構造材の57%に国産材を使用、木造化により躯体工事の労働時間を30%削減
三菱地所ホーム株式会社が設計・施工をした4階建共同住宅「PRISM II(プリズムツー)」が2026年2月に竣工しました。本物件は都市部の住宅地に建つ全8戸の木造耐火建築物であり、国土交通省の令和6年度「優良木造建築物等整備推進事業」に採択されています。
当社は木造建築メーカーとして40年以上事業を行ってきた技術力を基盤に、三菱地所グループ各社との連携を通じて「木造木質化」の推進に取り組んでいます。
この度竣工した「PRISM II」は、都市部における木造建築の展開を示すプロジェクトです。三菱地所グループの知見と連携により環境負荷低減や持続可能な都市づくりの推進、木材利用拡大を通じた国内林産業への貢献など、社会価値の創出を目指しました。
本プロジェクトの最大の特長として、構造材における国産材の使用率を向上するため、グループ各社のリソースを最大限に利用し、国産材を効率的に活用しています。株式会社MEC Industryが南九州産杉材の大径木を調達・製材し、三菱地所ウッドビルド株式会社が柱に相当する縦枠へと加工、株式会社三菱地所設計が設計アドバイザーとして参画し、当社が設計・施工を担いました。この連携により、木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)において、従来は強度や寸法安定性の確保が課題とされてきた杉材を効果的に活用することができました。
本計画では、建設時のCO2排出量削減や炭素の長期貯蔵といった木造建築の環境性能を事業主から高く評価いただきました。これらの点が企業価値の向上やサステナビリティにつながると期待され、木造化による居住性の高さと環境配慮の両立も実現できることから、木造4階建の構成が採用されました。
【物件概要】
建築地:東京都豊島区長崎1-27-18
用途:共同住宅
構造:木造枠組壁工法(地上4階建て)
建築面積:108.90m2(平方メートル)(32.94坪)
延べ面積:389.12m2(平方メートル)(117.70坪)
事業主:近代産業株式会社
設計施工:三菱地所ホーム株式会社
◆国産材の活用
建物規模が大きくなるほど、構造材には均一で高い強度が求められ、同時に大量の材料を安定的に確保する必要があります。そのため、中大規模木造では国産材の活用が広がりにくい状況がありました。本プロジェクトでは、グループ連携により品質と調達の課題を解決し、構造材として使用した135m3(立法メートル)の木材のうち南九州産杉材を中心に約57%を国産材としています。ツーバイフォー工法における国産材使用率は全国平均で約20%程度にとどまるなか、本プロジェクトでは約3倍にあたる水準を実現しました。
◆カーボンニュートラルへの貢献
建物のライフサイクル全体を対象とした LCA(ライフサイクルアセスメント)による評価では、同規模を鉄筋コンクリート造(RC造)で建設した場合と比較し、建設から解体までに排出される LCCO2を約170トン削減できると試算されます。これは、一般的な乗用車が 約76万キロメートル(地球約19周) を走行する際に排出するCO2量と同等です。さらに、構造材に使用した木材の炭素貯蔵量(CO2換算)は98t-CO2、これはスギ換算では約200本分に相当します。
本プロジェクトは炭素貯蔵効果が期待できる中大規模木造建築物の普及に資するプロジェクトとして評価され、国土交通省令和6年度「優良木造建築物等整備推進事業」に採択されました。
◆木造における施工面でのメリット
木造はRC造と比べて建物重量が軽く、基礎工事の負担が小さいことが大きな特長です。本プロジェクトも建物重量の低減によって杭工事が不要となり、工期とコスト削減につながりました。
一般的にツーバイフォー工法では、工場で製作したパネルを現場で組み立てることが多いものの、本プロジェクトでは敷地条件により、現場でパネルを組み立てる「手組み」による施工を採用しました。それでもRC 造で施工した場合と比較すると、躯体工事にかかる現場労働時間を約30%削減できる試算結果となりました。建物規模や敷地条件によってはさらに大きな労務削減が見込まれます。こうした施工性の高さは、深刻化する建設技能者不足に対応する有効な手段となることを示す事例となりました。
◆設計のポイント
・国産の杉材をアプローチ天井や共用部に用い、外観から内部まで木の連続性を持たせています。
・外構やサインにも木材を使い、敷地全体で統一感を創出しています。
・塗り壁と木調ルーバーにより、上質で自然な外観としました。
・「ZEH-M Oriented」認証で省エネルギー性も考慮した計画となっています。