PwC Japanグループ、「企業の地政学リスク対応実態調査2022」の結果を発表
PwC Japanグループ
「企業の地政学リスク対応実態調査2022」の結果を発表
海外事業を展開する企業の8割が過去3年間で地政学リスクが上昇したと認識
- 「最も懸念される地政学リスク」はウクライナ有事の影響で上位が変動
- 「サイバー脅威」が前年から倍増し首位に
- 「エネルギー需給への懸念」が前年圏外からTOP3にランクイン
- 直近1年で地政学リスクに起因する損失を被った企業は約3割、過去5年では半数超
- 一方で、企業における地政学リスクへの具体的対応が進んでいる
- 「サプライチェーンと調達戦略の見直し」は50%(前年比+12pt)、「別地域・国への生産移管」は33%(前年比+12pt)
- ウクライナ有事を受けて、直接的な顕在影響への対応にとどまらず、将来の有事リスクへの備えに取り組む企業も出ている実態が明らかに
PwC Japanグループ(グループ代表: 木村 浩一郎)は、今年2月からのロシアによるウクライナ侵攻を経て激変する地政学リスク・経済安全保障環境への意識および企業対応実態を把握するため、海外で事業を展開する売上規模年商100億円以上の企業(製造業からサービス業まで産業全般を網羅)に勤務している管理職309名を対象にオンライン調査を実施しました。
「PwC Japan 企業の地政学リスク対応実態調査」は、2019年3月、2021年8月に続き今回が3回目の実施となります。
海外事業を展開する企業の8割が過去3年間で地政学リスクが上昇したと認識
これまでの経年変化を見ると、「過去3年間で地政学リスクレベルが高まっている」と答えた割合は増加傾向にあり、「著しく高まっている」と「やや高まっている」を合わせた合計が76%に上りました。特に、「著しく高まっている」と答えた割合は前回の調査結果より10ポイント以上増加し、直近のさまざまな地政学リスクによって企業の危機感が高まっている実態が反映されています。これと並行して、地政学リスクマネジメントの重要性の認識も年々増加しており、地政学リスクが企業経営に与える影響についての認知が高まっています。
<図表1>
「最も懸念される地政学リスク」はウクライナ有事の影響で上位が変動
企業が懸念する地政学リスクについては、「ロシア・中国・北朝鮮などのサイバーアタック/サイバーテロ(36%)」が前年比倍増し、順位を5つ上げてトップとなりました。その他にも、「エネルギー供給構造の変化に伴う需給の不安定性(27%)」や「グローバルサプライチェーンの寸断(23%)」など、ウクライナ有事の影響と見られる項目が上位に入りました。
一方で、前回3位に入った「サステナビリティ/気候変動問題」は、順位を下げながらもTOP10に留まっており、引き続き企業経営へのリスクと対応の必要性が認識されています。
<図表3>
直近1年で地政学リスクに起因する損失を被った企業は約3割、過去5年では半数超
実際に地政学リスクが原因で被った損失については、過去5年間で損失があったと答えた企業は海外事業を展開する回答企業全体の54%に上りました。前回比では、直近1年以内に損失を受けた企業の
割合が31%で前回の1.5倍に伸び、例年よりさらに地政学リスクの影響が顕在化した1年だったことが読み取れます。
<図表4>
こうした地政学リスクに対する対応状況をみると、どう対応すべきか手をこまねいている企業の比率が半減しています。「(サプライチェーンや調達)戦略の調整」だけでなく、実際の事業運営の変更を伴う「生産シフト」、「事業撤退・売却」、「設備投資の延期」などの対策に取り組む企業の割合が軒並み増加し、企業による対応が着実に進展している実態が判明しました。
<図表5>
ウクライナ有事を受けて、企業は直接的な影響への個別対応に加え、将来の潜在的な有事リスクへの備えに着手
具体的に、ウクライナ有事を受けた直接的な対応としては、現地事業の「営業停止(19%)」「調達停止・調達先変更(16%)」「取引停止(15%)」などの対応をすでに実施したという状況が分かりました。
本社においても、「原材料調達影響分析(24%)」「BCP対応(現地従業員安全確保など)(22%)」「為替影響分析(16%)」「制裁影響分析(14%)」「エネルギー供給混乱影響分析(12%)」などの直接的な影響への対応が行われています。
同時に、「有事シナリオの検討(20%)」「グローバルサプライチェーン改変(17%)」
「チョークポイント(部材・原材料、取引先、物流)の特定(14%)」「台湾有事の可能性分析(8%)」などの、より広範で潜在的な有事リスクに対する備えに着手する企業が一定数出現している実態も判明しました。
<図表6>
本調査では、この他に、2022年5月に成立した経済安全保障法に関する質問、台湾有事に関する質問や中国事業に関するリスク認識や対応状況に関する質問なども含まれており、今秋にはこれらの結果を踏まえたより詳細なレポートを発刊予定です。
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