薬研究への応用が期待されます。なお、本研究成果は国際科学雑誌『Stem Cell Research & Therapy』に2026年4月25日付でオンライン掲載されました。また、本研究成果に関連する分化誘導技術については特許を取得しており、今後の実用化への展開も期待されます。


■発表のポイント


ヒトiPS細胞から機能的な腹膜中皮様細胞の作製に成功

腹膜の透過性・選択性という本来の機能を再現し、腹膜を修復させる再生医療の新境地を開拓

腹膜透析の長期継続を支える再生医療・創薬研究の基盤技術につながる成果



■本研究の背景

 腹膜透析*1は、在宅で継続できる腎不全の治療法として、現在国内で約1万人の方が治療を行っています。しかし、治療が長期に及ぶと腹膜が障害を受け、ろ過機能(水分や老廃物を排出する力)が低下して治療を断念せざるを得ないケースがあります。また、重篤な合併症のリスクも伴うため、腹膜の機能を守るための新しい治療法の開発が強く望まれてきました。
 これまで、傷ついた腹膜を修復する腹膜中皮細胞*2を患者さんの体内から十分に確保することは難しく、再生医療の実現には高い壁がありました。本研究では、ヒトiPS細胞*3から腹膜中皮細胞に類似した細胞を安定して作り出す技術を確立しました。この技術により、これまでの課題を克服し、腹膜を再生させるという新たな再生医療の実現を目指しました。

■本研究の成果

 本研究により確立された技術は、これまで困難であったヒト腹膜中皮細胞の安定的な供給を可能にし、今後の基礎研究および臨床応用の発展に大きく寄与すると期待されます。
 まず、腹膜透析に伴う障害の発症機序の解明や、透析液の影響評価などにおいて、ヒト由来細胞を用いたより精度の高いモデル系の構築が可能になります。また、新規腹膜透析液の有効性や安全性を検証する研究への応用も見込まれます。さらに将来的には、障害を受けた腹膜の修復を目的とした細胞治療の実現につながり、腹膜透析の長期継続を支える新たな治療基盤の構築が期待されます。これにより、腎臓病患者さんの生活の質の維持・向上や治療選択肢の拡大に寄与する可能性があります。

■用語説明

*1 腹膜透析
 患者自身の腹膜を半透膜として利用し、腹腔内に注入した透析液との濃度勾配および浸透圧差によって、老廃物の除去と除水を行う腎代替療法。在宅で治療が可能であり、通院回数が少なく、残存腎機能の保持に有利とされる一方で、長期継続に伴う腹膜変性が課題となっている。

*2 腹膜中皮細胞
 腹膜の最表面を覆う単層扁平上皮細胞である。単なる物理的な障壁としてだけでなく、炎症の制御や、組織の滑走性を保つための生理活性物質の産生など、腹膜の恒常性維持において中心的な役割を担う。本研究における再生医療の主要な標的細胞である。

*3 iPS細胞(人工多能性幹細胞)
 皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで作製される幹細胞。さまざまな細胞に分化できる能力を持ち、再生医療や病態研究、創薬研究への応用が期待されている。

*4 分化誘導
 幹細胞やiPS細胞などの未分化な細胞に対し、特定の化合物や増殖因子を加えたり、培養条件を調整したりすることで、目的とする細胞(神経、心臓、肝臓など)へ分化させる技術。再生医療や創薬研究において、必要な機能を持つ細胞を人工的に作製するための基盤技術とされる。

■研究成果の公表情報

【論文タイトル】
 Generation of functional mesothelial cells from human iPSCs that restore peritoneal integrity in experimental peritoneal injury(ヒトiPS細胞由来腹膜中皮様細胞による実験的腹膜障害修復の可能性)
【著 者】
 Tadashi Kato1,2*, Mayu Yamashita1, Masahiro Yasuda2, Yutaro Ando3, Ryusuke Nakatsuka4, Yasumasa Shirouzu2, Tatsuya Fujioka2, Masayuki Tsukasaki3, Fumiyuki Hattori2, Yoshihiro Taniyama5, Hiroaki Ogata1,6, Akiko Sakashita7, Hirokazu Honda1, Hirofumi Hitomi2
 1 昭和医科大学大学院医学研究科腎臓内科学分野
 2 関西医科大学医学部iPS・幹細胞再生医学講座
 3 昭和医科大学大学院歯学研究科口腔生化学分野
 4 大阪歯科大学歯学部薬理学講座
 5 関西医科大学内科学第二講座
 6 昭和医科大学大学院医学研究科医学教育学分野
 7 昭和医科大学大学院医学研究科内科学講座血液内科学分野
 * 責任著者
【掲載誌】
 Stem Cell Research & Therapy, 2026年4月25日掲載
【DOI】
 10.1186/s13287-026-05037-x
【掲載URL】
 https://link.springer.com/article/10.1186/s13287-026-05037-x
【研究助成】
 日本学術振興会 科研費、ヴァンティブ株式会社医師主導研究(IIR)などにより実施。
【知的財産】
 本研究成果に関連して、「多能性幹細胞から腹膜中皮細胞を分化誘導する方法」(特許第7863830号)の特許を取得しています。

▼本件に関する問い合わせ先
【研究に関すること】
 昭和医科大学 大学院医学研究科 腎臓内科学分野 講師
 加藤 憲
 TEL:03-3784-8000(代表)
 E-mail:t-k@med.showa-u.ac.jp

 関西医科大学 医学部iPS・幹細胞再生医学講座 教授
 人見 浩史
 TEL:072-804-0101(代表)
 E-mail:hitomi.hir@kmu.ac.jp

【広報に関すること】
 学校法人昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL:03-3784-8059
 E-mail:press@ofc.showa-u.ac.jp

 学校法人関西医科大学 広報戦略室
 TEL:072-804-2128
 E-mail:kmuinfo@kmu.ac.jp

▼本件リリース元
 学校法人昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL:03-3784-8059
 E-mail:press@ofc.showa-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
昭和医科大学
ホームページ
https://www.showa-u.ac.jp/
代表者
上條 由美
上場
非上場
所在地
〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8

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