ステロイドの効かないぜんそく治療に新知見 「JAKたんぱく質」に着目

摂南大学

 摂南大学(学長:久保康之)薬学部(薬効薬理学研究室)の奈邉 健教授、松田将也講師、薬学研究科博士課程3年の霜良勇人大学院生らの研究グループは、ステロイドの効かない難治性ぜんそくの治療において、JAKたんぱく質※1が標的分子の候補となることを突き止めました。マウスを使った実験でJAKたんぱく質の働きを抑制すると、ぜんそくの症状を改善することが認められ、新たな治療法につながることが期待されます。 【本件のポイント】 ● 近年課題となっている、ぜんそくの一般的な治療法「ステロイド製剤※2の吸入」に耐性をもつ難治性ぜんそく患者の治療に向け、標的分子としてJAKたんぱく質が候補になることを突き止めた ● 難治性ぜんそくモデルマウスにJAK阻害薬を投与したところ、ステロイド耐性が抑えられるとともにぜんそく症状の改善が認められた   ぜんそくは慢性的な気道の炎症により気管支が狭くなる疾患で、健康な人と比べて空気が通りにくく呼吸がしづらくなる病気です。ぜんそく症状は多くの場合、ステロイド性抗炎症薬を服用することで症状が改善します。しかし、ぜんそく患者の5~10%はステロイドに耐性がつき、高用量のステロイド投与が必要な難治性ぜんそくとなります。そこで、難治性ぜんそく患者のための新たな治療に向け、投薬の治療標的となる分子を突き止めることが喫緊の課題です。   難治性ぜんそくの発症メカニズムは、肺に存在する「2型自然リンパ球※3」が活性化すると炎症を起こすたんぱく質を放出し、免疫系を活性化するからだとされています。そこで、本研究グループは難治性ぜんそくモデルマウスを用いて、2型自然リンパ球のステロイド耐性獲得機序を解析し、治療につながる標的分子を探索しました。その結果、JAKたんぱく質が候補となることを突き止めました。   JAKたんぱく質は免疫細胞の活性化に関与することは知られていましたが、ステロイド耐性獲得機序における役割は明らかではありませんでした。今回の研究成果により、JAKたんぱく質の発現が増加すると2型自然リンパ球がステロイド耐性を獲得しやすくなること、逆にJAKたんぱく質の働きを抑えるとステロイドの効果が増強されることを見いだしました。JAKたんぱく質の働きを抑えることが難治性ぜんそくの新たな治療戦略となる可能性があり、今後、難治性ぜんそくの治療効果を改善できるようになると期待されます。   本研究成果は、2024年5月24日に免疫学を扱う国際学術誌「Immunology(電子版)」に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。 URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/imm.13805 (DOI: 10.1111/imm.13805) 用語説明 ※1 JAKたんぱく質   JAKはJanus kinase(ヤヌスキナーゼ)の略称。細胞の内部に存在する、外部からの刺激を細胞内に伝えるたんぱく質。免疫細胞の活性化に重要。 ※2 ステロイド製剤   ステロイド系抗炎症剤のこと。ぜんそくに対して抗炎症効果を期待して用いられる薬剤。 ※3 2型自然リンパ球   2010年に発見された免疫細胞の一種。活性化することで大量の炎症因子を産生し、ぜんそくなどアレルギーの重症化に関与する。 論文情報 論文名 Involvement of Janus kinase (JAK)-dependent Bcl-xL overexpression in steroid resistance of group 2 innate lymphoid cells (ILC2s) in asthma (和訳:ぜんそく時に2型自然リンパ球にみられるステロイド抵抗性におけるヤヌスキナーゼ〈JAK〉依存性Bcl-xL過剰発現の関与) 著者名 霜良勇人、松田将也、中山幸子、前山紘人、谷岡龍之介、田中祥之、北谷和之、奈邉 健 雑誌名 Immunology(Wiley社) ▼本件に関する問い合わせ先 学校法人常翔学園 広報室 石村、木下 住所:大阪市旭区大宮5丁目16番1号 TEL:06-6954-4026 メール:Koho@josho.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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