日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、以下、日本イーライリリー)は、国立健康危機管理研究機構(JIHS ジース)および国立循環器病研究センターと、肥満症対策推進に向けた共同研究を開始するための協定を締結しました。
2025年10月に開始した、肥満症に関連する23の学会で構成される「領域横断的な肥満症対策の推進に向けたワーキンググループ」との産学連携の取り組みに加え、この度、新たに公的セクターとの協働が実現することになりました。これにより、肥満症に関する研究、診療、教育、社会における理解促進を一体的に進める産官学連携体制がさらに強化されます。
(写真左から)デイビッド・A・リックス、門脇 孝氏、坂口 佐知、國土 典宏氏、大津 欣也氏、植木 浩二郎氏、清水 逸平氏
肥満症は、糖尿病、脂質異常症、高血圧、心血管疾患など多くの併存疾患を伴う慢性疾患であり、医学的根拠に基づいた早期かつ継続的な介入が重要です。また、日本における実臨床での治療価値や、関連健康障害との関係を示す科学的根拠をさらに強化するため、研究・診療・教育・社会における理解促進をつなぐ包括的な取り組みが求められています。
このような背景を踏まえ、診療現場における意思決定や、将来の医療提供体制・政策検討にも資するエビデンスを構築するため、本共同研究では、肥満症に対する薬物治療の実臨床における効果とインパクトを評価する研究と、肥満症関連健康障害の発症メカニズムを解明する2件の研究を開始します。
【本共同研究の概要】
- 実臨床における肥満症治療薬の効果とインパクトを評価する研究
国立健康危機管理研究機構と国立循環器病研究センターを研究機関として、大規模前向き観察研究により、肥満症に対する薬物治療の効果および肥満関連健康障害やQOL、医療費などのデータを取得し、実臨床における効果とインパクトを評価します。
- 肥満症関連健康障害の発症メカニズムに関する研究
国立健康危機管理研究機構の植木 浩二郎 先生を主任研究員として、肥満症環境下における腸内環境と慢性腎臓病(CKD)の発症・進展メカニズムの関連を検討する非臨床研究を行います。
- 脂肪細胞が肥満症における循環器疾患や臓器老化に与える影響に関する研究
国立循環器病研究センターの清水 逸平 先生を主任研究員として、脂肪細胞が分泌するアディポカインが、肥満症における循環器疾患や臓器老化に与える影響を明らかにする研究を行います。
【昨年10月に開始した産学連携の取り組みの背景と本協定の意義】
日本イーライリリーは2025年10月、肥満症に関連する23の学会により構成される学術的な連携組織である「領域横断的な肥満症対策の推進に向けたワーキンググループ」と、日本における肥満症ケアの新たな協働枠組みを立ち上げ、以下の3つの柱を通じて肥満症対策を推進していくことに合意しました。
- 肥満症治療モデルの設計と実装
- リアルワールドエビデンスの創出
- 医療従事者向け教育や社会における理解促進
このたび、新たに国立健康危機管理研究機構および国立循環器病研究センターが参画することで、肥満症を関連健康障害も含めた広範な健康課題として捉え、より公的かつ専門的な研究基盤のもとでエビデンス構築を進める体制が一層強化されます。
今回の協働により、国立健康危機管理研究機構および国立循環器病研究センターが有する高い専門性と公的研究基盤としての信頼性に、日本イーライリリーが有する肥満症領域における知見を活かし、政策・制度との接続や社会実装も見据えた取り組みを推進します。
今後も日本イーライリリーは、肥満症と主要疾患との関係解明に向け、他の国立高度専門医療研究センターとの共同研究を順次拡大していく予定です。
【本協定に対する関係者のコメント】
国立健康危機管理研究機構 理事長 國土 典宏 先生
肥満症は、感染症における重症化リスク因子であると同時に、代謝・循環器疾患の基盤疾患であり、健康危機時の脆弱性を高める要因と位置付けられています。一方で、健康危機の上流に位置する肥満症に関する理解は医療従事者においても十分とは言えないのが現状であり、疾病負荷や社会的影響を明らかにするエビデンスの創出が求められています。今回の協定は、複合的なエビデンスに基づき、薬物治療を含む肥満症治療の確立や、医療経済的効果を踏まえた治療・予防の社会実装を可能にするものと期待されます。
国立循環器病研究センター 理事長 大津 欣也 先生
