【大阪大学】唾液で新型コロナウイルスを5分で迅速検査

大阪大学

【研究成果のポイント】 ●新型コロナウイルスを5分間の唾液計測で感度・特異度90%以上を達成 ●AIとナノテクノロジーの革新的融合技術で、高速・高精度検査が可能に ●新型コロナウイルスの臨床現場即時診断、スクリーニング検査への応用に期待 ◆概要  大阪大学産業科学研究所の谷口正輝教授、微生物病研究所の松浦善治教授(現:感染症総合教育研究拠点拠点長・特任教授(常勤))、大学院医学系研究科の朝野和典教授(現:大阪府立健康安全基盤研究所理事長)らの研究グループは、AIとナノポア(※1)の革新的融合技術の開発により、唾液の5分間計測で、新型コロナウイルスを90%以上の感度・特異度で診断できることに成功しました。  ワクチンと治療薬とともに、迅速で高い精度の検査法は、新型コロナウイルスの蔓延を防止するために必要です。早さと精度の両方を満たす新型コロナウイルス検査法がないことが、病院での即時診断や、多くの人が集まる場所でのスクリーニング検査の大きなハードルとなっていました。  今回、谷口教授らの研究グループは、1個のウイルスを電気的に検出して識別する革新的技術を開発することにより、新型コロナウイルス患者の唾液検体の5分間の計測で、感度90%、特異度96%を達成しました。これにより、臨床現場即時診断(※2)とスクリーニング検査が実現されると期待されます。  本研究成果は、英国科学誌『Nature Communications』に、6月17日(木)18時(日本時間)に公開されました。 ◆研究の背景  ワクチンと治療薬とともに、検査は、新興感染症の蔓延を防ぐために必須です。現在、PCR検査が、新型コロナウイルス検査として使われていますが、検査のスピードと精度に課題がありました。  谷口教授らの研究グループでは、1個のウイルスを電流で計測できるナノポアと、電流波形を学習するAIを融合させることで、1個のウイルスを高速・高精度に識別するAIナノポア技術を開発しました。  AIナノポアにより、培養されたSARS、MERS、SARS-2、229Eコロナウイルスを高精度に識別し、唾液検体を5分間計測するだけで、陽性・陰性を感度90%・特異度96%で検査できることを実証しました。また、培養された新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型の高精度な識別にも成功しました。  このように、AIナノポアは異なるウイルスをAI学習することで新規の病原体検出法も迅速に構築することが可能であり、今後起こりうる新興感染症に素早く対応できると期待されます。 ◆本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)  本検査法を用いた大規模フィールドテストを2021年の春のセンバツ高校野球で実施し、PCR検査との一致率100%を達成しました。本研究成果により、新型コロナウイルスの臨床現場即時診断とスクリーニング検査の実現が期待されます。 ◆特記事項  本研究成果は、2021年6月17日(木)18時(日本時間)に英国科学誌『Nature Communications』(オンライン)に掲載されました。 ・タイトル: ''Combining machine learning and nanopore construction creates an artificial intelligence nanopore for coronavirus detection'' ・著者名: Masateru Taniguchi, Shohei Minami, Chikako Ono, Rina Hamajima, Ayumi Morimura, Shigeto Hamaguchi, Yukihiro Akeda, Yuta Kanai, Takeshi Kobayashi, Wataru Kamitani, Yutaka Terada, Koichiro Suzuki, Nobuaki Hatori, Yoshiaki Yamagishi, Nobuei Washizu, Hiroyasu Takei, Osamu Sakamoto, Norihiko Naono, Kenji Tatematsu, Takashi Washio, Yoshiharu Matsuura, and Kazunori Tomono ・DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-021-24001-2  なお、本研究は、AMEDウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)/ナノポア技術と機械学習を用いた新型コロナウイルス検査法に関する研究の一環として行われ、微生物病研究所 松浦善治教授(現:感染症総合教育研究拠点拠点長・特任教授(常勤))、大学院医学系研究科 朝野和典教授(現:大阪府立健康安全基盤研究所 理事長)、大阪大学医学部附属病院、阪大微生物病研究会(BIKEN財団)、アイポア株式会社、株式会社アドバンテストの協力を得て行われました。 ◆用語説明 (※1) ナノポア  ウイルスより大きな直径を持つ貫通孔。貫通孔は、電解質で満たされる。貫通孔を流れるイオン電流を計測して機械学習することで、1個のウイルス性状を読み取る。 (※2) 臨床現場即時診断  検査室ではなく、臨床現場で、ポータブルな装置やキットを用いて行う短時間で高精度な検査システム。Point of Care Testing(POCT)と呼ぶ。 ◆参考URL  http://www.bionano.sanken.osaka-u.ac.jp/ ◆発表者のコメント(谷口教授コメント)  新興感染症は、今後も発生すると予測される世界共通の課題です。本研究で開発したAIナノポア技術は、世界中の多くの人が参加できる研究開発プラットフォームです。全ての人が、感染症におびえずに、安全・安心・健康に生活できる社会を作る技術へとAIナノポア技術が成長して欲しいと思います。 ▼本件に関する問い合わせ先  大阪大学 産業科学研究所 教授 谷口正輝(たにぐち まさてる)  E-mail: taniguti@sanken.osaka-u.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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