累計応募総数10万人を突破 マックス「心のホッチキス・ストーリー」 第12回の入賞作品を決定

マックス株式会社

~大賞は、塾帰りの遅い時間の電車でいつも乗り合わせる人たちとのふれあいを描いた作品に~

 マックス株式会社は、第12回 マックス「心のホッチキス・ストーリー」と題し、“あなたが今、心にホッチキスしたいこと”をテーマに、ショートストーリーを募集しました。
 2021年8月2日(月)から2021年9月30日(木)までの募集期間で、全国から11,720件の応募がありました。第1回からの累計応募総数はこの度10万人を突破し、106,966件となりました。
 厳正な選考の結果、受賞作品を以下の通り決定しましたのでご報告いたします。
 なお、受賞作品は、当社WEBサイト上(https://www.max-ltd.co.jp/about/cocoro_story/)でも公開しています。
 
©Jin KITAMURA

 
【応募作品の傾向】
 学校ではオンライン授業や分散登校から対面授業への移行を模索し、仕事ではリモートワークの定着などによる働き方の多様化が進む現在、社会とのつながりや他者との交流について考える機会が増えた一年となりました。
 応募作品には、在宅時間が増えたことで気づいた周囲の人々とのつながりや絆を改めて考えながら、かけがえのない思い出や大切にしたい人への感謝を表現する内容が多く寄せられました。

 「マックス・心のホッチキス大賞」には、塾帰りの遅い時間の電車で、いつも乗り合わせる人たちから寝過ごさないよう声をかけられたことがきっかけで交流が生まれ、相談した際にかけてもらった言葉が今でも苦しい時の励みになっていることを綴った作品を選定しました。
 「マックス・U-18大賞」には、夏祭りの中止で落ち込んでいた作者が、従姉妹がかけてくれた一言から思い出に残る楽しい浴衣での女子会を自宅で開催できた作品など3点が、「マックス賞」には、集団就職で旅立つ前に祖母が教えてくれた継ぎ当てとボタン付けがその後の社会人生活で役立ち、祖母の微笑みと共に今も心に残っていることを綴った作品など5点が入賞しました。

 引き続き、マックス「心のホッチキス・ストーリー」を通じて、みなさまが大切な瞬間を振り返り、日常生活の中にある小さな幸せに気付く手助けになれれば幸いです。


【入賞作品】
マックス・心のホッチキス大賞
<大阪府> しらす さん (14歳)

 「起きてください。終点ですよ。」これは、僕が中学受験で塾に通っていた時、毎週聞いていた言葉だ。僕が通っていた塾は家から電車で行かないとダメなほど遠い。しかも、塾は8時くらいまであるので、家に帰るのが9時くらいになる。だから塾で疲れている僕は必ず車内で寝てしまう。幸い最寄りの駅が終点だったので寝過ごすことはなかった。それに、終点に着くと決まって誰かが起こしてくれた。そう、「起きてください。終点ですよ。」と言ってだ。そのうち、僕を起こしてくれる人は、だいたい同じ人になった。30代くらいのサラリーマンと80代くらいのおばあさんだ。しだいに、僕はその2人と仲良くなり、車内で寝ることよりも、その人たちと話をしたりすることが多くなった。塾の成績が伸び悩んでいたときに、その2人に相談することもあった。サラリーマンの人からは「僕が君くらいのときは、毎日外で遊んでいて勉強なんてさっぱりだったから、その歳で勉強を頑張っているのはすごいことやで。」、おばあさんからは「若い頃から何かを必死ですることはとても良いこと。たとえそれが苦しくて逃げ出したくて自分自身が潰れそうでも、それを乗り越えた時に人は成長するもんやから、諦めずに頑張りなさい。」という言葉をかけられた。今でも、自分に自信がないときや苦しくて逃げ出したいときにこの言葉を思い出している。このように、たった一言で他人を助けたり、助けられたりする。だから、僕はたった一言から始まる繋がりを大切にしたい。そして、僕は終点に着いたときに、寝ている人にこの言葉をかけたくなる。「起きてください。終点ですよ。」

マックス・U-18大賞 高校生の部
<東京都> キリコ さん (16歳)

