三井デザインテック、東京大学との共同研究「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)の環境と働き方がもたらす効果に関する研究」を発表
―ABW先進国の北欧・フィンランド国立労働衛生研究所が全面協力
―リモートワークとともに広がるABWの働き方
三井デザインテック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:檜木田敦)は、新型コロナウイルスによってリモートワークが増加する中で注目される働き方であるアクティビティ・ベースド・ワーキング(以下、ABW)について、フィンランドの国立労働衛生研究所をパートナーに、東京大学 大学院経済学研究科 稲水伸行准教授と共同で「ABWの環境と働き方がもたらす効果」についての研究結果を発表しました。三井デザインテックでは、本研究で得られた結果を今後のワークスタイルコンサルティング及び、ワークプレイス提案に活用していきます。【調査結果トピックス】
■個人とチームのパフォーマンス向上や、コミュニティ形成のためには、各活動に適したABW環境を活用することで効果が得られる
■オフィスの滞在時間が長く、様々なスペースを使用して仕事をしているワーカーが最も「クリエイティビティ」と「ワーク・エンゲイジメント」が高い
■総合職は多くの人と接すること、管理職は様々な場所で異なる組織の人と接することがクリエイティビティの向上に繋がる
※本調査はフィンランド国立労働衛生研究所によるABW環境を測定するアンケートデータ(定性)とビーコンセンサーによる行動データ(定量)を用いて東京大学と共同で研究を実施
■研究背景
昨今このコロナ禍で日本にもリモートワークが定着しつつある中、リモートワークならではの問題点や、これからのオフィスの機能・役割について改めて考え直す企業が増えてきている状況があります。こうしたコロナ禍において働き方、働く場が大きく変化する以前より、日本においても徐々に注目度が高まっていた「自らが業務に適した環境を選択する働き方・ABW」は、現在の状況下において有効な働き方になると考えられています。
そこで、ワークスタイル・ワークプレイスに関するコンサルティングを提供する三井デザインテックでは、これまで研究を重ねてきたABWに関して新たなデータ※1を基に、ABWの働き方がもたらす効果を測定、今後の企業における個人のより適切な働き方の提案に繋がる研究に取り組みました。
※1 日本よりも早くからABWが広がりを見せている北欧・フィンランド国立労働衛生研究所が作成したABW環境の効果を測定するアンケートデータと株式会社Beacappの位置情報アプリが捉えた働き方の行動データを活用
調査研究概要と結果
■調査概要
データ(1):フィンランド国立労働衛生研究所のアンケートを元にしたWEBアンケート
データ(2):ビーコンセンサーによる位置情報アプリBeacapp Here Proで取得した行動データ
調査期間:2020年2月 対象者:三井不動産(株)ビルディング本部 社員200名
■個人とチームのパフォーマンス向上やコミュニティ形成のためには、各活動に適したABW環境を活用することで効果が得られる
フィンランド国立労働衛生研究所シニアリサーチャーVirpi氏の開発したアンケート(データ(1))項目により、ABW環境を「個人の仕事」「チームの仕事」「コミュニティ形成」のしやすさという観点で評価し、各々が仕事にもたらす効果との相関性を分析しました。(表-1参照)
【研究結果】
◆個人仕事のしやすさ(リラックスした雰囲気、集中できる環境)
⇒個人の生産性を高めウェルビーイングや仕事のやりがいに繋がる
◆チーム仕事のしやすさ(効率的に協業できる環境)
⇒相互交流や一体感、協調性など組織の繋がりを高める
⇒ウェルビーイング、仕事のやりがいに繋がる
◆コミュニティ形成のしやすさ
(交流しやすい雰囲気、コミュニティの一員と感じやすい環境、気軽に相談できる雰囲気)
⇒組織の一体感に加え、クリエイティビティにも繋がる
<表-1:フィンランド国立労働衛生研究所のアンケートによる分析 ABW環境がもたらす効果>
