【お知らせ】デロイト トーマツ、ダイベストメント(事業売却)に関するグローバル調査レポートを公表

デロイト トーマツ グループ

  • セルサイド(売り手)の活動を計画していない企業は2%を下回っており、ダイベストメントを含む新たなM&A活動の見通しは明るい
  • セルサイド(売り手)の約半数が、ダイベストメントを決定してから契約を締結するまでの期間を約7か月から12か月と回答しており、企業がダイベストメントに備えるためには、長期的な準備の必要があることを示唆
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一)は、企業のM&Aおよびリストラクチャリングリーダーを対象としたダイベストメントに関する調査レポートの日本語版を公開しました。Deloitte Global が2024年3月に発行した内容を翻訳しており、ダイベストメントについての最新トレンド、企業成長における役割の変化、取り組む際に注意すべき重点ポイントがまとめられています。

ダイベストメントとは、会社の株式を売却するシンプルな取引ではなく、会社の中の事業の一部や子会社を分離または切り出して(Separation)、売却(Divestment)する取引などを指します。M&Aの手法の一つとして取り扱われることが多いですが、事業の分離を伴う取引は、財務・税務・法務・オペレーション・人事・ITをはじめとした広範な分野において、分離を実行するための多くの判断や意思決定、ステークホルダーとの調整、合意形成などが必要となります。また、契約締結に必要となる契約書類も多岐にわたることから、より複雑な取引と言えます。

本レポートにおいて、セルサイド(売り手)の活動を計画していない企業は2%を下回っており、79%が今後1年半以内に3件以上のダイベストメントを予定していると回答していることから、取引が増加する可能性が高いことが示されています。また、売り手の約半数が「ダイベストメントを決定してから契約締結までの期間が約7か月から12か月」と回答していますが、取引対象となる事業範囲・地域等が広範に及ぶ場合には、契約締結後の実際の分離・切り離し実務にさらに時間を要することがあります。一般的なM&Aと比較して、期間の長さが事業売却の特徴のひとつで、実務上においても複雑となる要素を多分に含んでいます。

さらに、98%のビジネスリーダーが過去12から18カ月間に売却を断念しています。セルサイド(売り手)の企業はダイベストメントを行うための準備が重要であり、対応が不十分であったり、拙速にダイベストメントを実施したりすると、対象事業がもつ本来の価値を棄損してしまう事にもなります。一方で、ダイベストメントの可能性について戦略的に各事業の評価を実施している企業においては、予想を超える取引金額を実現できる傾向が多くみられました。
 
本レポートにおいて、ダイベストメントを進めるにあたって5つの重点事項が示されています。

1.ポートフォリオの見直しとダイベストメントへの準備を早めに行う
頻繁に自社のポートフォリオを見直して、理解に努める。常に将来の事業売却を組み立てるための有利な方法を、先を読んで考える。
2.取引に関係する社内のステークホルダーの一体化と調整を行う
効率的にプロセスを実行するための準備が開始前に整っているよう、取引に関係する社内のステークホルダー間の調整を適切に行う。
3.分離コストと期待を管理する
問題事項や、分離に関する活動でリードタイムが長いものを事前に理解し、ディールの最中に時間に追われて行うのではなく、前もって解決方法を検討しておくことで、取引コストを管理する。
4.テクノロジーを積極的に利用する
テクノロジーによって取引の計画や実行を強化できる方法を積極的に模索する。
5.真の価値創造の可能性を求める
事業を分離することで全て片付くと思い込まない。組織を拡充するためのより強固な道筋を立てるチャンスとして、ダイベストメントを活用する。

本レポートの全文は下記からご覧いただけます(日本語訳)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/articles/corporate-divestiture-survey.html

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
ストラテジー統括 パートナー/Divestment & Separation 担当 戸田 崇生のコメント

日本のビジネス環境を見てみると、2024年は日経平均株価が史上最高値を更新する年となった一方で、上場企業の多くで「PBR1倍割れ」が生じる状況となっており、資本観点からの収益性や事業本来の成長性・将来的な期待について課題がある企業が多く存在している事が浮き彫りになってきています。特に多角化経営している企業については「PBR1倍割れ」の状態に陥っている状態が散見されます。このような事態から抜け出し次のサステナブルな成長ステージに向かうため「事業ポートフォリオの見直し」や「ノンコア事業の切り離し」が戦略等の一つとして検討されることが多いですが、それらを実現する手段として「ダイベストメント(事業売却)」は有効な打ち手の一つとなりえます。
本レポートがダイベストメントを検討されている方々の効果的な実現に向けた取り組みの一助になれば幸いです。
 
【調査概要】
2023年10月6日から10月20日にかけて市場調査会社OnResearchが実施したDeloitteの調査では、直近36カ月以内のダイベストメントに関与したエグゼクティブ500名を対象に、今後12から18カ月のダイベストメント活動に対する予想、および最近のダイベストメントにおける経験を収集しました。
本調査の回答者は全員、収益が5億米ドルを超える非上場または上場企業に勤務しており、収益が10億米ドルを超える法人を代表する回答者が全体の半数を上回りました(55%)。回答者は全員M&A活動に関与している上級職(各企業でのシニアディレクター以上)に就いており、その大半(80%)は経営幹部層です。回答者の企業の属性はコンシューマー、テクノロジー・メディア・通信、資源・エネルギー・生産財、金融、およびライフサイエンス・ヘルスケアと多岐にわたります。回答者の企業の本社所在国は3地域(北中南米、ヨーロッパ、アジアパシフィック)の10カ国(米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オランダ、中国、日本、シンガポール、オーストラリア)です。
 

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