「みどりのものさし」によりグラングリーン大阪の環境価値を包括的かつ視覚的に評価・可視化 自然の力を取り込んだ都市開発を推進し、環境課題に貢献する
※本プレスリリースにおける「緑」「緑化」「みどり」は、屋上緑化や壁面緑化など物理的に植物を増やすだけでなく、環境保全や持続可能な社会創造を実現する緑豊かな都市のオープンスペース創出を含む概念として表現しています。
■策定の背景・日建設計としての取り組み
近年、SDGs をはじめとする地球環境への配慮が叫ばれるなか、2030年までに生物多様性の保全を目指す「30by30」、2050年のカーボンニュートラルの実現を目的とする「Carbon Neutrality by 2050」など、世界的な取り組みとして地球規模で進行している環境問題を食い止めようとする動きが年々活発化しています。こうした気運のなか、ニューヨークやパリなどの世界主要都市では、豊かな緑を都市に取り戻すことがさまざまな環境 課題の解決のみならず、人間生活のQOLや不動産価値の向上に繋がり得ると捉え、公園などのパブリックスペースを起点とした都市開発における「みどり」の価値が見直されています。
「みどり」を都市に取り戻す動きがグローバル規模でのトレンドとなっている一方で、「都市の緑」の有する多面的な価値や質を誰にでも分かりやすく伝えることが難しいという状況から、都市緑化は人や社会、都市に対してもたらす価値が見えづらく効果が理解されにくいという課題がありました。
そこで、先行研究の調査を通じて日建設計は緑が持つ環境価値(温室効果ガスの削減、空気の浄化、温熱環境の改善、生物多様性の促進、雨水流出の抑制)をもとに、5つの指標「みどりのものさし」を策定しました。これまで総合的に評価・分析する手法が困難だったなか、5つの観点から緑の環境価値を数値やビジュアルなどで具体的に可視化することにより、緑化による環境への貢献度がより明確化され、環境課題に対して都市開発の側面からアプローチできる質の高い緑の導入がより促進されることのきっかけとなることを見込んでいます。
■「みどりのものさし」の特長概要
緑がもたらす5つの環境価値を評価項目とし、集計データをもとに算出およびシミュレーションを行う評価方法を設定。5つの指標から、客観的な視点で都市緑地の価値を可視化します。
なお、グラングリーン大阪は、米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な環境性能認証制度「LEED(リード)」の街づくり部門「ND(Neighborhood Development:近隣開発)」の計画認証と、ランドスケープのサステナビリティを主に評価する環境認証「SITES® (The Sustainable SITES Initiative)」の予備認証において、西日本で初となるゴールド認証を同時取得しました。
<グラングリーン大阪における評価および成果概要>
※「みどりのものさし」による「グラングリーン大阪」の環境価値評価詳細
https://www.nikken.jp/ja/dbook/midori_no_monosashi/
※「グラングリーン大阪」 西日本初となる「LEED-ND 計画認証」および「SITES 予備認証」を同時取得(ともに GOLD 認証)
https://umekita.com/teaser_assets/c_assets/topics_pdf/240717_LEED_release.pdf
※インタビュー記事「都市における緑の価値を可視化する、5つの指標」(うめきた2期公式HP内)
https://umekita2.jp/focuson/1434/
1. 温室効果ガスの削減
2. 樹木による空気の浄化
3. 温熱環境の改善
4. 生物多様性の促進
5. 雨水流出の抑制
※年降水量は大阪平年値 1,338mm/yr(1991~2020年の30年間平均値)を使用
※蒸発散量は一旦浸透した雨のうち、植物等を介して蒸発散する水量を示す
■今後の展開
緑は環境的な価値創出に繋がるだけでなく、ストレスを軽減し幸福度を増やす※9、創造性(知的生産性)を高める※3、記憶力を向上させる※4など、人に対するポジティブな効果が期待されています。このため、今後は環境価値だけでなく都市緑化が人にどう作用するのかといった社会価値を可視化していくことも重要と考えています。都市緑化の価値を多角的に評価し分かりやすく伝え、量だけではない質の高い緑を増やし、環境問題の解決に貢献する社会創造を目指す考えです。「社会環境デザイン」を掲げる日建設計では、今後も環境や社会の課題解決に向けた取り組みを推進してまいります。
※1:CO2排出原単位出典:国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html (参照2024-03-01)
※2:建築設備設計基準 令和3年版(https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=366563
※3:Jie, Yin; Nastaran, Arfaei; Piers, MacNaughton. et al. Effects of Biophilic Interventions in Office on Stress Reaction and Cognitive Function: A Randomized Crossover Study in Virtual Reality. Indoor Air. 2019
※4:Jie, Yin; Shihao, Zhu; Piers, MacNaughton. et al. Physiological and Cognitive Performance of Exposure to Biophilic Indoor Environment. Building and Environment. 2018, Vol.132
※5:https://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1013-b1.pdf , (参照2024-03-01)
※6:森林総合研究所(2017) https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2017/20170309-03.html , (参照2024-03-01)
※7:Proceedings of the National Academy of Science, Canada. 2021
※8:https://www.env.go.jp/nature/nats/sound/pdf/panel_hypersonicsound.pdf ,(参照2024-03-01)
※9:Chalmin-Pui, Laurianne Suyin; Roe, Jenny; Griffiths, Alistair. et al. “It made me feel brighter in myself”- The health and well-being impacts of a residential front garden horticultural intervention. Landscape and Urban Planning. 2021, Vol.205
グラングリーン大阪について
9月先行開園に向けて工事中のうめきた公園 ©Akira Ito(aifoto)
■日建設計について
URL:https://www.nikken.jp/ja/