データ通信量を制御することで途切れにくいWeb会議を実現 ~体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)を確立~

日本電信電話株式会社

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、サービス利用者や提供者がサービスに求める要件(インテント)がサービスごとに異なることに注目し、体感品質・データ通信量最適化技術(以下、Mintent®)を確立しました。
 そこで、NTTとエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:黒岩 真人、以下「NTTコムウェア」)は、MintentをWeb会議サービスに組み込み、Web会議の映像や音声の体感品質を保ちながらデータ通信量を最大63%低減できることを共同実験で確認しました。
 NTTコムウェアは今回の共同実験で得られた結果を踏まえ、Mintentを資料共有型のWeb会議サービスletaria®(レタリア、https://www.nttcom.co.jp/dscb/letaria/ )に組み込み、Mintentを活用した初めての商用サービスとして2022年8月3日に提供を開始しました。
  
1.背景
 NTTはこれまでサービス利用者や提供者がサービスに求める要件がサービスごとに異なることに注目し、Mintent*1(インテントAIメディエータ、https://www.rd.ntt/research/JN202207_18759.html)の研究開発をしてきました。
 例えば、Web会議サービス利用者は途切れにくいWeb会議を利用したいという要件、映像配信のサービス提供者はサービス利用者の視聴時間を長くしたいという要件、コネクテッドカーのサービス提供者は車内外の状況から異常を検知したいという要件があります。
 このように、利用者ごとに異なる要件に即したサービス提供の実現が重要になります。しかしながら、要求を満たすために、ネットワーク、クラウドサーバ、アプリケーションのリソースを無制限に用意し、サービスを提供することは社会的課題でもある電力消費量の増加に繋がり、環境面などを考慮しても適切ではありません。
 そのため、サービス利用者や提供者の要件をネットワーク、クラウドサーバ、アプリケーションが解釈可能な数値情報に変換する技術を確立し、そこから得た情報に基づきICTリソースを制御する技術を確立することが重要になります。

 このような検討を進める中、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大を受けて世界的にリモートワークが普及し、Web会議サービスの需要が高まりました。しかしながら、従来のWeb会議サービスは、サービス利用者の端末が高いスループットの高速回線に接続した場合などには、映像品質を高めるために、過剰なデータ通信量で映像を送信します。そのため、既存回線に接続した場合、回線の輻輳などにより、スループットが大きく変動すると、急に映像品質の低い小さい映像データでの送信に対応することができず、Web会議が途切れてしまうなどの問題が発生します。
 そこで、NTTは、Web会議サービス利用者の要件である途切れにくいWeb会議を実現するため、サービス利用者がWeb会議を利用した際の体感品質に基づき、サービス利用者のデータ通信量を制御する体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)をMintent(インテントAIメディエータ)の一技術として確立を進めてきました。体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)では、各サービス利用者の数十秒程度将来の体感品質が適正品質を満たすための送信映像データ通信量を、Web会議サーバから得られるビットレートなどの映像情報から計算し、適正品質を維持可能なデータ通信量を利用端末に指示します(図1)。これにより、適正品質を満たしつつ、データ通信量を低減することができ、途切れにくいWeb会議を実現しました。
 
図1 体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)

2.共同実験内容と結果
 NTTとNTTコムウェアは2021年3月より、サービス利用者の要件である「途切れにくいWeb会議」を実現するため、体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)を用いた共同実験を進め、過剰なデータ通信量を流さないよう制御することで課題が解決できないか、以下の役割分担で共同実験を実施しました。
  • NTT:サービス利用者の体感品質を予測し、適正品質に近づけながら、データ通信量を低減することが可能な技術Mintentを提供
  • NTTコムウェア:資料共有型のWeb会議サービスletariaへのMintentの組み込み、実験環境の提供

図2 Mintentと従来技術の体感品質の比較
 
図3 Mintentと従来技術のデータ通信量の比較

 Mintentを組み込んだletariaを利用するパソコン2台、スマートフォン1台でWeb会議を実施し、その際の体感品質とデータ通信量を計測しました。図2は端末ごとの体感品質(5段階品質尺度(非常に良い、良い、ふつう、悪い、非常に悪い)に基づいた体感品質)の3台の平均値、図3は端末ごとのデータ通信量の3台の平均値を示しています。なお、5段階品質尺度で評価した場合、体感品質3.5はサービスを「ふつう以上」と評価するサービス利用者が90%以上になることが知られている(https://www.rd.ntt/ns/qos/technology/visual/01_5_1.html)ため、これを適正品質とし、結果を示しています。
 従来技術では、サービス利用者の端末が高速な通信回線に接続すると、適正品質以上の過剰な体感品質で、かつデータ通信量も多い結果が得られたのに対し、Mintentでは、サービス利用者が、適正品質でサービスを体験しながら、従来技術と比較してデータ通信量を最大で63%低減できることを確認しました(図3)。Mintentをletariaに組み込むことで、高いスループットの通信回線が輻輳した場合でも過剰なデータ通信量で送信することなく、適正品質で途切れにくいWeb会議サービスの利用が可能になります。

3.今後の予定
 NTTは体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)がデータ通信量を低減することで、利用端末の電力消費量の低減にも役立つことが期待されるため、その確認を進める予定です。また、NTTコムウェアは2022年度中に、Mintent(インテントAIメディエータ)の後続技術として、NTTが確立済みのクラウドサーバ制御技術であるサーバリソース最適化技術(Mintent)もletariaに組み込み、システムの安定性とスケーラビリティを最適なリソース量で実現することを計画しています。
 今後、NTTはWeb会議サービスだけでなく、映像配信サービス視聴時の視聴時間を長くしたいといった要件やコネクテッドカー制御時の車内外の状況から異常を検知したいといった要件への対応など、Mintent(インテントAIメディエータ)技術適用に向けた検討を進めます。

※「Mintent」は日本電信電話(株)の登録商標です。
※「letaria」はNTTコムウェア(株)の登録商標です。

<用語解説>
*1:Mintent:インテントAIメディエータ、Mintentは、MediationのMとIntentを組み合わせた造語。Mintentはサービス利用者や提供者の要件を満たすためのICTリソース量を導出し、そのリソース量に基づき、ネットワーク、クラウドサーバ、アプリケーションを協調制御します。なお、Mintentはサービス利用者や提供者がサービスに求める要件に基づいたネットワーク制御技術、クラウドサーバ制御技術、アプリケーション制御技術として単独の技術としても利用可能です。本文中のMintentの用語については、Mintent(インテントAIメディエータ)はサービスに依存しない技術群を、体感品質・データ通信量最適化技術(Mintent)やMintentはアプリケーション制御技術を、サーバリソース最適化技術(Mintent)はクラウドサーバ制御技術を意味します。
 

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