体外から埋め込み型医療機器の位置を目視確認できる技術を開発
~光の点灯で薬剤注入用のポート位置を示し、患者と医療従事者の負担を低減~
● 体外から埋め込み型医療機器の位置を目視確認できる技術「Tellumino(TM)」(テルミノ)を開発● 埋め込み型医療機器に非接触でエネルギーを伝え、LED光源を点灯させることで容易に目視確認可能
● 薬剤注入の皮下埋め込み型ポート(CVポート)の穿刺位置を示し、患者と医療従事者の負担を低減
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:小林敬一)は、ライフサイエンス領域の安全・安心に貢献する新たな医療ソリューションとして、光(フォトニクス)の技術を用いて体外から埋め込み型医療機器の位置を容易に目視確認できる技術「Tellumino(TM)」(テルミノ)を開発しました。また、10月に開催予定の2つの学会で当技術の有効性について報告する予定です。
■背景
近年、医療技術の高度化が進み、体内埋め込み型医療機器(注1)による低侵襲治療の普及が広く進んでいます。一方で、安全・安心でユニバーサルな医療サービスの提供において医療従事者の肉体的・精神的負担の軽減が喫緊の課題となっています。
薬剤注入の皮下埋め込み型ポート(CVポート)(注2)は、患者への負担および医療従事者側の労力を軽減する有効な埋め込み型医療機器として薬剤を用いる治療用途で広く使われています。しかしながら、CVポートへ薬剤を注入するために専用の針を刺す行為(穿刺(せんし))は 、触診による間接的なCVポートの埋め込み位置確認により穿刺を行うため、位置確認に施術者の相応の訓練と技量が必要なのが現状で、穿刺時に医療従事者にストレスがかかるほか、患者の不安を増大する要因にもなっています。
■内容
Tellumino(TM)について
このたび開発したTellumino(TM)は、既存のCVポートに複数のLED光源を内蔵する機構を採用し、皮膚を通して非接触でエネルギーを伝えてLED光源を点灯させて、その光により体外からCVポートの位置を容易に視認できるようにする医療向けソリューション技術です。X線や造影剤などの特殊な機器や薬剤を用いることなく体外からCVポートに穿刺する位置が肉眼で見えることで、医療従事者や在宅医療の患者等が短時間でより確実にCVポートへの穿刺を行うことができ、機器や薬剤を用いることによる患者の精神的・肉体的負担の軽減に大きく貢献すると考えられます。加えて、Tellumino(TM)を搭載することにより、患者への負担をより軽減するようCVポートの設計を改良し、CVポートに代表される埋め込み型医療機器の発展に大きく貢献します。
<Tellumino(TM) ロゴ>
<Tellumino(TM)のしくみ(イメージ)>
体外からコイルを近づけて、体内のCVポートを光らせます。
<動物実験で用いた模擬CVポート>
学会での発表
当社では開発に際して浜松医療センター消化器外科医長 大菊正人先生、元浜松医療センター消化器外科部長・西脇医院 西脇由朗先生の指導のもと、独自の動物実験を行い、定量的なTellumino(TM)の有効性の確認を行っています。
下記学会では、両先生および慶應義塾大学理工学部名誉教授 荒井恒憲先生と共同で、Tellumino(TM)を搭載したCVポートにより穿刺の熟練者・非熟練者を問わず穿刺の確実性が向上し、触診での穿刺位置の把握が難しい厚い皮膚下への埋め込み時にその効果が顕著であることを発表する予定です。
〔発表予定学会〕
● 第45回 リザーバー&ポート研究会
会期:2021年10月1日(金)~2日(土)/オンライン開催
● 第59回 日本癌治療学会学術集会
会期:2021年10月21日(木)~23日(土)/会場:パシフィコ横浜
当社ライフサイエンス領域へのフォトニクス技術による貢献
当社は4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を保有し研究開発を行っています。とりわけ、光ファイバとレーザに代表される光(フォトニクス)の制御技術は、「光」の技術を用いた測定・診断技術の高速化や高精度化、治療時に患者が受けるダメージの低減に貢献できる潜在力を有し、「光で焼く」、「光で測る」、「光で見つける」といった要素技術は、今後の医療水準の向上に重要な役割を果たすものと期待されています。
当社は今後もTellumino(TM)を始めとするフォトニクス技術の開発を通じ、ライフサイエンス領域における具体的な貢献を進め、医療従事者および患者の皆様に広く安全・安心を届けてまいります。
<医療における古河電工のフォトニクス技術の活用例>
光で見つける 非接触給電技術
体外からの医療機器位置検知機構
Tellumino(TM)
光で測る OCT光干渉断層計
非侵襲測定機構
アトナープ社と共同開発契約締結
光で焼く 光アブレーション治療
アブレーション治療ユニット・プローブ
医療機器メーカーとの事業化検討中
関連ニュースリリース
2021年5月24日 ライフサイエンスにおける新事業領域創出を加速体外からの医療機器位置検知機構
Tellumino(TM)
光で測る OCT光干渉断層計
非侵襲測定機構
アトナープ社と共同開発契約締結
光で焼く 光アブレーション治療
アブレーション治療ユニット・プローブ
医療機器メーカーとの事業化検討中
関連ニュースリリース
https://www.furukawa.co.jp/release/2021/kei_20210524.html
(注1)埋め込み型医療機器:生体内に埋め込んで利用する医療機器。心臓ペースメーカや人工関節など。
(注2)皮下埋め込み型ポート(CVポート):皮膚の下に埋め込んで薬剤を投与するために使用します。CVポートはポート本体とチューブ(カテーテル)からなり、ポート本体は、胸部や腕に埋め込まれ、そこからカテーテル先端が心臓付近の静脈内に設置されます。薬剤はポート本体上部から穿刺された専用の針を通じ、ポート本体とカテーテルを通って血管内に投与されます。
※『Tellumino』は日本における古河電気工業株式会社の商標です。
■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
https://furukawaelectric.disclosure.site/ja/themes/182