「美しさって何?――自分らしさと美容医療」美容医療をとりまくD&Iについて専門医、社会学者に聞く

アラガン・ジャパン株式会社

あらゆる面で多様性が求められている時代ですが、LOVE MYSELF、自分を愛そうというメッセージが近年より強まり、美のあり方さえ多様化しています。ボディポジティブやグレイヘアなど、ありのままの自分で生きたいと考える人もいれば、美容医療によってコンプレックスを解消して自信をつけたいと考える人もいます。
そこで「美」と「美容医療」をテーマに、『「美しさって何?——自分らしさと美容医療」~美および美容医療のダイバーシティ&インクルージョン~』について日本の美容医療のパイオニア 自由が丘クリニック 理事長 古山登隆先生、関西大学 総合情報学部 教授で「美容整形というコミュニケーション: 社会規範と自己満足を超えて」などを著書に持つ谷本奈穂先生、WWDJAPAN編集長 村上要さんに医療、社会学、メディアと異なる視点で、誰もが「なりたい姿」になるための方法を自由に模索し、自由に自分らしい美を楽しむためのヒントを一緒に考えました。
 
        
 
■美の多様性の広がり
ファッションやビューティ業界で「多様性」が声高に叫ばれるようになり、欧米での意識の高まりが、日本にも大きく影響している印象です。2015年にフランスで痩せすぎたモデルをファッションショーに起用することなどを禁止する法案が提出され、「細い方が美しい」という画一的な美の考え方が浸透することを危惧したほか、そんな一方的な価値観を若いモデルに強制的に課してきたことへの反省もありました。日本でもステレオタイプの美しさに縛られず「美しさの基準は自分で決める」というメッセージを発信するコスメブランドや企業が増えています。

古山先生:医療現場においても、美容医療を行う方は増えているという実感があります。医療機器による治療やボツリヌス注射やヒアルロン酸注入といった美容医療が一般にも普及し、美容医療に対する意識のハードルを下げたように感じます。
また、近年では、若年層は写真加工などで顔のパーツを理想の形に変えて、メタバースなどの仮想空間で理想の自分を創造し、自己満足・高揚感を満たしています。その影響もあって美容医療はリアルの世界でも同様の自己満足・高揚感を得るための行為に変化してきていると感じています。

村上編集長:「WWDJAPAN」でも昨年秋、「美容医療市場」を特集しました。その中では、10年前は「芸能人のあの人のような目に」といった要望が多かったが、現在は今の自分を少しだけ“盛った” SNSの加工アプリのように、自分の好きな部分を引き出しブラッシュアップした、“より理想的な自分”を求める機運が高まっていることを伝えました。

古山先生:「全く違う誰か」になろうとするのではなく、「理想の自分」を目指す意識の変化は、美容医療業界において大きな変化と言えます。
これまでの日本の美容医療は、外科的治療においても非外科的治療においても「欧米の美」をある意味模倣してきました。しかし実際には、欧米人に適した治療が、私たち日本人も含めた東アジア人の治療に必ずしもマッチしない場合があります。近年の美容医療業界は、「日本人独自の美しさ、Japan Beauty」を目指そうという考え方にシフトし、素材の良さを引き出す、という考え方が美容医療でも取り入れられています。

■根強い美容医療への偏見
村上編集長:美の多様性をうたうなら、「美容医療を受ける」「理想とする美しさを手に入れる」という選択もまた受け入れられるべきだと思うのですが、どこか「美の多様性=自分らしさ、ありのままの自分を愛すること」という意識が強く、美容医療の受容まで追いついていない人がいるのも現実です。
また、アンチエイジングには興味があるけれど、一方で「美魔女はイタイ」と批判されたりもする。自然体を追求する人、美しさを追求する人、どちらも受け入れられる世の中が理想ですが、私たちは反対側の人たちを批判しがちです。

谷本先生:女性が「若く美しくなければならない」といった「美の呪縛」つまり「呪い」を内面化しているとして、「美の呪縛」を批判することは正しいと思います。一方で、「ありのままが好き」なら良いのですが、「ありのままでなければならない」として美魔女批判をするなら、それは「ありのままの呪縛」として結局同じことだと思います。重要なのは、「若く美しく」でも「ありのまま」でもなく、「〜でなければならない」「〜の方が正しい」という規範から逃れることだと思います。

古山先生:若く美しくなりたいということを否定するのは、ダイバーシティの面で悲しいことと感じています。安全にナチュラルで、若々しくいられる術があれば、それは選択肢の一つとして活用してもよいと思います。「自分なんて」とか「年相応で」という考えは、すでにあきらめてしまっている状態ともいえます。その状態から、気にしていたしわが目立たなくなり、気持ちが晴れやかになるという純粋な喜びを皆さんに感じてもらえることが、美容医療だと思います。

■美容医療をカミングアウトしにくい現状、「美容医療は隠れて行うもの」という考えの背景には何が影響している? 
谷本先生:2019年に16歳から65歳の男女4,126人に行なった調査では、美容整形をしたくない人の理由として「顔や体を人工的に変えてはいけないから」と答えた人が24.1%いました。現在でも少なからず、人工的に顔や体を変えることへの抵抗感が残っていることも一つの原因だと思います。
とはいえ同じ調査で、美容整形をしたいと思ったことがある割合は、男性14.7%、女性では33.7%にのぼりましたし、女性についていえば、実際にメスを使う手術を3.8%、メスを使わない手術は8.4%が経験しています。30代女性に至っては10%を超えていますので、今後、美容医療を受ける人数が増えるほど隠す傾向は減っていくと思います。

