再生可能エネルギー投資で取るべきリスクとは?

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

再生可能エネルギー資産を開発するか、すでに操業中の資産を購入するかでは、潜在的なリターンとリスクプロファイルは大きく異なります。金利が上昇する中で、その差はより明確になりました。
 
  ダンカン・ヘイル
  プライベート・マーケット・グループ、
  シュローダー・グリーンコート


再生可能エネルギーが資産クラスとして成熟するにつれ、投資戦略は2つの異なるアプローチに分かれてきました。大きく分けると、短期的にキャピタルゲインを狙う「ビルド・アンド・セル」戦略と、長期的にインカムゲインを通じた収益を狙う「バイ・アンド・ホールド」戦略です。当然のことながら、これら2つの戦略は相補的な関係にあり、お互いに健全で堅牢な他方の戦略を必要とします。

重要な点は、それぞれの戦略は投資家に異なるリスク・プロファイルを提供することです。「バイ・アンド・ホールド」の投資家は、再生可能エネルギー投資におけるファンダメンタルズが健全なエクスポージャーを通じ、インフレ、電力価格、資源、操業リスクなどの主要なリターンドライバーにアクセスすることができます。「ビルド・アンド・セル」の投資家は、より集中的な方法で同じリターンドライバーにアクセスします。割引率の変動へのエクスポージャーとレバレッジの利用により、リターンは増幅されますが、これらは「ビルド・アンド・セル」投資家の金利サイクルに対する感応度を高める投資となります。


主要なリターンドライバーに対する感応度の違いが、近年ますます明らかとなってきました。低金利環境では、「ビルド・アンド・セル」戦略が強い追い風を受けました。金利が低下するにつれて、プロジェクトの価値が一般的に上昇したため、「ビルド・アンド・セル」戦略は、低リスク戦略を大幅に上回るパフォーマンスを示しました。しかし金利上昇局面では、「バイ・アンド・ホールド」の投資家がより高いバリュエーションを享受することができます。インフレが金利上昇の一因である場合、金利に連動してインフレに連動したキャッシュフローが増加するため、運営資産の所有者はプロテクションを有しています。以下でバリュエーション感応度を比較します。

現在の市場に注目している投資家にとって、将来がどうなるか、そして「ビルド・アンド・セル」投資と「バイ・アンド・ホールド」投資の両方におけるリスクをどのように評価するかが重要な課題となります。


再生可能エネルギー・インフラに対する「バイ・アンド・ホールド」戦略のバリュエーション・ダイナミクス

運営中の再生可能エネルギー資産は、主要なドライバーが少なく、評価するのが比較的容易です。運営中の資産は、長期にわたって比較的正確に発電量を推定でき、固定価格契約または電力市場を通じて売電されます。通常、運営コストは固定されており、収益に占める割合は比較的低くなります(約25~30%)。

結果として得られるフリー・キャッシュフローを割り引いて価値が算出されます。
主なリスクは、資産に予想されるエネルギー収量(運転効率の変化や天候リスクなど)と、得られた電力の価格(電力価格やインフレなどのマクロ要因に左右される)です。これらの要因は、一般的にリスクフリーレートに対するプレミアムとみなされ、ある程度の金利感応度(少なくとも長期的には)を持つため、割引率の計算に含まれます。


「ビルド・アンド・セル」戦略のバリュエーション・ダイナミクス

「ビルド・アンド・セル」戦略のエコノミクスは、より多くのパラメータが影響しますが、比較的理解は容易です。まず、特定の資産を開発・建設するためにかかる費用を見積もる必要があり、次に、その資産がいくらで売却できるかを見積もるために、上記と同じ計算を行います。これら2つの数値の差が「開発プレミアム」です。このプレミアムは方程式の両側の不確実性によるリスクにさらされており、資産の建設から市場への売却までにかかる時間によって増幅されます。


開発中心の戦略の場合、これらのリスクには、土地の確保、計画、送電網の接続、電力販売のための市場へのルートなどが含まれます。例えば、典型的な洋上風力発電所の開発期間は、初期の設計から建設開始まで約7年、その後さらに2年の建設期間がかかります。これらのリスクは一般的に二律背反ですが、プロジェクトを建設し、運営後に売却するためには全て避けられないリスクです。
 

「ビルド・アンド・セル」の投資家と「バイ・アンド・ホールド」の投資家のリターンには本質的な対立があります。結局のところ、各戦略のプロジェクトの経済性の分割はゼロサムゲームです。

しかし、実際の両者の関係は微妙です。「バイ・アンド・ホールド」の投資家にとって重要なのは、購入時の実際の割引率ですが、「ビルド・アンド・セル」の投資家にとって最も重要な側面は、資産の保有期間にわたる割引率の方向性の変化です。


2010年代の「ビルド・アンド・セル」ビンテージは好条件に恵まれました。サプライチェーンが成熟し、建設コストは一貫して低下しました。一方、金利の低下と、資産クラスとしての再生可能エネルギーの受け入れの増加により、高品質な運用資産の買手が、一般的に長期にわたってそれらの資産に対し、より多くの金額を支払うことを厭わなくなりました。こうした追い風は10年以上にわたって続き、開発に伴うリスクの認識もそれに応じて調整されてきました。


デベロッパーは、10年以上にわたって収益の向上に貢献してきた長期的な追い風が今後も下支えになるとの期待から、一見安全そうに見える、想定利益の少ないプロジェクトに目を向けました。債務は少なく、金利の圧縮効果を高めることができました。送電網、計画、土地は現在ほど不足しておらず、多くの市場において、多くのプロジェクトでオークションによらない固定料金制が採用されていました。


