12月の炎上分析データ公開!炎上件数、134件(調査対象期間:2023年12月1日~12月31日)
一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所による最新の炎上事案分析
シエンプレ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都渋谷区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、
調査対象期間に発生したネット炎上についての件数と、その内訳の分析結果を公開しました。
■調査背景
2023年1月31日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2023」(調査対象期間:2022年1月1日~2022年12月31日)を公開しました。
継続調査の結果報告として、今回調査対象期間に発生した炎上事案を、新たに分析しています。
○「デジタル・クライシス白書2023」
https://www.siemple.co.jp/document/hakusho2023/
そして、2024年1月30日「デジタル・クライシス白書2024」(調査対象期間:2023年1月1日~2023年12月31日)を公開しました。そちらもぜひご確認のほどよろしくお願いいたします。
◯「デジタル・クライシス白書2024」
https://www.siemple.co.jp/document/hakusyo2024/
■調査の概要
調査期間:2023年12月1日~12月31日
調査対象:X(旧Twitter)、Facebook、Yahoo!ニュース、Amebaブログ、FC2ブログ、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる など、SNS媒体と炎上拡大の要因になりやすいとデジタル・クライシス総合研究所が判断した媒体への投稿。
調査方法:デジタル・クライシス総合研究所ソーシャルリスニングツールを使用
「炎上」というキーワードを含む投稿から下記の基準により「炎上」と判断した事案を抽出(※)。
炎上の原因となった問題行動の主体、問題行動の内容、炎上を起こした企業の業種など、さまざまな切り口から傾向を分析しました。
※デジタル・クライシス総合研究所では「炎上」の定義を、「企業や団体、個人が発言した内容、行為がSNSやWebメディア上に掲載・拡散され、それに言及した批判や非難の投稿が100件を超えた場合」としています。(投稿数についてはオリジナル投稿のみを計上。コメントのない再投稿は含みません)
各グラフにおける割合については、全て小数点以下第2位を四捨五入しました。
分析対象投稿数:15,769件
うち炎上事案数:134件
■調査結果
1.炎上主体別 発生件数
1-1.炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
12月の炎上事案発生件数は134件でした。前月と比較し、13件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」47件(35.1%)、「一般人」37件(27.6%)、「メディア以外の法人」38件(28.4%)、「メディア」12件(9.0%)という結果でした。
割合については下図のとおり、前月と比較し、「著名人」が1.1ポイントの増加、「一般人」が4.4ポイントの減少、「メディア以外の法人」が4.6ポイントの増加、「メディア」が1.2ポイントの減少という結果でした。
前年平均比では、炎上事案発生件数は3件増加しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が1件の増加、「一般人」が2件の減少、「メディア以外の法人」が3件の増加、「メディア」が1件の増加という結果でした。
前年同月比では、炎上事案発生件数は44件減少しています。
炎上主体別の増減は、「著名人」が23件の減少、「一般人」が10件の減少、「メディア以外の法人」が13件の減少、「メディア」が2件の増加という結果でした。
2-1.炎上の内容別 発生件数と割合(月次推移)
炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が1件(0.7%)、「規範に反した行為」が7件(5.2%)、「サービス・商品不備」が15件(11.2%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が111件(82.8%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」にあたる行為は1件の減少、「規範に反した行為」は14件の減少、「サービス・商品不備」は3件の増加、「特定の層を不快にさせる行為」は1件の減少という結果でした。
※特定の層を不快にさせる投稿:法令等、規範に反した行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)
前月と比較すると割合については下図のとおり、「情報漏洩」が0.7ポイントの減少、「規範に反した行為」が9.1ポイントの減少、「サービス・商品不備」が3.0ポイントの増加、「特定の層を不快にさせる行為」が6.6ポイントの増加という結果でした。
前年平均の件数と比較すると、「情報漏洩」が増減なし、 「規範に反した行為」が12件減少、「サービス・商品不備」が4件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が19件増加しました。
前年平均の割合と比較すると、「情報漏洩」が0.1ポイントの減少、「規範に反した行為」が9.3ポイントの減少、「サービス・商品不備」 が3.3ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が12.6ポイント増加しました。
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が1件増加、「規範に反した行為」が11件減少、「サービス・商品不備」が27件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が7件減少しました。
前年同月の割合を比較すると、「情報漏洩」が0.7ポイント増加、「規範に反した行為」が4.9ポイントの減少 、「サービス・商品不備」が12.4ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が16.5ポイント増加しました。
3.炎上内容の詳細区分別 発生件数
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案発生件数が33件と最も多く、次いで「非常識な行動(モラルのなさ)」が21件でした。
4.法人等の業界別発生件数
4-1.法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上50件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「メディア」業界で12件という結果でした。
