運用者の視点:中国の『オンライン教育』
【ポイント1】新型コロナウイルスへの対処で特需となった『オンライン教育』
■新型コロナウイルスの影響により、中国でも観光や小売、外食、運輸産業などが軒並み大きなダメージを受ける一方で、特需ともいえる需要拡大がみられた業界もあります。代表的なのはインターネット通販やオンラインゲーム、各種デリバリーサービスなど、いわゆる「巣ごもり消費」に関連する分野です。こうした動きは、新型コロナウイルスの収束とともに落ち着き、需要の伸びはいずれ従来のペースに戻ると考えておくのが妥当です。一方、短期間でサービスの質を高め、あるいは選択肢を増やしたことで、特需後の減速の程度が相対的に小さいと期待される分野があります。それが中国の『オンライン教育』です。
【ポイント2】中国が発表した方針「停課不停学」とは
■新型コロナウイルス感染拡大のさなか、『オンライン教育』への中国の官民の対応は迅速でした。日本の文部科学省に相当する中国教育部は、春節休暇中の1月27日に全国の教育機関を対象に始業延期を通達し、その2日後の29日には、「停課不停学」の方針を発表しました。これは、「休校しても学習は続ける」という意味で、既存のオンラインプラットフォームを用いて教育活動を維持することを宣言したものです。これと前後して、複数の民間企業からも、教育活動を支えるオンラインの動画プラットフォームや教育コンテンツの無償提供などが発表されました。教育専業企業のみならずアリババのような大手IT企業も、既存のオフィス用管理ツールに多数の生徒の授業への同時参加や出欠管理を可能とするオンライン授業機能を追加し、多くの教育機関が採用に動きました。
【今後の展開】『オンライン教育』の現状と今後の発展
■実は『オンライン教育』市場は、新型コロナウイルスの感染拡大前から、持続的な成長が期待できる分野とみられていました。とりわけK12(幼稚園年長から高校卒業までの13年間に該当する世代)を対象に、定期テストや受験対策を提供する分野(いわゆる学習塾)では、各社ともにオンライン化を推進中でした。なお、足元では、新型コロナウイルスでオンライン学習塾が乱立し、過大広告や過剰な売り込みなど、消費者の苦情が増えているとの報道も出ています。しかし、オンライン学習には地域間格差がなく繰り返し学習できるというメリットが大きく、これは自宅待機中の経験として保護者や児童・生徒の間で共有されています。今後、サービスの質が劣る中小事業者を中心に淘汰の波が押し寄せるとみられますが、大手事業者を中心に、教育ビジネスにおけるオンラインの存在感は、着実に高まっていくとみています。
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