 「浴衣を着せてあげるから、奥の棚から好きなの持ってきなよ。」今年は夏祭りが開催されないと聞いて落ち込んでいた私に、着付けを習っている大学生の従姉妹、たまちゃんが声を掛けてくれた。浴衣と帯を選び「もっとお腹引っ込めてよ!」「もう限界~。」ワイワイ言いながら着せてもらうと、隣の部屋でゲームをしていたミウたちも「私にも着せて!」と各々好きな柄の浴衣を持って来た。少し殺風景だった和室はあっという間に色とりどりの浴衣で埋め尽くされ、すっかり機嫌の良くなった私たちはタブレットで東京音頭を流し、家中を4人で踊りまわった。「何やってんだい!」騒いでいる私たちに気づいて顔を出した祖母に「おばあちゃんも着るよ~。」と、半ば強引に浴衣を着せ終えた頃にはみんな大笑い。12歳から85歳。年齢不問の女子会はお祭り以上に盛り上がった。一言で場の空気を変えてくれたたまちゃんは、きっと魔法使いだ。
 

マックス・U-18大賞 中学生の部
<愛知県> まよ~!! さん (13歳)

 あきらめない気持ちが大切っていうことくらいは分かっている。もちろん。
 でも、マラソンはきらい。スッスッハッハスッスッハッハ。足が痛くなるし、息も苦しい。タッタッタ。後から追いかけてくる苦しい音がする。わき腹が痛い。前を走っていた友達の背中は遠くなる。あきらめるってそんなにだめ?もういいよね。歩いちゃおうかな。そう思ったとき、声が聞こえた。「まよー、いけるよ!がんばれ!」お母さんだ。手を振ってる。小学校最後のマラソン大会。「応援に行くから最後にかっこいいとこ見せてね。」と言っていたお母さん。本当に見に来てくれたんだ。背中を押されるってこういうことか。体がふっと軽くなるんだね。「がんばれ」って魔法の言葉だ。
 結果は九位。これまでで最高。先生からわたされた順位の紙に、がんばった気持ちをホッチキスでパチン。お母さんの笑顔と涙もパチン、パチン。ね、あきらめなかったよ。
 

マックス・U-18大賞 小学生以下の部
<東京都> クララ さん (8歳)

 わたしのママはお花が大好きです。パパがママのたん生日やきねん日にお花をわたすので、わたしも母の日にわたそうと思っていました。わたしは小学校まででん車つう学しているので、えきで見る赤とピンクのカーネーションがいつも気になっていました。キラキラし、とてもきれいだったからです。お休みの日にパパと一しょに買いにいきました。お花のねだんが思っていたより高くてわたしのおこづかいでは足りませんでした。パパにお金をかしてもらいました。買おうと思っていた赤とピンクのカーネーションが買えてとてもうれしかったです。帰りにママの好きなマカロンも買いました。ピンク、ちゃ色、みどり、オレンジ、黄色、水色のマカロンがあってどれもおいしそうでした。家に帰ってから、ママにお手紙を書きました。ママはいつもあさ早くおきて、わたしのおべんとうを作ってくれます。ママにかんしゃの気もちがつたわるように書きました。ママがお家に帰ってきました。お花、お手紙、マカロンをわたすとママはとってもよろこんでくれました。お手紙とお花をキッチンにかざってくれました。家ぞくみんなでマカロンとケーキをたべました。お花を買った時にもらったひまわりのたねを一しょにうえました。まい日水やりをしてきれいにさいたらママにあげようと思いました。パパと一しょにママのよろこぶことを考えて、ママがたくさんよろこんでくれて、おいしいマカロンをたべられて楽しい1日になりました。
 


マックス賞
・大阪府 池ノ上 龍平 さん    (80歳)
・京都府 ST さん                (13歳)
・福岡県 カスミザクラ さん    (64歳)
・佐賀県 わったー さん        (16歳)
・沖縄県 寝不足の根っこ さん (17歳)

<大阪府> 池ノ上 龍平 さん (80歳)

 昭和三十二年三月、まだまだ田舎の春は寒い。あれは、集団就職で大阪へ旅立つ前だった。
 祖母(ばあ)ちゃんはコタツに裁縫箱を持って来て「寮に入ったら仕事着が破れても、ボタンが落ちても誰も縫(ぬ)うちゃくれんけんな。継ぎ当てぐらい自分でせにゃおえんじゃろ」
 もう皺を刻むところの無いほどの顔で、継ぎ当てとボタン付けの手ほどきを受けた。
 「おうおう、まあこれで何とかなるじゃろが」
 イガグリ頭の十五歳。やっと悪ガキを卒業したころである。六十五年前、祖母ちゃんが喜寿の歳だったと記憶する。入寮してから先輩の継ぎ当てやボタン付けで重宝がられた。祖母ちゃんからの手ほどきの賜物(たまもの)であった。
 朝餉支度(あさげしたく)の煙が茅葺(かやぶき)に立ち、東山(とうざん)に上(のぼ)るお天道様(てんとうさま)に向かい手を合わす。その日の家族の無事を祈る祖母ちゃんの姿は今も鮮明にある。
 朝の一時(いっとき)、皺だらけの顔には、尚も深い祖母ちゃんの円い皺が微笑んでいた。孫の自分が今、既に喜寿を超え傘寿を迎え、心にホッチキスしている想い出である。

