【ニュースレター】FRP漁船と船外機が変えるパプアニューギニアのエビ漁

ヤマハ発動機株式会社

~現地の零細漁業者のバリューチェーン連結を支援し、持続的な発展をめざす~

FRP漁船と小型船外機の組み合わせで沖合の漁場へ。日本人コンサルが安全かつ効率的な漁を指導

豊かな資源を暮らしの向上につなげるために
 南太平洋諸国の中で、最も大きな国土をもつパプアニューギニア独立国。写真は、同国ガルフ州で実施したエビ漁試験操業の様子です。
 「このあたりは豊かな水産資源に恵まれていますが、住民はその恩恵を十分に受けておらず、高い貧困率も課題です」と話すのは、当社海外市場開拓事業部(OMDO)国際協力グループの渡邊基記さん。「州全体で年間1,000トンもの未利用・低利用エビが活用可能というデータもあるのですが、実際の漁獲量はその1割未満しかなく、零細漁業者の生活向上には結びついていないのが現状です」と話します。
 目の前の豊富な資源を十分に活用できない背景には、いくつもの階層的な障壁が存在します。たとえばエビを収穫するための漁法や漁具、また鮮度を保ったまま卸市場に届けるための保存設備や輸送手段、さらには販売ルートの開拓・拡大など、それら一つひとつを改善し、豊かな漁場とマーケットまでを連結しなくてはなりません。
 「パプアの天然エビは、本当においしい。そのおいしい食材を、たとえば日本のレストランなどでお客さんの口に入るまでつなげることができれば、この地域の暮らしは格段に向上すると考えています」
※OMDO=Overseas Market Development Operationsの略。当社がビジネスを展開する約180の国と地域のうち、アフリカ、中東、中央アジア、南アジア、南太平洋、中米、カリブなど、140を超える市場をこの部門が担う。「世界の人々に豊かさと喜びを ~Challenge & Dedication Prosperity~」を事業ミッションに、現場第一主義のビジネスを展開する
 
ブラックタイガーをはじめ、豊富な天然エビが泳ぐパプアニューギニアの海。
この豊かな漁場と、日本の食卓などの連結を目指すプロジェクト

FRP漁船と小型船外機、冷蔵庫等を配備
 こうした仮説を実証し、現地に根づかせていくために、当社が事業の代表となり、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援による『パプアニューギニア零細漁業者のバリューチェーンへの連結による小型船外機船市場創出の普及・実証・ビジネス化事業』を開始しました。その第一歩として、ガルフ州のコミュニティにFRP漁船と小型船外機、漁具等の機材一式を導入し、漁業指導を行う取り組みが始まっています。
 「従来の手漕ぎによる木造船では、エビが沿岸近くに寄ってくる11~3月だけが漁期でしたが、より沖の漁場で操業できる動力船があれば、漁期を大幅に増やすことができます。また効率的な漁法や漁具の扱いについては、コンサルタントがその指導にあたっています」と渡邊さん。
 今年5月の出張では、海辺の民家にソーラーパネルで動く冷蔵庫も設置。水揚げされたエビは、ここで一時保管されることになります。一方で、首都にある卸市場までの輸送については陸路の輸送インフラが未発達のため、安定して運べる海上輸送手段の構築にも今後取り組んでいく予定です。
 「求めているのは一時的な発展ではありません」と渡邊さん。エビ漁による生活向上を持続させるには、枯渇を防ぐ資源管理も重要な課題。そのために、当社マリン事業部の支援を受け、漁場管理につながる携帯アプリを開発するなど、現地で汗を流す人々の情熱とデジタル技術の両面から、パプアニューギニアの課題解決にチャレンジしています。
 
海辺に据えられた一時保管のための冷蔵庫。住民とともに渡邊さんが屋根にのぼり、ソーラーパネルを設置した
 
■|参考資料|(外部)JICA/国際協力機構
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/1461/Fs211008_summary.pdf

■広報担当者より
ニュースレター取材時、渡邊さんはこのプロジェクトを進めていく中で最も難しかった点を「現地住民からの理解」と語りました。パプアニューギニアは800以上の部族がいる多民族国家です。部族にはそれぞれの常識があり、これまで彼らのコミュニティにいなかった“ヤマハ発動機“が何者なのかを説明することから始まったそうです。OMDOの事業ミッション「世界の人々に豊かさと喜びを」もたらすための草の根の努力を、今回知ることができました。

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