コロナ禍で注目を集めている「2拠点・多拠点生活」のリアル~関心高まる一方で特有の課題も 新潟県内の2拠点・多拠点生活者インタビュー~

新潟県

 新型コロナウイルスの感染拡大が大きなきっかけとなり、2つの地域に拠点を持ち生活をする「2拠点生活」が注目を集めています。働き方が多様化し、それに合わせてライフスタイルも柔軟に対応できるようになっていることが大きな要因です。新潟県でも県内と都内で2拠点生活を実践する人が増えており、新たな居住スタイルとして広がりを見せています。実際に2拠点生活を行い、多方面でご活躍されている方の情報を下記にまとめておりますので参照の上、ご取材を検討いただけましたら幸いです。ご本人様へのインタビューも可能になりますので必要に応じてお申し付けください。

■地方移住・2拠点生活への関心の変化
 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、東京圏における地方移住の関心度※1は2019年12月に比べ、2020年12月、2021年4月~5月ともに増加しています。関心の理由は「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じた」が最も多く、「テレワークによって地方でも同様に働けると感じた」が2位にランクインしています。また2拠点生活や多拠点生活への関心については20代が最も高い結果となっており、若い世代を中心に地方移住が注目を集めています。「今後在宅勤務が続く前提となった場合、移住を検討するか」というアンケート調査※2でも20代、30代の3分の1以上の人が「検討したい」と回答しており、顕著になっています。
 

■国内ワーケーションの実施状況:昨年とほぼ変わらず 
 
「直近1年間におけるテレワークの経験有無」 ※3は全体のうち39.6%が「経験あり」と回答し、このうち実施場所がリゾートやホテルなどいわゆる「ワーケーション」を経験している人は6.6%にのぼりました。これは2020年8月の調査と同程度の水準です。コロナ禍によってリモート環境の整備が整い、テレワークは浸透したものの、ワーケーションは外出自粛や移動制限などの影響もあり、昨年から状況の変化はあまり見られない結果となっています。
 

■2拠点・多拠点生活、ワーケーションの課題・現状とこれから 
 テレワークの推進によって、今後拡大が期待される2拠点・多拠点、ワーケーションにも課題があります。それは会社に制度がないため、本人の判断で自宅以外のリゾート施設などで業務を行いながら休暇的な環境を楽しむ「隠れワーケーター」が約4割いるという現状です。多様な働き方を推進し、優秀な人材の流出を防いだり新たな人材獲得のため会社の制度を再編していく必要があります。
 最近ではコロナ禍によって大きな打撃を受けたホテル業界では、サブスクリプション型の長期滞在プランを発表し、ホテルのネットワークを活かした全国各地の拠点を活用してもらう動きも出てきています。多拠点生活のサブスクプランが20代~30代を中心に人気で、若者の「拠点を変えて働きたい」という潜在的なニーズが高いことがわかります。また「親子ワーケーション」を実施しているケースも見られます。
 親子で2拠点・多拠点、ワーケーションを行動に移す層では、子どもの教育環境をどう整えるか?という課題も浮き彫りになってきています。オンラインでの授業参加や個々の学習をケアする方法など、子どもたちの学び方も「時間と場所」を選ばないフレキシブルなライフスタイルへの期待も高まっています。

※1  内閣府 第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査
※2  BIGLOBE「ニューノーマルの働き方に関する調査」
※3  株式会社クロス・マーケティング 山梨大学生命環境学部地域社会システム学科の田中敦教授・西久保浩二教授の研究グループ 「ワーケーションに関する調査(2021年3月)」

【参考資料】

新潟県と首都圏の2拠点生活について~3名のリアルな生活を紹介~

 
2拠点生活→新潟へUターン(新潟出身)
後藤 寛勝さん(Flags Niigata 代表/新潟市在住)
新潟市出身。新潟県内の高校を卒業後、上京。
高校時代にNPO法人を立ち上げ、若者と政治をつなげる活動に従事。
大学卒業後、大手広告代理店に入社。在職中に「Flags Niigata」を立ち上げ、東京と新潟を繋ぐ様々な活動を実施。2021年5月に独立。
2020年5月にUターン後、2021年2月まで東京と新潟の2拠点での生活を送る。結婚を機に新潟市に定住。

・2拠点生活を始めたきっかけ
いつかは新潟に帰って仕事をしたい思いを抱えながら、大手広告代理店に入社。コロナ禍のタイミングで自分と同じような境遇の仲間たちを集めて、「Flags Niigata」を始動。そのことがきっかけで新潟の仕事や新潟の人たちと関わるきっかけが増え、2拠点生活をスタート。自分の地元が新潟であったことと、東京にいながら地元で事業を始めることになったのが2拠点生活を始める一番のきっかけになりました。

