DXに必要となる人材のスキル強化を目指し、「デジタルスキル標準」を公開

独立行政法人情報処理推進機構

プレスリリース
2022年12月21日
独立行政法人情報処理推進機構

 
プレス発表 DXに必要となる人材のスキル強化を目指し、「デジタルスキル標準」を公開
~DXを推進する人材の役割とスキルを定義した「DX推進スキル標準」を新たに策定~

 経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田達夫)は、企業・組織のDX推進を人材のスキル面から支援するため、個人の学習や企業の人材育成・確保の指針     となる「デジタルスキル標準(DSS)」を策定し、本日公開しました。

 URL:https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/

 日本企業におけるDXへの取組みが加速するなか、デジタルの専門性や素養を持った人材の不足が課題のひとつになっています。経済産業省は本年3月末に、ビジネスパーソン一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目指し、「DXリテラシー標準(DSS-L)」を公開しました。さらに、政府のデジタル田園都市国家構想基本方針では、「DXリテラシー標準」に加え、より専門的な知識や能力が必要とされる、DXを推進する立場の人材向けのスキル標準を策定することが明示されました。これを受けIPAは経済産業省とともに、6月に有識者WGを設置し、専門家による検討・議論を重ね、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」を今回新たに策定しました。これら2つを今般、経済産業省が主催する「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、「デジタルスキル標準(DSS)」として取りまとめました。

 本日公開する「デジタルスキル標準」は、3月末に公開した「DXリテラシー標準」と今回新たに策定した「DX推進スキル標準」の2つで構成しています。すべてのビジネスパーソンに向けた学びの指針やそれに応じた学習項目例を定義した「DXリテラシー標準」と、専門性を持ってDXの取組みを推進する人材向けの「DX推進スキル標準」をあわせて提供することで、DXに必要となるスキルを総合的に参照できます。
 「DX推進スキル標準」は、DXを推進する人材について、5つの人材類型および15のロール(役割)と、それらの人材に必要となる49個のスキル項目で構成されます。主な特徴は以下の通りです。(図1)
 
図1 「DX推進スキル標準」の全体図

1)DXを推進する主な人材として5つの人材類型とロールを定義
 DX推進の中心的役割を果たす人材類型を、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5つに定義しました(図2)。これらの人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要となります。また、社内外を問わず、適切な人材を積極的に探索することも重要となります。
 

図2:5つの人材類型

 さらに、5つの人材類型それぞれに対し、業務やスキルをもとに「ロール」を定義し、詳細に区分しています。例えば、ソフトウェアエンジニアは「フロントエンドエンジニア」、「バックエンドエンジニア」、「クラウドエンジニア/SRE」、「フィジカルコンピューティングエンジニア」の4つのロールに分かれています。業務の違いによって詳細に区分することで、企業・組織は自社に必要となる人材を明確に把握できるようになります。

2)15のロールそれぞれに必要なスキルを具体的に提示
 区分した15のロールごとに、DXの推進において担う責任、主な業務、そして必要なスキルとして、「共通スキルリスト」で策定した49項目に対する重要度を4段階で示しています。例えば「デザイナー」の「UX/UIデザイナー」ロールでは、「顧客・ユーザー理解」や「価値発見・定義」というスキルで高い実践力と専門性が必要とされる一方、「機械学習・深層学習」や「セキュリティマネジメント」については位置づけや関連性の理解ができていればよいことが分かります。(図3)
 これにより、組織・企業にとっては、自社のDXに必要なスキルがより明確となり、組織の人材育成、採用やリスキリングの促進に役立てることができます。さらに個人が学習する際には、組織から求められるスキルを認識するための指針となります。
 
図3:UX/UIデザイナーのロールと求められるスキル

3)「共通スキルリスト」を一覧化し、49個のスキル項目について学習項目例を提示
 DXを推進する全人材類型に共通するスキル項目を、「共通スキルリスト」として一覧化しました(図4)。このリストは、スキルを「ビジネス変革」「データ活用」「テクノロジー」「セキュリティ」「パーソナルスキル」の5カテゴリーに整理し、計49のスキル項目を定義したうえで、そのスキルを身につけるための学習項目例を提示したものです。
 一覧化することで、DXに必要なスキルの全体像を俯瞰して把握でき、スキルを共通にすることで、他類型の人材との連携がしやすくなります。
 
図4: 共通スキルリストの全体図

 例えば、「ビジネス変革」カテゴリーのサブカテゴリーである「戦略・マネジメント・システム」のスキル項目には「プロダクトマネジメント」があります(図5)。その内容は「プロダクト(製品・サービス)のバリュープロポジションを定義し、価値提供によって収益を上げる方法、プロダクトそのもの、関連するプロセスを構想し実現するスキル」です。さらにそのスキルを身に付けるための学習項目例として「プロダクト観点でのビジネス・UX・テクノロジーの統合」などを例示しています。このように「学習項目例」を明示することで、人材育成のための教育・研修等と関連付けることが容易になります。
 
図5: 共通スキルリストの項目例

 経済産業省とIPAは今後、デジタルスキルに関するポータルサイト「マナビDX」(https://manabi-dx.ipa.go.jp/)上で研修事業者が提供する学習コンテンツと「DX推進スキル標準」を紐づけて可視化していく予定です。これにより、利用者は自身が目指すロールに必要な知識やスキルが効果的に学べるコンテンツを選択、学習しやすくなります。より実践的な学びの場を創出することで、リスキリングが促進されることを期待しています。

 「デジタルスキル標準」「DXリテラシー標準」「DX推進スキル標準」は、IPAのウェブサイトからダウンロード可能です。
URL:https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/

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