【京都産業大学】天文学で探る鉄の起源 -- 100億年前の宇宙における鉄の存在量の推定に成功 -- 米国学術雑誌The Astrophysical Journal(オンライン版)に掲載

京都産業大学

京都産業大学と東京大学などからなる国際研究グループは、京都産業大学が東京大学と共同開発した観測装置を南米チリ共和国の望遠鏡に搭載してクエーサーの観測を行い、約100億年前の宇宙における鉄とマグネシウムの存在量を定量的に推定することに成功した。  京都産業大学神山天文台長・理学部の河北 秀世教授、東京大学の鮫島寛明特任助教、小林尚人准教授らの国際研究グループは、両大学が共同開発した近赤外線高分散分光器WINERED(注1)をヨーロッパ南天天文台(ESO)が所有するチリ共和国の新技術望遠鏡に搭載し、約100億光年離れたクエーサー(注2)6天体の分光観測(注3)を行った。取得したスペクトルに見られる輝線の強度から鉄とマグネシウムの存在量比を推定したところ、宇宙化学進化の理論モデルと一致することが分かった。宇宙の化学進化研究は主に年老いた星を化石として調査する方法で進められてきたが、本研究ではクエーサーを使うことでより直接的に過去の宇宙を調査する新しいアプローチを確立できた。  今後は、より遠方に位置するクエーサーの観測から、宇宙初期(宇宙年齢10億年未満)における金属合成の様子や、それらの金属を産み出す星がいつ、どのようにして生まれたかを明らかにすることが期待される。  この研究成果は、2020年12月2日午前2時(日本時間)に米国の天文物理学専門誌『The Astrophysical Journal』のオンライン版にて出版された。 むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学 用語解説 (注1)WINERED  東京大学天文学教育研究センターと京都産業大学神山天文台の研究プロジェクト「赤外線高分散ラボ(Laboratory of Infrared High-resolution spectroscopy: LiH)」が、民間企業との協働で開発した近赤外線高分散分光器である。非常に高い感度を誇り、0.9から1.3ミクロンに渡って精密なスペクトル(波長分解能28,000)を一度の露光で取得できることが特徴である。以前は京都産業大学神山天文台の荒木望遠鏡(口径1.3 m)に搭載して観測を行っていたが、2017年にチリ共和国にあるラ・シヤ天文台の新技術望遠鏡(口径3.58 m)に移設された。本研究では、2018年に新技術望遠鏡で観測したデータを使っている。現在、WINEREDは更に口径の大きいマゼラン望遠鏡(口径6.5 m)への移設計画が進められている。 (注2)クエーサー  銀河の中で中心核が明るいものを活動銀河(あるいは核の部分を指して活動銀河核)と呼ぶ。活動銀河の中でも特に明るいものがクエーサーと呼ばれる天体で、恒常的に光っている天体としては宇宙で最も明るいものである。クエーサーは見た目では星のように点の形をしているが、これはあまりに遠方にあるために構造を分解して見ることができないためで、それでも観測できることからも桁外れに明るい天体であることが分かる。その膨大な明るさを産み出すメカニズムは、銀河中心にある巨大なブラックホールが周囲の物質を引き寄せ、それらの質量を光のエネルギーに変換しているという説が有力だと考えられている。 (注3)分光観測  プリズムや回折格子を使い、光を波長ごとに分けて観測する方法を指す。波長ごとに光の強度をプロットしたものは、スペクトルと呼ばれる。クエーサーのスペクトルには様々な物質固有の波長をもつ輝線が見られ、それを調べることでどのような物質がどれだけ存在しているか、天体までの距離などを調べることができる。 関連リンク ・天文学で探る鉄の起源--100億年前の宇宙における鉄の存在量の推定に成功  https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20201202_859_winered.html ・京都産業大学 理学部宇宙物理・気象学科 河北 秀世教授  https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/sc/kawakita-hideyo.html ・京都産業大学 神山天文台  https://www.kyoto-su.ac.jp/observatory/index.html ▼本件に関する問い合わせ先 京都産業大学 広報部 住所:〒603-8555 京都市北区上賀茂本山 TEL:075-705-1411 FAX:075-705-1987 メール:kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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