<京都府> ST さん (13歳)

 「白いカーテンみたいだね。」と僕は空に呟いた。2階まで枝葉を伸ばしたナニワバラが白い花をたくさん咲かせている。僕の大好きなおばあちゃんのお気に入りの花だ。
5年前、おばあちゃんは庭にバラを植えて欲しいと僕に頼んだ。病気を患い、日課だった花壇のお手入れも出来なくなって、ずっと家のベッドで過ごしている。僕は庭と鉢に苗を1本ずつ植えた。翌年の春、庭に数十個、鉢に3つ花をつけた。3つだけなんて、がっかりしないかと不安な気持ちで、鉢をおばあちゃんの枕元に運ぶ。すると、おばあちゃんは少しの間黙ってバラを眺めた後、「ありがとう。思い出の花なのよ。」と目を細めて優しく僕に微笑んだ。
目の前に広がる白いカーテンに、今は亡きおばあちゃんの笑顔が重なって見える。おばあちゃんの思い出の花は、僕にとっても大切な思い出の花となった。「ずっと、この思い出を咲かせるよ、おばあちゃん。」 
 

<福岡県> カスミザクラ  さん (64歳)

 長男が中学一年の時、弟が生まれた。仕事が忙しい私たち夫婦と長男の、三人四脚での子育てが始まった。長男は、おんぶに抱っこ、おむつ替えは朝飯前。高校生になると、制服姿で保育園のお迎えをこなした。保育園のお別れ遠足の日、彼は予備校の授業を抜け出して弟に付き添った。パパとの見分けがつかない周りの子ども達から、超若いパパは大人気。肩車をせがまれ、大活躍だったとか。
 弟の高校の入学式の日、彼は営業の合間にやって来て親と一緒に参列した。大学の合格発表の日、彼は仕事帰りに合格番号の載った掲示板を、わざわざ写真に収めに行った。
 そして今年、新型コロナの影響で弟が就職活動に苦戦をしていると、彼は遠くからメールや電話で、励ましとアドバイスを送り続けた。その様子はお嫁さんが焼き餅を焼くほど。無事に就職が決まった時の喜びようは、親を超えていたかもしれない。弟はもう大丈夫だよ。あなたのおかげで大きくなりました。
 

<佐賀県> わったー さん (16歳)
 これは僕の家の夕ご飯の時の話である。いつものように夕ご飯の時は家族そろって食べていて、そしてこの日も、今日あったくだらない話や面白い話をしてみんなで笑っているのである。この時間の中でも特ににぎやかになるのは妹が話しているときである。妹の何が面白いのかというと、いつも単語が一文字違いなのだ。この日は童謡『どんぐりころころ』の話をしていた。妹は「どんぐりころころどんぐりこ」と歌うのだ。そこですかさず母が「どんぶりこ」と指摘する。そこで一笑い。そしてここから、祖母が「どんぐりころころどんぐりこ、だよね」 と歌い始めたのだ。間違って教えていたのは祖母だったのである。それで祖母は母から指摘され、ここでまた一笑い、さっきよりも盛り上がる。こんな平和な会話が夕ご飯のたびに繰り広げられる。考えてみればこれが僕の癒しになってい
るのかも知れない。こんな何気ない日々を大切にしたいと心からそう思う。
 

<沖縄県> 寝不足の根っこ さん (17歳)
 「母ちゃんはなぁ、とっても優しいんだよ。こんなに優しくて子ども思いの母親はなかなかいないと思うよ?分かってる~?」うちの父ちゃんは最近酔っぱらって帰ってくると必ず母ちゃんをほめまくる。父ちゃんが帰るころには母ちゃんはもう寝ているため、いつもその話を聞くのは私だ。どこがすごい、どういうところが優しいというのを、寝落ちするまでくり返し話し続けるのだ。そして最後には必ず「だからもっと大切にしないとだめだよ。いつも感謝を忘れないですごさないと。母ちゃんはお前達が好きなことができるよう、いつもサポートしてくれているんだから。」と言ってくる。分かっている。母ちゃんがどれだけ大切にしてくれているか。けれどあまり感謝を態度で表すことができていないのだ。でも、父ちゃんの話を聞いてやはり感謝は伝えないとな、と思った。私はそう小さな目標をかかげながら、今日も酔っぱらった父ちゃんの母ちゃん自慢につきあうのだった。
 

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