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国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学大学院工学研究科の岩田直幸博士、同低温プラズマ科学研究センターの堀勝特任教授、田中宏昌教授、石川健治教授らの研究グループは、名城大学プラズマバイオ応用研究センターの伊藤昌文教授、加藤雅士教授、志水元亨准教授、西川泰弘准教授らとの共同研究で、低温プラズマで生成した酸素ラジカルをトリプトファンを含む栽培溶液に照射することで、生成したトリプトファン・ラジカルが大腸菌内の酵素不活性化や代謝異常を誘導するという“その場殺菌”技術の開発に成功しました。本研究成果は、2023年12月21日付国際科学雑誌「Environmental Technology&Innovation」に掲載されました。
【本研究のポイント】
・低温プラズマで生成した酸素ラジカル注1)を栽培溶液に照射し、農薬を使用せず栽培中に殺菌処理できる"その場殺菌"技術を開発。
・栽培溶液中のアミノ酸のトリプトファン注2)をラジカル化し、大腸菌の代謝異常を誘導できる。
・水耕栽培の溶液処理システムにおける衛生管理の基盤技術として有望である。
【研究概要】
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の岩田直幸博士、同低温プラズマ科学研究センターの堀勝特任教授、田中宏昌教授、石川健治教授らの研究グループは、名城大学プラズマバイオ応用研究センターの伊藤昌文教授、加藤雅士教授、志水元亨准教授、西川泰弘准教授らとの共同研究で、低温プラズマで生成した酸素ラジカルを、トリプトファンを含む栽培溶液に照射することで、生成したトリプトファン・ラジカルが大腸菌内の酵素不活性化や代謝異常を誘導する、という"その場殺菌"技術の開発に成功しました。本共同研究グループは、世界に先駆けて、殺菌剤を使わずに電気エネルギーから生成する低温プラズマによる殺菌技術を実現してきました。今回、その技術をさらに発展させ、最新水耕栽培における溶液の衛生管理技術として有望である酸素ラジカルによる殺菌技術の開発に成功しました。
本研究では、 SDGsやみどりの食料システム戦略注3)の下で化学農薬が削減・制限される作物生産においても、自然エネルギーから得られた電気エネルギーを元に窒素と酸素、水蒸気を含む大気を低温プラズマ化するだけで、殺菌に利用することができる革新的な技術を実現しました。この技術は、カーボンニュートラルに掲げられる脱化石燃料、温室効果ガス低減の目標に向けた技術開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2023年12月21日付国際科学雑誌「Environmental Technology&Innovation」に掲載されました。
【成果の意義】
本研究は、化学農薬を使わずに、電気と大気から低温プラズマによって水耕栽培の溶液の殺菌を栽培期間中に実施することができ、衛生管理の技術を実用化する上で、重要な基盤技術の開発を達成したものであり、持続可能な作物生産に向けた農法の飛躍的な技術の進歩を示すものです。
本研究は、2020年度から始まった名古屋大学低温プラズマ科学研究センターにおける『共同利用・共同研究』と名城大学研究センター推進事業費の支援、JSPS科研費 19H05462の助成を一部受けて行われたものです。
■詳細については添付PDFもしくは本学サイトニュースリリースをご覧ください。
名城大学ニュースリリースURL:
https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/7a64307c963afd40c659257ffd5cd60c.pdf
【用語説明】
注1)酸素ラジカル:
分子が共有する電子対が解離して不対電子もつ酸素原子のこと。ここでは低温プラズマで生成させた高速電子を衝突させることで酸素分子が解離して生成する。
注2)トリプトファン:
芳香族アミノ酸の一種であり、化学式C11H12N2O2であり、ピロール環(四個の炭素と一個の窒素が頂点をもつ五角形を形作る)とベンゼン環(六個の炭素が六角形を形作る)が縮合したインドール環を側鎖にもつ。
注3)みどりの食料システム戦略:
我が国の農林水産省が2021年に策定した食料生産の方針のこと。中長期的な観点から、我が国の食料・農林水産業を生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現することを推進し、数値目標に2050年までに「化学農薬の使用量を50%低減」、「輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減」を達成することなどが掲げられる。
【論文情報】
雑誌名: Environmental Technology & Innovation (Elsevier社 学術雑誌)
論文タイトル: Oxygen radical irradiation transforms an organic fertilizer l-tryptophan into an environment and human-friendly bactericide
著者: Naoyuki Iwata, Kenji Ishikawa, Hiromasa Tanaka, Masaru Hori (名古屋大学)
Yasuhiro Nishikawa, (名城大学 薬学部)
Hiroyuki Kato, Motoyuki Shimizu, Masashi Kato, (名城大学 農学部)
Masafumi Ito (名城大学 理工学部)
DOI: 10.1016/j.eti.2023.103496
URL:
https://doi.org/10.1016/j.eti.2023.103496
【研究者連絡先】
東海国立大学機構 名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター 兼) 同 大学院工学研究科 電子工学専攻
教授 石川 健治(いしかわ けんじ)
TEL:052-788-6077
E-mail: ishikawa.kenji@nagoya-u.jp
名城大学プラズマバイオ応用研究センター
教授 伊藤 昌文(いとう まさふみ)
TEL:052-838-2306
E-mail:ito@meijo-u.ac.jp
【報道連絡先】
東海国立大学機構 名古屋大学広報課
TEL:052-789-3058 FAX:052-788-6272
E-mail:nu_research@t.mail.nagoya-u.ac.jp
名城大学 渉外部広報課
TEL:052-838-2006 FAX:052-833-9494
E-mail:koho@ccml.meijo-u.ac.jp
▼本件に関する問い合わせ先
名城大学渉外部広報課
住所:愛知県名古屋市天白区塩釜口1-501
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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