ブラジルのヘルステック企業へのJICAインパクト投資-AIを活用し低中所得者向けプライマリケアを提供-

JICA広報部報道課

「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、日本の政府開発援助(ODA)実施機関として開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人国際協力機構(理事長:田中明彦、本部所在地:東京都千代田区、以下:JICA)はDRCONSULTA LTD.(ケイマン諸島法人。以下「ドトル・コンスルタ社」)との間で2023年8月7日に出資契約に調印しました。

当社は、ブラジル最大の商業都市サンパウロで展開する28か所の医療クリニック及びオンラインにて、低中所得者向けのプライマリケア及び低価格な医療保険を提供しています。計250万人の患者データから自社開発したAIアルゴリズムを活用したオペレーションや、健康増進・収益性を同時に伸ばす医療のサブスクリプション・モデル等により、低中所得者層でもアクセスできる低価格な医療を実現しています。JICAの出資金は、すべての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」に貢献するドトル・コンスルタ社の取り組みを一層拡大させるための医療機器や設備投資費用として活用されます。
 
地下鉄駅直通のショッピングセンター内にあるクリニック
 
クリニックの様子。診察前・中・後の工程に分かれており、滞在時間が計1時間、待ち時間が計20分以内のKPIが設定されている。
 
クリニック外観
 
キヤノンのMRI機器
 
東芝のX線関連機器

 
<事業のポイント>

 
1. AIを駆使したビジネスモデルを構築。貧困層向けの低価格な医療を実現:

ドトル・コンスルタ社は、医師の家系に生まれ投資銀行等で経験を積んだThomaz Srougi氏が2011年にブラジル・サンパウロ州の貧困街ファベーラで医療クリニックを開設して創業されました。低中所得者層が物理的・価格的にアクセスできるプライマリケアの実現を目指し、疫学・人口動態・リソース共有等の観点から綿密に計画された28か所のクリニック及びオンラインにおいて、計250万人分の患者データから自社開発したAIアルゴリズムを用いて効率的な医療オペレーションを築いています。さらに、2021年には患者が1か月8米ドル程度の料金を払えば周囲の友人・家族4人まで割引価格(無保険一般診療8米ドル程度)の医療を受けられるサブスクリプションサービスを、2022年には一定の保険料を支払えば無制限に医療を受けられる低価格帯の医療保険を開始しました。患者の多様なニーズに応えるメニューを充実させ、年間70万人の患者に60以上の専門診療と検査を提供しています。

2. 約1年の待機時間、即日アポイントメントが可能に。

ブラジルでは国民皆保険制度(SUS)が存在しますが、同国の恒常的な財政赤字による予算不足等により、SUSが適用可能な公的・民間医療機関(SUS適用病院)の受入れ能力は限られています。SUS適用病院での平均待機時間は、コロナ禍で延期されていた医療処置も含め、300-400日程度に達します。このため、国民全体の25%程度の一定の所得を有する層は、民間の医療保険に自らまたは雇用主を通じて加入し、SUSを介さずに民間医療を受けています。他方で、一定の支払い能力はあるものの既存の高額な民間医療保険の負担は困難であり、SUSでは上記待機時間等により十分な医療を受けられていない低中所得者層が1億人以上存在すると言われています。

ドトル・コンスルタ社は、このような公的・民間医療保険制度の間に零れ落ちている低中所得者層にプライマリケアを提供しています。診察予約時にアプリから登録される患者情報から必要な医療プロセス・医師・看護師を予測してアポイントメントを自動化・最適化しています。また、国際基準に基づいて医師と作成した300以上の診療ガイドラインをデジタル化して運用し、ガイドライン遵守を医師の報酬と紐づけることで医療の質を統一化しています。このような工夫により、医療費を下げ、待機時間を即日アポイントメントも可能な程短縮することに成功し、患者満足度は公的病院の約2倍に達します。

3. 日本の医療機器を多用。サンパウロの世界最大の日系人コミュニティで高い評価

ドトル・コンスルタ社は、低価格帯ながら医療の質にもこだわっています。日本の医療機器に信頼を置き、当社によれば、当社が使用する医療機器の約8割はキヤノン、オリンパス、オムロン、コニカミノルタ、東芝といった日本の医療機器です。JICAは、日本製の医療機器を積極的に導入し、拡大していく当社と日本の医療機器やサービス提供企業とのビジネスマッチングにも寄与していきます。また、サンパウロは世界最大規模の120万人の日系人が存在する都市です。当社も日系人街であるリベルダージにクリニックを出店し、多くの日系人医師を抱え、多くの日系人患者をケアしています。日系社会へ長年協力を行っているJICAが参画することによる信頼・ブランド力の向上による顧客増加が期待されています。

4. 地場の投資ファンドや開発金融機関とのパートナーとの協調投資によるSDGsへの貢献

本出資は、中南米最大の地場投資会社でありブラジルのヘルスセクターでIPO・M&A経験が豊富なPatria Investments Ltd.傘下のグロース・エクイティ・ファンドであるKMP Holdings Cayman, LLCによるリードの下、中南米の地域開発金融機関であるIDB InvestとJICAが協調投資を行うものです。IDB InvestとJICAの協調投融資枠組み(CORE:下記リンク参照)に基づく案件であり、JICAにとり、中南米初の直接出資案件になります。これからもJICAは現地に根差すパートナーとともに、ドトル・コンスルタ社のような革新的なビジネスモデルでUHCを目指す企業を支援し、SDGsゴール3(全ての人に健康と福祉を)及びゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)に貢献していきます。
(関連リンク) 
米州開発銀行(IDB)グループとのパートナーシップ拡大に関する覚書に署名: 中南米・カリブ地域の経済回復及び社会包摂を促進
https://www.jica.go.jp/Resource/press/2020/20210324_30.html

会社紹介ビデオ
格納先:https://jica.gigapod.jp/g93f4f849afc268ce2a032591fd2e2ced1db7feb0
ゲストID : press
パスワード : M8ewQBRN

■独立行政法人国際協力機構(JICA)について
JICA は、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関で、150 以上の国と地域で事業を展開しています。
国際社会の課題は日本とも密接に関係しています。国内外のパートナーと協力してそれらの解決に取り組み、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献します。
詳しくは https://www.jica.go.jp/index.html をご覧ください。
 


 


 

 

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