古山先生:今、美容医療は「メスを使わずにここまでできる」という時代になっています。その代表格のボツリヌス注入治療やヒアルロン酸注入治療は、注入した製剤が自然と体内に吸収されることで、数か月から2年ほどかけて元の状態に戻ります。注入治療は誰にでも挑戦しやすく、施術のハードルも低くなってきているのではないかと思います。

村上編集長:美容医療を受けるハードルとして、施術の費用や痛さによる懸念もありますが、調査結果※では「正確な情報がわからない」といった情報不足から踏み出せないという回答も30%以上ありました。美容医療全体における課題かと思います。
        

 
古山先生:美容医療について、皮膚/形成分野は医学部で学び、医師としての知識はベースにあるものの、美容という側面では医学部では学びの場がほとんどないこともひとつの要因となり、美容医療がもたらす、見た目だけではなく患者さんの内面にまで貢献できるウェルビーイングについて、理解が進んでいません。
次に患者さん側から見ると、正しい情報を十分に得られない現状があると思います。SNSやインターネットで多くの情報が発信されていますが、中には誤った情報やエビデンスに基づかない誤解を招く内容も散見され、「どれが正しいか分からない」という状況に陥ってしまいます。一例として、医療品や医療機器には、製造過程や流通過程で、厚生労働省が承認しているものとそうでないものがあり、承認されているものは厚生労働省の基準で効果、安全性が確認されていることになります。つまり、自分自身に使用される製品について正しく理解することが非常に大事で、医療機関(クリニックやドクター)に聞くことで正しい情報を得るべきです。

■美容医療がもたらす効果
村上編集長:美容医療によって自己肯定感が高まり、心理的にポジティブな影響があるという話もありますよね。調査※によると、美容医療を受けるメリットについて、美容医療経験者と非経験者では結果に違いが出たそうです。具体的には、「自分を好きになれる」「自信や自尊心が高まる」「前向きな気分になる」「施術前よりも、生活や人生が豊かになる」といった全ての項目において、経験者の方が10ポイント以上高く、美容医療によるウェルビーイングの向上を示唆する結果になったそうです。

谷本先生:マクロな視点で見た場合、やはり美容医療が社会の「美の呪縛」を推し進めるリスクがあります。とはいえ、ミクロな視点、つまり施術を受ける個人の心に寄り添って見た場合、受けた方で満足していた方も多いと思います。個人の心が満たされることで、化粧や洋服のセレクトが変わり、おしゃれをより楽しめるようになったという話も聞きました。

古山先生:人間は、親からもらった「顔立ち」と、自分で作る「顔つき」があり、一般的には「顔立ち」が変わると「顔つき」が変わりますが、最近は、「医療は顔つきも変えられる」と考え始めています。つまり幸せそうな顔を作るから幸せになるという側面があるのではないかと考えています。
人はみな、いい人生を歩みたいと思っています。いい人生とは自分なりの人生のことです。そのお手伝いをするのが美容医療の分野であり、今後も貢献したいと考えています。

日本は海外に比べて美容医療に関するメディアの情報が少ないので、正しい知識を広めると同時に、受ける側にも正しい知識を得ようとする姿勢が求められますね。それによって、美のダイバーシティ&インクルージョンへの正しい理解も進んでいくのではないでしょうか。

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<古山先生プロフィール>
医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑  古山 登隆(ふるやま のぶたか)
医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

<谷本先生プロフィール>
関西大学 総合情報学部 教授 谷本 奈穂(たにもと なほ)
関西大学総合情報学部教授。大阪大学人間科学部卒業、同大学院博士課程修了、博士(人間科学)。専門は文化社会学。美容整形の調査を中心に、雑誌の恋愛記事やマンガの分析なども行う。主な単著は「美容整形というコミュニケーション」(花伝社2018)、「美容整形と化粧の社会学」(新曜社2008)、「恋愛の社会学」(青弓社2008)。共編著に「身体化するメディア/メディア化する身体」、(風塵社2018)「博覧の世紀」(梓出版社2009)、「メディア文化を社会学する」(世界思想社2009)などがある。

<村上編集長プロフィール>
村上 要(むらかみ かなめ) 「WWDJAPAN」編集長
1977年7月7日生まれ。東北大学教育学部卒業後、地元の静岡新聞社で社会部記者を務める。退職後、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)でファッション・ジャーナリズムを含むファッション・コミュニケーションを専攻。2度目の大学卒業後、現地でのファッション誌アシスタントを経て帰国。タイアップ制作、「WWDビューティ」デスク、「WWDモバイル」デスク、「ファッションニュース」編集長などを経て、2021年4月から現職

●出典
※アラガン・ジャパン社による美容医療のダイバーシティ&インクルージョンに関する調査(2022)
https://digitalpr.jp/r/60827

●第2部アーカイブはこちら
https://youtu.be/2ap-XGw_6IA 

アラガン・ジャパン株式会社について
アラガン・ジャパン株式会社は、アッヴィグループのアラガン・エステティックスとして、先進の美容医療を牽引する製品およびブランドを開発・製造し、販売しています。私たちの美容医療領域は、ボツリヌス治療やヒアルロン酸注入治療、脂肪冷却による部分痩せ治療、乳房再建関連製品等を中心に多岐に渡っています。
私たちは、イノベーション、教育、優れたサービスを一貫して、顧客の皆様のニーズに沿って提供することを目指しています。

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