・Flags Niigataについて
メンバーの全員が新潟県出身で、20代のメンバーで構成。東京と新潟をつなぐコミュニティで生活のためになる情報交換をメンバー同士で行い、新潟のためになる企画やプロジェクトを定期的に実施しています。

・2拠点生活(東京-新潟)時代の生活スケジュール
午前中:東京の勤務先に出社し、日中に打ち合わせや資料作成など
夕方:新幹線で新潟に移動、その日の夜に新潟でミーティング
翌日AM:新潟滞在中は午前中にフィールドワーク
翌日PM:学生時代からお世話になっているお店にいき、日中はワークスペースなどで業務、
     その後県内のイベントに出席(夜東京に移動または翌朝移動)

東京では東京でしかできないこと、新潟では新潟でしかできないことをスケジューリングし、
東京での仕事のスキルアップと新潟でのネットワークづくりを推進しています。

・2拠点生活による生活の変化
心理的な負担が軽減されたことが一番の変化です。もともと広告会社に勤めていたこともあり、地方出張が多い職種なので、コロナ禍になってから地方の仕事が減り在宅中心になったことで気持ちが落ち込む日々が続きました。そんな中で新潟ではたくさん人に会うことができ、仕事ができたことが心の支えになりました。東京という場所だけでなく、新潟に行っても自分を受け入れてくれる人がいて、「お帰り」と言ってくれる人がたくさんいたことが心の支えにもなりました。

・今後、2拠点生活をしたい・検討している人たちに向けたメッセージやアドバイス
とくに若い方に向けたメッセージですが、自分の強みを会社の外に持っておくことが大事だと思っています。結局、会社の中だと社内の評価軸と同じようなことを考えている先輩と、同じようなことを考えている後輩の中で価値観が出来上がってしまう懸念があります。そのため、実践できる会社や職種が限られる、2拠点生活やワーケーションをスムーズに進めるためには、外部の活動として実績や成功だと思えるものをどれだけ作るかということがとても大事になってきます。実績をコツコツ積み上げながら、バランスよく進めていくと周りの理解も得やすく、2拠点生活やワーケーションもすごくスムーズにできると思っています。地元へUターンしたいと思っている人たちに対しては、自分が生まれ育った町やふるさとは誰がどう言おうと変わらない軸になる部分だと思うので、身も心も捧げていくというのは価値があることだと思います。今後進むべき道がわからなくて道に迷っている人たちの中でふるさとがある人は強い武器になるのではないでしょうか。
 
 

新潟を軸に多拠点生活(首都圏出身)
大塚 眞さん(ライター/十日町市在住)
神奈川県横浜市出身。会社経営の傍ら、農家・移住関連のインタビュー記事専門ライターとしても活動している。新潟県の他にも静岡県伊豆市や鳥取県に拠点を持ち、多拠点で生活を送る。なお現在は朝起きて5分後にリフトに乗れる環境に住まいを構える。

 
・多拠点生活を始めたきっかけ
大学生の時に東日本大震災を経験し、当時公共政策や地域づくりなどを学んでいたこともあり全国各地の地域活性化のプロジェクトに参加。そのプロジェクトで、いま拠点を置いている新潟や伊豆に出会いました。現地にいないとなかなかできないことが多いと思い、大学を休学し伊豆に家を借りたのが多拠点生活のはじまりです。その後ゲストハウスの運営やウェブ制作、編集プロダクションなどいわゆる制作関連の仕事をしていて本社を東京に移転。
新潟県十日町市とは当時から付き合いがあり、フリーマガジンの刊行を2012年から始め、2015年4月に大学を中退し、十日町市に住み始めました。

・現在の生活について
コロナ禍前は基本的な軸足は新潟に置き、週のうちの何日かは東京にいったりするという生活でした。コロナ禍後は新潟がメインになり、東京の仕事はオンラインで行いながら必要であれば行くという生活になりました。その他にも活動地域は鳥取県にもあって、そこでシェアハウスも借りているので複数の拠点を持ちながら、2ヵ月の中で1週間ぐらい滞在しながら、仕事をしています。また2015年に住民票を新潟県に移しました。現在は8割が新潟で残り2割が他の地域にいます。

・十日町市での活動について
これまで市役所のフリーマガジンや移住関連の冊子、求人情報が載るようなウェブサイトを作らせて頂きました。その他にも市内のコワーキングスペースの運営も行っています。最近では南魚沼市の石打丸山スキー場から徒歩30秒くらいのところにある民宿を買い、現在リノベーションをしています。

