【研究成果のポイント】
自己免疫や移植拒絶反応など有害な免疫応答のみを抑制する治療法を開発し、動物モデルでその有効性を実証しました。この成果は3月24日(現地時間)に、非営利出版団体PLoS の旗艦誌として定評のある科学誌PLoS Biology 誌に掲載されます。副作用の少ない自己免疫疾患の新規治療法や臓器移植での新規拒絶反応抑制法の開発につながるものと期待されます。
【研究成果の概要】
人の体は外敵から身を守る「免疫システム」を備えていますが、自己免疫といって免疫が自分自身の体を攻撃したり、移植した臓器を異物とみなして攻撃したりすることがあります。こうした有害な免疫応答を抑制する薬剤が開発されていますが、ウイルスや細菌と戦うための必要な免疫の働きも同時に弱めてしまうという課題がありました。
日本大学歯学部の龍旺研究員、浅野正岳教授(故人)、鍔田武志客員教授らの研究グループは東京科学大学、東京理科大学、藤田医科大学、慶應義塾大学、理化学研究所との共同研究により、自己免疫や移植拒絶反応など有害な免疫応答だけを抑制する新しい治療法を開発し、動物モデルでその有用性を実証しました。
今回の新しい免疫制御のスキームは、副作用の少ない治療法や、移植医療の安全性向上等に役立つものと期待されており、研究チームではさらに研究を進める方針です。
【発表内容】
B 細胞は抗体産生に関わるリンパ球ですが、一部のB 細胞は免疫応答を抑制する物質を産生することで免疫応答を抑制することが知られており、このようなB 細胞は制御性B 細胞と呼ばれています。様々な自己免疫疾患で制御性B 細胞の異常が示され、また、移植の際の臓器の定着に制御性B 細胞が関わることが示されています。これまで、制御性B 細胞を増幅する刺激がいくつか知られていましたが、いずれも炎症を増悪させるもので、治療に使用することが困難でした。今回、B 細胞の表面に存在するCD22 と呼ばれる分子への抗体の中で特殊な活性を持った抗体が制御性B 細胞を増幅することを明らかにしました。さらに、この抗体を自己免疫機序によって発症する糖尿病(1型糖尿病)のモデル動物に投与すると糖尿病の発症が抑制され、皮膚移植の動物モデルに投与すると、移植に用いられている免疫抑制剤シクロポリンと同程度に移植片拒絶を抑制することが明らかになりました。一方、異物を投与した場合の免疫応答は抑制しないことから、この治療法が自己免疫や移植免疫といった有害な免疫応答のみを抑制することが明らかになりました。
【発表者・研究者等情報】
鍔田武志 日本大学歯学部病理学講座客員教授、東京科学大学名誉教授
龍 旺(筆頭著者)日本大学歯学部病理学講座研究員(2025 年6月まで)
遠藤彩香 東京科学大学医歯学総合研究科医歯理工保健学専攻免疫学分野大学院生(当
時)
Hashadi Nadeesha Walakulu Gamage 東京科学大学医歯学総合研究科生命理工医療科学専
攻分子構造情報学分野大学院生
楊天儀 東京科学大学医歯学総合研究科医歯理工保健学専攻免疫学分野大学院生(当時)
鈴木亨 東京科学大学総合研究院難治疾患研究所、バイオサイエンスセンター助教
新田剛 東京理科大学生命医科学研究所教授
竹松弘 藤田医科大学医療科学部医療検査学科教授
本田賢也 慶應義塾大学医学部教授
国立研究開発法人理化学研究所生命医科学研究センターチームディレクター 浅野正岳(故人)日本大学歯学部病理学講座教授
【論文情報】
Disrupting CD22-cis-ligand interactions ameliorates type 1 diabetes and graft rejection by expanding regulatory B cells. PLoS Biology 誌 24(3): e3003681
doi: 10.1371/journal.pbio.3003681
リンク:
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003681
【研究助成】
日本学術振興会科学研究費助成事業 26293062,18H02610, 21K19373 and 21H02679
▼本件に関する問い合わせ先
【研究に関する問合せ先】
日本大学歯学部病理学講座
鍔田 武志(ツバタ タケシ)
住所:〒101-8310 東京都千代田区神田駿河台1-8-13
TEL:03-3219-8124
メール:tsubata.takeshi@nihon-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/