日本経済大学・落合康裕准教授の著作『事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント』が「ファミリービジネス学会賞」および「名東賞」を受賞 -- 本邦初の経営承継の本格的研究

日本経済大学

日本経済大学経営学部(東京渋谷キャンパス)・落合康裕准教授の著作『事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント』(白桃書房、2016年)が、第10回ファミリービジネス学会全国大会において「ファミリービジネス学会賞」を受賞。また、実践経営学会第60回全国大会において「名東賞」を受賞した。「同族経営」などとも呼ばれるファミリービジネスはわが国の企業の95%を占めるともいわれ、その分析や展望に関心が高まっているが、講評ではそれぞれ「極めて骨太な、優れたファミリービジネス研究」「現経営者に限定せず、後継者や利害関係者まで調査を広げたところに革新性がある」など、極めて高い評価を獲得している。  ファミリービジネスとは創業者の家族や親族が代々経営に携わる経営形態のことで、「オーナー企業」や「ファミリー企業」「同族経営」などとも呼ばれる。  「Family Business Network Japan」によると、ファミリーによって所有・経営されている企業は世界の企業の約70%を占め、とりわけ日本では約95%の企業がファミリービジネスであるとされる。日本経済大学では2015年に、同大教員らを中心とした研究グループによる『ファミリービジネス白書2015年度版』(監修:後藤俊夫・日本経済大学経営学部長)を世界で初めて刊行。同大は、日本経済の基盤をなすファミリービジネスの特質の解明に向けた研究拠点として注目を集めてきた(注※)。  こうした中、9月9日には「第10回ファミリービジネス学会全国大会」(於:早稲田大学)が開催され、前出の白書では企画編集委員長も務めた日本経済大学・落合康裕准教授の著作『事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント』(白桃書房、2016年)が、優れた研究業績に贈られる「ファミリービジネス学会賞」を受賞した。  授賞式においては、奥村昭博教授(前ファミリービジネス学会長)より、「本書は極めて骨太な、優れたファミリービジネス研究である。我が国においてかくも綿密な研究が出てきたのかということを高く評価したい」と講評された(『ファミリービジネス学会誌』第6号,p.43より引用)。  さらに、9月10日に開催された「実践経営学会第60回全国大会」(於:宮崎大学)では、落合准教授の同著が企業・産業に関する実証・実践研究の発展に寄与する実践経営学会「名東賞」を受賞した。  審査委員会の選評では、「ファミリービジネスの長寿企業の事業承継について、現経営者に限定せずに後継者や利害関係者までインタビューなどの調査を広げているところに革新性があり、名東特別賞にふさわしい」と評価。日本企業の大半を占めるファミリービジネスにおいて、後継者育成は最も重要な経営課題であり、本書は本邦初の経営承継の本格的研究として、実務界や学界から注目されている。 (注※)日本経済大学(東京渋谷キャンパス)経営学部経営学科は2018年4月、「起業家コース」を「起業・事業承継コース」に名称変更。事業経営に必要な経営理論や経営管理手法を学修し、起業家精神を養成する。 【2016年度ファミリービジネス学会賞 講評より(全文引用)】  本書は極めて骨太な、優れたファミリービジネス研究である。我が国においてかくも綿密な研究が出てきたのかということを高く評価したい。  本書はファミリービジネス研究における中心課題である事業承継というテーマを日本の老舗企業を題材にして、その内部で繰り広げられる承継プロセスを分析している。その研究課題は、「生得的地位を保有する後継者は、先代世代からの伝統の継承という制約的であり且つファミリーの内部者であるが故に自律的であるという二律背反状況が混在するとされる承継プロセスにおいて、いかに能動的行動をとり正当性を獲得するか」というものである。この研究テーマの設定は、事業承継に関する分厚い先行研究と、ファミリーアントレプレナーに関する先行研究を結合させて分析枠組みが設定されている。この先行研究のサーベイも極めて示唆に富むものである。そこで本書は、4社の老舗企業における承継プロセスが丹念な聞き取り調査によって記述されている。そこでは生々しい先代、後継者、関与者との間の承継をめぐる課題が記述されている。まさに後継者は伝統を守るということと革新を起こすという課題の間で大いなるジレンマを抱くことになる。本書ではそれを制約と自律性という概念でとらえている。後継者はこのジレンマの解消を目指して正当性の獲得をしようとするのである。そこにはいくつかの変数が働く極めてダイナミックなプロセスが生じてくる。本書はこのダイナミズムを詳細に分析している。  本書は日本のファミリービジネス研究を大きく前進させたといえよう。これまで事例研究ベース、あるいは多数サンプルに基づく研究が主であったが、ここに理論ベースの研究が日本で行われるようになったという意味で本書の意義は大きい。さらに本書は今後の課題だとしているが、多くの悩める先代経営者、後継者あるいは従業員などにとって大きな実践的インプリケーションを与えている。もちろん、これが正解という意味ではなく、一つの大いなるベンチマークを示したという意味で評価したい。本書はまだまだ将来取り組むべき研究課題を内包させている点も評価したい。  以上をもって2016年度ファミリービジネス学会賞の表彰理由としたい。 (奥村昭博 静岡県立大学副学長) ■落合康裕准教授 プロフィール ◆略歴 関西大学商学部商学科卒業 神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了 神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了 博士(経営学)(神戸大学) ◆担当科目 企業論、経営史、経営学史、ゼミ ◆専門分野 経営学 ◆所属学会・主な社会活動 所属学会: 組織学会、日本経営学会、企業家研究フォーラム、日本ベンチャー学会、事業承継学会、実践経営学会、経営史学会、経営行動科学学会 社会活動: 『ファミリービジネス白書』企画編集委員長(2015.6~) 一般社団法人 100年経営研究機構 顧問(2017.4~) ファミリービジネス学会 理事(2017.9~) 日本政策投資銀行設備投資研究所「DBJ金融アカデミー」 講師(2017.12~) ◆主要著作・論文・発表等 ○主要著作: 1.単著(2016)『事業承継のジレンマ-後継者の制約と自律のマネジメント-』白桃書房 2.共著(2016)『1からの戦略論』碩学舎[第二章分担] 3.編著(2015)『ファミリービジネス白書2015年度版』同友館[企画編集委員長] ○主要論文: 1.【査読付き】 ''Proactive Behavior of Successors in Japanese Business Succession''Entrepreneurship and Social China, Japan, and South Korea, Nanjing University Press, pp.174-196. 2.【査読付き】「事業承継と世代継承性」『事業承継』第6号pp. 18-29. 3.「中小企業の事業承継と企業変革:老舗企業の承継事例から学ぶ」中部産業連盟機関誌『プログレス 2016年11月号』, pp. 9-14. 4.【査読付き】''Business Succession and Successor Legitimacy in Well-Established Family Companies in Japan''International Journal of Business and Information, Vol. 11, No. 03, pp.316-340. 5. ''A New Epoch of Japanese Family Businesses Continuity and Innovation of Centennial Firm'' Transactions of the Academic Association for Organizational Science, Vol. 4 (2015) No. 1, (Co-author; Toshio GOTO, Jungwook SHIM, Keita KATO, Yasuhiro OCHIAI) 6.【査読付き】「老舗企業における事業承継と世代間行動の連鎖性-福島・大和川酒造店における事例研究-」『事業承継』第4号pp. 64-79. 7.「事業継承と継承者の正統性-京都・近江屋ロープ株式会社の事例研究-」日本経営学会年報『経営学論集第85集』(千倉書房) 8.【査読付き】「長寿企業の事業承継における理論的研究-先行研究からの含意と課題,研究展望-」『日本経済大学大学院紀要第3巻第1号』, pp. 117-135. 9.【査読付き】「ファミリービジネスにおける企業家活動プロセス」『第9回東アジア経営管理国際学術大会論文集』, pp. 63-71. 10.【査読付き】「ファミリービジネスの事業承継研究の系譜」『事業承継』第3号, pp. 55-66. 11.【学位論文】「ファミリービジネスの事業継承研究-長寿企業の事業継承と継承者の行動-」神戸大学大学院経営学研究科博士論文. 12.【査読付き】「ファミリービジネスの事業継承と継承者の能動的行動」『組織科学』第 47 巻第 3 号, pp. 40-51. 13. 「事業継承における経営者の役割」『六甲台論集』第60巻3・4号, pp. 1-16. 14. 【査読付き】「事業承継を通じた伝統と革新」『Global産業と創造経営』, pp. 291-303. 15. 【査読付き】「老舗企業における事業承継にかんする研究」『実践経営研究』第7巻第1号(通巻第7号), pp. 85-94.(韓国実践経営学会誌) ◆受賞歴: 実践経営学会東アジア研究会・日中韓国際学術大会最優秀論文賞(大韓経営学会), 2013年 ファミリービジネス学会賞,2017年 実践経営学会「名東賞」,2017年 ◆Web(1)サイト: Researchmap  http://researchmap.jp/Yasuhiro.Ochiai/ ◆ Web(2)サイト: 幻冬舎ゴールドオンライン連載「連載円滑な世代交代を実現――事業承継の要諦」  http://gentosha-go.com/articles/-/5997 ◆その他 南京大学商学院での招待講演[事業承継と企業家活動](2014年6月) クアラルンプールでの研究発表[老舗企業のアントレプレナーシップ](2015年4月) 慧谷ファミリーサミット2017招待講演(廈門)[Japanese Family Business and Regional Society](2017年1月) ▼本件に関するお問い合わせ先  日本経済大学 経営学部 准教授(東京渋谷キャンパス)  落合 康裕  TEL: 03-6855-4676(直通)  FAX: 03-3463-1118  E-mail: y.o1973(at)soleil.ocn.ne.jp       ※(at)は「@」に置き換えてください 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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