■オフィスの滞在時間が長く、多くのエリアを使用しているワーカーが最も「クリエイティビティ」と「ワーク・エンゲイジメント」が高くなる
「オフィスでの滞在時間」と「オフィスで使用するエリアの数」の2軸でビーコンセンサーにより取得した200名の行動データ(データ(2))の分析(図-1参照)と、WEBアンケート(データ(1))による効果分析を結びつけました。(図-2参照)
<図-1:行動データに基づくオフィスの滞在時間と使用するエリア数による4分類>
【研究結果】
ABW環境のワークスタイル(オフィス活用の仕方)により、効果の違いが見られました。
A群:「オフィスの滞在時間が長く、多くのエリアを使用しているワーカー」
⇒最もクリエイティビティとワーク・エンゲイジメントが高い傾向
C群:「オフィスの滞在時間が長いが、使用するエリアが限定されているワーカー」
⇒クリエイティビティが最も低い傾向
<図-2:行動データからみるクリエイティビティとワーク・エンゲイジメントとの関係>
■総合職は多くの人と接すること、管理職は様々な場所で異なる組織の人と接することがクリエイティビティの向上に繋がる
ABW環境のワークスタイルにおいて、具体的にどのような行動(時間・場所・人との遭遇)が効果に結びついているのかを掘り下げて検証したところ、特に「総合職」と「管理職」について異なる傾向が見られました。
【研究結果】
総合職:オフィスに滞在するだけではなく〝オフィスの中で多くの人と出会うこと″が、クリエイティビティを高めることに繋がる
管理職:オフィスに出社し滞在するだけではなく〝オフィスの中で様々なエリアを活用し、異なる組織の人と接すること″がクリエイティビティを高めることに繋がる
(図-3参照)
<図-3:総合職・管理職別にみたオフィス行動(時間・場所・遭遇)によるクリエイティビティとの関係>
【研究考察】
今後リモートワークの広がりと合わせてABWの働き方を取り入れる企業の増加が予想されます。個人の仕事は自分で最適な環境(自宅、シェアオフィス、自社オフィスなど)を選択することによって生産性を高めることが可能です。一方、チームでの協業やコミュニティの形成、また多くの人、異なる組織の人と接する環境については、リモートワークが主流となったとしても、企業が適切な環境を用意することで生産性の維持向上に繋がると考えます。
三井デザインテックでは、今後こうした働き方の変化に合わせてリモートワーク環境との併用も踏まえたオフィス空間づくりの提案にもABWを取り入れ、企業のオフィス課題解決に活用していきます。
◆「ABWの環境と働き方がもたらす効果」に関する調査研究 監修者プロフィール
大川 貴史
三井デザインテック株式会社
空間に係わるマーケティング・プロモーション・コンサルティングのマネジメントの責任者。また企業の働き方コンサルティングや、ワークプレイスコンサルティングを担当。
〔刊行媒体、情報発信〕
・Offiche (三井デザインテック発刊 年2回):オフィスワーカー向けタブロイド紙
・オフィストレンドレポート:オフィス、働き方トレンド情報発信
・Office Worker’s Data Book 1~3:オフィスワーカー調査レポート
・企業経営者調査2016・2018:経営者層へのオフィスに関する意識調査
大園 咲子
三井デザインテック株式会社
ワークスタイルやワークプレイスをテーマにした調査分析、産学共同研究を行う。また、企業におけるワークスタイルコンサルティング支援に従事。
〔産学共同研究の取組み〕
・東京大学 オフィスにおけるクリエイティブ研究
・東京大学・北里大学 オフィスレイアウト効果研究
・東京大学 ワークスタイル アクティビティ研究 等
◆三井デザインテック株式会社とは
三井デザインテックは、主に住宅・オフィスをはじめとして、ホテル・医療・福祉・学校・賃貸マンションなど、あらゆる生活・事業に必要な施設のインフィル(内外装・設備・間取り)の創造を手がけ、お客様に「心地よい、満足できる空間」をご提供しています。
最新情報はオフィシャルサイトをご覧ください。https://www.mitsui-designtec.co.jp/