業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図の通りです。
5.企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の主体が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について分析しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体、国外に所在する企業等は調査対象から除外しています。
5-1.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が10件(29.4%)、「非上場企業」が主体となった事例が24件(70.6%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は3件増加、「非上場企業」の件数は2件減少しました。
割合を比較すると、「上場企業」の割合は8.2ポイント増加しました。
5-2.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は4件増加、「非上場企業」の件数は1件増加しました。
割合を比較すると「上場企業」の割合は8.7ポイント増加しました。
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は2件減少、「非上場企業」の件数は7件減少しました。
5-4.従業員数・売上別
従業員数1,000人未満、売上高100億円未満の企業規模で多く炎上事案が発生しました。
一方で従業員数4,000人前後の企業であっても炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や売上高であっても、炎上は発生する可能性があるといえます。
また下図のグラフには記載がありませんが、売上高約3.8兆円、従業員数約9,000人といった大企業の炎上事案も確認されました。
■分析コメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏
2023年12月の炎上事例では、日清食品株式会社の「どん兵衛」のCMが印象的であった。タレントのアンミカ氏を起用したWeb動画に対し、「密入国者を使うな」「反日タレントを使うな」といった批判がSNS上で相次いだ。不買運動を呼びかける投稿も見られ、ある投稿ではスーパー店頭でどん兵衛が積み上げられた画像が「全然売れてない、不買運動が効いてる」と煽るコメントとともに共有された。
この騒動に対して、日清食品は特に対応を取らず、CMの動画は現在も残されており閲覧可能である。また、日経クロストレンドの調査によると、この件がどん兵衛の売上に悪影響を及ぼすどころか、むしろ例年の12月と比較して微増したことが明らかになっている。動画を紹介した日清食品のSNSへの投稿は約9000万回表示され、炎上がバズを後押しした形になった。
本件は、謝罪や撤回を避けるべき炎上事例の典型であり、日清食品の対応は適切だったと言える。東京大学大学院教授の鳥海不二夫教授による分析では、この炎上は政治的なスタンスが背景にあり、「アンミカ氏が反日的発言をしたり,密入国疑惑があったりするので、そのような人物をCMに起用するべきではないという意見vs密入国してないという意見」という構図があった。さらに、密入国の疑いは事実無根であり、反日発言として指摘された「日本は世界の恥」については、ある政治家のLGBTカップルに関する寄稿に対するコメントの一部であることが明らかにされている。
政治的・差別的な炎上の最中に謝罪や撤回を行うと、それらの批判的な意見を認めることになり、企業の姿勢が疑われる可能性がある。芸能人をCMに起用する際には、その人物が過去にどのような批判を浴びていたかを調査するのはもちろん、その結果を元に良くシミュレーションをしておき、批判がついても動じないことが大切だ。
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)
抽出したデータは以下の表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)
個人 | 著名人 | 芸能人、政治家、アスリート、経営者 それ以外の職業の人物については、データ確認日時点でフォロワー(もしくはチャンネル登録者、読者登録者)数が100万人を超えている場合 |
一般人 | 著名人の条件にあたらない個人 |
|
法人等 | メディア以外 の法人 |
メディア以外の法人、社団法人、公益団体 法人の関係者(役員、従業員など) |
メディア | テレビ局、新聞社、出版社、ネットメディアなど |
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、 2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計を行っております。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは以下の表2に基づき分類しました。
(表2)分類基準(炎上の内容)
分類名 | 詳細 |
情報漏洩 | - |
規範に反した行為 | 法令等、規範に反した行為 暴力・暴言、著作権法違反、ハラスメントなど |
サービス・商品不備 | サービス・商品の不備による炎上 異物混入、サービス・商品の瑕疵など |
特定の層を不快にさせる行為 | 法令等、規範に反した行為ではないものの、他者を不快にさせる行為 問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など |
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、 2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
金融 | サービス | 食品 | 政治 |
IT | 建設・不動産 | 生活関連 | 芸能 |
メディア | 物流・運送 | 衣料・装飾 | 教育 |
自動車・機械 | エネルギー・資源 | 飲食 | 医療 |
小売・卸 | 電機・精密 | 娯楽・レジャー | 宗教団体 |
参考:業界動向サーチ「ジャンル別業界一覧」https://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
名称:一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事:佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日:2023年1月20日
公式HP:https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社:シエンプレ株式会社