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京都産業大学神山天文台と国立天文台の研究グループは、地上からの観測としては初めて、パンスターズ彗星(P/2016 BA14(PANSTARRS))※の彗星核表面に含水ケイ酸塩鉱物があることを発見し、この彗星が現在の軌道で予想されるよりも高い温度に加熱されていたことを明らかにした。
京都産業大学神山天文台 河北秀世 天文台長(理学部長)と新中善晴 神山天文台職員、国立天文台 大坪貴文 特任研究員からなる研究グループは、すばる望遠鏡による中間赤外線観測(図1)の結果、地上からの観測としては初めて彗星核(彗星の本体)の表層成分を調べることに成功した。
本研究により、彗星核の直径は約800メートルであること(図2)や、観測時の彗星核表面の温度が摂氏80度程度であったことに加え、彗星核表面は複雑な有機物や含水ケイ酸塩鉱物に覆われていることを明らかにした。含水ケイ酸塩鉱物が彗星で見つかったのは今回が初めてとなる。含水ケイ酸塩鉱物の特徴を詳しく調べたところ、パンスターズ彗星は現在の軌道で予想されるよりも高い温度に加熱されていたことが明らかになった。
今回の成果は、「太陽系の化石」と呼ばれる彗星の進化や小惑星との関係を探る上で重要な成果である。今後、さまざまな進化段階の彗星の核を赤外線で観測し、含水ケイ酸塩鉱物が彗星に普遍的に存在するのか、あるいは加熱された履歴を持つ進化した彗星にのみ存在するのかを鉱物の生成機構とともに明らかにし、さらに太陽系小天体の誕生と進化について解明していくことが期待される。
この研究成果は、米国国際惑星科学誌『Icarus(イカルス)』(オンライン版)に2021年3月15日(世界時)に掲載された (Takafumi Ootsubo, Hideyo Kawakita, Yoshiharu Shinnaka, ''Mid-infrared observations of the nucleus of comet P/2016 BA14 (PANSTARRS))。
また本研究は、JSPS科研費 (課題番号:JP17K05381, JP19H00725, JP20H01943, JP20K14541) の助成を受けて行われた。
■用語解説
※:パンスターズ彗星(正式名称:P/2016 BA14 (PANSTARRS))
2016年1月に小惑星として発見され、その後、彗星活動が確認された彗星。木星族短周期彗星と呼ばれるグループに属しており、木星との重力相互作用によって軌道が大きく影響を受けている。同彗星は、2016年3 月22日16時27分(世界時)には、地球に0.024天文単位(地球・月間の約9倍の距離)まで近づいた(図3)。また、同彗星は地球との再接近付近の可視光線の観測から比較的活動度が低いことが判明しており、過去に何度も太陽に接近し、彗星の中心にある「核」からガスやダストを放出して次第に枯渇しつつある、進化した彗星である可能性が示唆されていた。
むすんで、うみだす。 上賀茂・神山 京都産業大学
<関連リンク>
・ベールに隠された彗星核の観測に成功:パンスターズ彗星(P/2016 BA14(PANSTARRS))の熱履歴を解明
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20210406_859_comet.html
・京都産業大学 理学部宇宙物理・気象学科 河北 秀世教授
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/sc/kawakita-hideyo.html
・京都産業大学 神山天文台
https://www.kyoto-su.ac.jp/observatory/index.html
▼本件に関する問い合わせ先
京都産業大学 広報部
住所:〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
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メール:kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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