・2拠点生活での情報収集について
普段、自分からコミュニケーションを取りにいくということを心掛けています。待っていても向こうからは来てくれないので、積極的に関係を作りに行く必要があると思います。単純に2拠点生活をしていることを伝えても現地の方々からは「東京の人だしね」とかお節介すると嫌がられると思っているので、多少馴れ馴れしいぐらいの距離感で人間関係を作っていくとか、関わりを自分から持っていくということが、2拠点生活をするときの情報収集にはとても役立つと思います。

・今後、2拠点生活をしたい・検討している人たちに向けたメッセージやアドバイス
一番はなぜ2拠点生活をしなくてはならないのかということの理由を明確にすることだと思っています。単純にコロナ禍だから場所を選ばず働くことができるからや地方がいいという理由では少し弱いかなと思います。私は、2拠点生活や多拠点生活をすることで人間関係、仕事、人生の楽しみ方の広がりがあったので、いまのライフスタイルを選択しました。今はシェアハウスやゲストハウスもありますし、短期滞在に限らず長期滞在でも柔軟に対応してくれるような拠点がありますが、それでも1つの拠点で生活をするよりコストがかかります。そのコストを払ってでも2拠点生活をするメリットがあるかどうか?自分の中で判断して行動に移すことができるかどうかが非常に重要だと思います。

 
新潟と岡山の2拠点生活(新潟県出身)
長野美鳳さん(フリーランスデザイナー/新潟市在住)

新潟県出身。県内の高校を卒業後、デザイン専攻の大学に進学。
その後、県内メーカーに就職し、プロダクトデザインを担当。
退職後、留学を経てアウトドア用品などを展開しているメーカーに入社し
今年の3月に退職。現在はフリーランスのデザイナーとして活躍中。
また2018年から会社員と並行して農業活動も実施。

・2拠点生活を始めたきっかけ
県内メーカーの会社員時代に、移住関連の雑誌に友人たちとプライベートで取り組んでいた農業プロジェクトを掲載頂いた際に、同じ号で一緒だったEVERY DENIM(エブリデニム)という岡山のデニムブランドとのご縁ができたのがきっかけです。EVERY DENIMさんがデニムを表現する宿を岡山で運営しており、岡山のプロジェクトに関わる機会が増えたことと、岡山県はデニムなどの繊維関係の産地で、プロダクトデザイナーとしてもかなり興味をそそられる土地であること魅力を感じたことも大きいです。

・現在の生活について
新潟県と岡山県で2拠点生活をしています。始めたのが今年の3月からなのでちょうど半年が経ちます。現在は2ヶ月に一度、10日間岡山に滞在しています。新潟にいるときは、昼間は自宅でデザインの仕事やオンラインで打ち合わせを集中して済ませ、夕方になって少し外が涼しくなると、外に出て農作業をしています。岡山にいるときはワーケーションで岡山県外から来ている人たちとコミュニケーションを取りながら仕事をしています。岡山にワーケーションで来られる方は東京でクリエイティブをやってる方も多く、デザイナーとして刺激を受けることも多いので、そういった方々と交流できる場として使わせてもらっています。

・農業活動について
実家が兼業の米農家だったということもあり、2018年に農家出身の幼なじみ3人で「農業Crew」というユニットを立ち上げて、農産物を生産してそれを直販していくという活動を行っています。パッケージデザインや庭づくりなどのクリエイティブな部分は、デザイナーである私が担当しています。

・2拠点生活による生活の変化
フリーランスだといつ仕事をしてもいい、というのがあり仕事をする時間が不規則になりがちですが、岡山との2拠点生活をスタートしてからは新潟でしかできない仕事があるので、自分の中である程度いつまでにやらなければならないという整理をきちんとするようになりました。特に農業は新潟にいないとできないので、スケジュールに余裕を持つようにしています。新潟に軸足を置きながら、この期間は少し手が空くから、このタイミングで岡山に行こうみたいな感じでスケジュールをしっかり管理しながらやっています。

・2拠点生活で大事なこと
一番大事なことは体調管理です。色々な地域に行くとなかなか自分の心休まる場所というのをきちんと持つことが難しくなると思いますが、その中で落ち着ける場所があることで仕事のモチベーションにも繋がってくると思います。

■ご取材希望の場合
本レターでご紹介した3名の方のインタビュー・ご取材も可能です。詳細は下記担当者までお問合せください。

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