肥満症は、国立循環器病研究センターが扱う多くの循環器疾患の上流に位置する可変リスク因子であり、肥満症に対する治療介入は循環器病予防と健康アウトカム改善のための戦略的重点領域です。一方で、肥満症における関連循環器健康障害の発症メカニズムは、なお不明な点が残されています。今回の共同研究によって、循環器病予防に資する「肥満症への治療介入の科学的根拠」を明確にし、循環器視点の肥満対策モデルの検討が進み、社会的理解の促進や医療提供体制の改善へ波及することを期待しています。
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 院長 門脇 孝 先生
肥満症は、多くの併存疾患を伴う慢性疾患です。肥満症に関連する23の学会で構成される「領域横断的な肥満症対策の推進に向けたワーキンググループ」を日本医学会連合として立ち上げ、現在の日本肥満学会が中心の取り組みに繋がっています。今後は、肥満症がもたらす影響や治療介入の効果について、科学的根拠に基づいたデータを構築し、客観的な議論を進めることが不可欠です。本連携を通じて、医療界と産業界がそれぞれの強みを持ち寄り、科学的根拠に基づく肥満症対策を社会全体で推進していく取り組みが一層進展することを期待しています。
日本肥満学会 副理事長/
領域横断的な肥満症対策の推進に向けたワーキンググループ 委員長 山内 敏正 先生
肥満症は、単なる生活習慣の問題ではなく、適切な医療介入を要する慢性疾患として捉える必要があります。ワーキンググループでの議論を通じて、医療現場においては肥満症のみを目的として専門医を受診するケースよりも、さまざまな疾患の診療過程の中で肥満症への対応が求められる場面のほうが実際には多いという現状が明らかになりました。こうした現状を踏まえると、肥満症対策は一部の専門医だけで完結するものではなく、日常診療に関わる医療従事者全体での理解共有が重要です。本連携を通じて、医療現場における理解促進と学際的連携を強化し、より適切な診療体制の構築につながることを期待しています。
イーライリリー・アンド・カンパニー 取締役会長 兼 最高経営責任者 デイビッド・A・リックス
肥満症は、多くの併存疾患や社会的負担を伴う慢性疾患であるため、疾患としての認知や、治療価値、社会的影響を示す科学的根拠をさらに強化する必要があります。こうした現状を踏まえ、産官学が連携し、科学的根拠に基づいた肥満症ケアモデルを構築することが重要です。今回、新たに国立健康危機管理研究機構および国立循環器病研究センターとの協働が実現したことで、肥満症対策を推進するための産官学連携体制がさらに強化されました。本連携を通じて、肥満症および関連健康障害に関するエビデンスの構築を進め、より良い医療と社会の実現に貢献してまいります。
【肥満症を取り巻く背景】
肥満症は、肥満(BMI≧25)に加え、糖尿病、脂質異常症、高血圧、心血管疾患などの健康障害を合併し、医学的に減量を必要とする慢性疾患です1。多くの併存疾患の発症・重症化に関わり、患者さんの健康アウトカムのみならず、医療制度や社会全体にも大きな影響を及ぼします。
一方で、肥満症は依然として「生活習慣の問題」として捉えられることが多く2、疾患としての認知や適切な医療へのアクセスは十分とは言えません。
こうした課題に対応するためには、肥満症がもたらす疾病負担や医療経済的影響、関連健康障害との関係を科学的に明らかにし、研究成果を診療、教育、政策、社会における理解促進へとつなげていくことが重要です。
以上
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国に本社をおくグローバル製薬企業イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人として、最先端の科学技術を基盤とした革新的医薬品の研究開発および供給に、50年以上にわたり継続的に取り組んでいます。ダイアベティス(糖尿病)、肥満症、がん、アルツハイマー病を含む中枢神経系疾患、自己免疫疾患など幅広い領域において医療の可能性を切り拓き、誰もが必要な医療を安心して受けられる社会づくりや、人々の健康で豊かな人生の実現に貢献してまいります。
詳細は当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.lilly.com/jp
References:
1) 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン 2022」 http://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_05.pdf
2) Rubino F, et al. Nat Med. 2020; 26(4):485-497. (著者のうち 1 名はリリー社より講演料を受領している)