高金利環境で見通しはどのように変化したか

2023年の開発市場では、評判の高い大企業が苦境に立たされました。Ørstedは大幅な株価下落に見舞われ、米国洋上風力開発プラットフォームの減損を発表するなど、多くの要因を背景に経営陣が交代しました。ヴァッテンフォールは、英国の1.4GWのノーフォーク・ボレアス洋上風力発電所で4億ポンドの減損損失を計上し、撤退しました。2023年の英国洋上風力の入札では、インフレに伴う資本コストと設備投資の増加が入札上限価格に反映されなかったため、事業者のボイコットにより入札がありませんでした。


過去2年間に建設が開始され、レバレッジを活用したプロジェクトは、資本コスト上昇の影響を受ける可能性があります。これは、「ビルド・アンド・セル」の投資家にとって、開発プレミアムと最終的な収益が圧迫されることを意味します。開発段階のプロジェクトには、依然として根本的なリスクが存在し、土地、送電網、計画、市場投入ルートの確保は以前よりもはるかに難しくなっています。固定価格でのオフテイク契約の獲得は、以前はすべてのプロジェクトで同じでしたが、現在では、オフテイク契約を獲得できるのは一部の開発プロジェクトに限られ、それも多くの場合は競争的プロセスの一環としてのみ獲得されます。


これは、再生可能エネルギー産業やその参加者が破たんしたわけでも、エネルギー移行が頓挫したわけでもありません。結局のところ、世界はネットゼロ目標を達成するために風力と太陽光を必要としており、開発業者はそれを実現するために極めて重要です。現在、多くの開発者にとって太陽光発電の方が簡単な選択肢かもしれませんが、風力発電の高い負荷率(年間の平均電力÷年間の最大電力)とより安定した発電プロファイルは、将来の電力供給にとって極めて重要です。風力発電と並行してグリーン水素の製造を考慮した場合に、特に当てはまります。さらに、再生可能エネルギーの均等化発電原価(LCOE)と言われる発電量当たりのコストは上昇していますが、コスト効率、規模、供給の安定性から、エネルギーミックスの魅力的な一部であることに変わりはありません。


今日の環境における相対的リスクの評価

インフレコスト、金利上昇、サプライチェーンにおける構造的な供給不足が組み合わさり、開発業者にとってより厳しい環境となっています。10年間にわたる低インフレ、低金利、再生可能エネルギーの設備投資/LCOEの低下が続いた後、急激な反転が起きました。開発業者と政策立案者は、新しい世界に適応する必要があります。今後のプロジェクトには、より高い価格と、納期リスクを軽減する規制の枠組みが必要となります。この調整段階は、数カ月ではなく数年単位で行われるため、一部の開発事業者がリスクの価格設定を誤って評価し、2023年に見られたような問題を引き起こす危険性があります。投資家は、必要なリターンの中にこうしたリスクを織り込み、よりシンプルな運用資産との相対的な基準でリターンを評価しなければならないでしょう。


再生可能エネルギーの長期的な期待リターンの範囲を示す賢明な方法は、上場風力発電資産の割引率を見ることです。この市場セグメントでは10年以上にわたって上場参加者が参加しており、透明性の高いデータソースを提供しています。最近の経験は、テクノロジーや地域の観点から、当社が管理する他の資産ポートフォリオに見られるものとほぼ一致しています。下図は、シュローダー・グリーンコートが管理する上場風力発電資産のポートフォリオの割引率の推移を示しています。

 


今日のレバレッシ有の割引率は、過去10年間を上回る水準にあります。特に過去3~4年間のリスク・プロファイルが比較的一貫していたことを考えると、この上昇は2つの重要な要因によるものです。1つ目は債券利回りの上昇で、リスク・フリー・レートを上回るリスク調整後プレミアムを維持するためにはリターンを増加させる必要があります。もうひとつは、1つ目と同様に重要なことですが、多くのプロジェクトが市場に投入される一方、伝統的な投資家から利用できる資金量の減少で、競争が減少していることです。市場は、2021年半ばの金利の底値から200bps以上上昇しています。

これは「バイ・アンド・ホールド」戦略の投資家にとって、過去10年間を上回る、高い期待名目リターンで資産を購入し、金利が上昇してもリスク・プレミアムを維持できる絶好の機会となります。また、開発段階の「ビルド・アンド・セル」投資家にとっての課題も示しています。現在、資産を市場に投入している投資家は、一般的に割引率が最初の投資決定時よりも大幅に高い時期に開発を行っています。 開発・建設を通じて資産を取得することで、割引率に多少の低下圧力が生じる可能性はありますが、当初の開発プレミアムがかなり逼迫していた場合、最近の割引率の上昇によって開発者の利益が大幅に減少(場合によっては完全に減少)した可能性があります。

全体として、最近の市場ダイナミクスは、再生可能エネルギーで利用可能な差別化されたリスク・プロファイルを実証しています;このような差別化は、それ以前の割引率が長期的に低下してきた期間には見られなかったことです。


では、今後はどうなっていくのでしょうか?多くの市場コメンテーターは、現在のサイクルで金利はピークに達したと考えており、時間の経過とともに割引率の低下をサポートし、「ビルド・アンド・セル」投資家を支援する可能性があると述べています。逆に、市場に投入されるプロジェクトの量と全体的な資本不足は、少なくとも短中期的には割引率が上昇し続けることを意味するかもしれません。今後の割引率の方向性が不透明であるため、「バイ・アンド・ホールド」投資家はその資産クラスへのエントリーポイントを熟考することになりますが(主に後悔するリスクにさらされる)、この不確実性は、現在の「ビルド・アンド・セル」投資のビンテージにとっては逆風にも追い風にもなりうるでしょう。


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