京都芸術センターで体感する実験的な舞台芸術│南野詩恵/お寿司、山下残、kondabaによるKYOTO EXPERIMENT
京都芸術センターを舞台に、多彩な表現が交差
KYOTO EXPERIMENTは、国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を新しい形の対話でつなぐことを目指す国際舞台芸術祭です。
京都芸術センターは会場・共同主催者として、アーティストの創作・発表を支える場であるとともに、市民が舞台芸術と出会い、新たな視点や対話を育む場として、多彩なプログラムを展開します。
今年は、京都を拠点に活動する南野詩恵/お寿司が第15 回せんがわ劇場演劇コンクール劇作家賞を受賞した『おすしえジプト』を、続編となる第二幕を新たに創作して上演します。また、山下残とベトナムの詩人・作家・編集者ニャー・トゥイェン、アーティスト・コレクティブ「プロジェクト・デイ・サン」が共同制作する新作『giọt-giọt|しずくたち』を上演。本をめくる音をきっかけに、ダンスや朗読、対話を通して、言葉や身体、記憶をめぐる時間を創出します。さらに、関西という地域をアーティストの視点から探究するリサーチプログラム「Kansai Studies」では、石原菜々子、金子仁司によるユニット・kondabaが、リサーチの成果を展示と上演で発表。京都芸術センターでは展示をご覧いただけます。多様なアーティストによる実験的な表現を通して、舞台芸術の新たな可能性を紹介します。
概要
■【演劇】南野詩恵 / お寿司『おすしえジプト』
自分の手と頭で考えてみる
信仰とか、あの世のこととか
バイオミイラをつくるため、蘇りの国を目指す「わたし」——というSF めいたワンシチュエーションの会話劇『おすしえジプト』で観客を魅了し、2025 年の第15 回せんがわ劇場演劇コンクール劇作家賞を受賞した南野詩恵。今回は、同作を第一幕「Before えジプト」とし、続編となる第二幕「After えジプト」を新たに創作。同時上演により、物語を完結へと導いていく。
「神や仏を信じきれない」という南野は、父なる神に代わり、事実である「生母・雅子」を舞台に上げ、スーパーで人間の構成要素を調達する。手探りで生と死を解明しようとする姿は、切実で大まじめだ。つづく新章では「死後の審判」の場が舞台となる。強い宗教観がなくとも、なぜだかあの世の存在を信じ、誰かに裁かれることを期待するわたしたち。だが一体、信仰とは何か。死後の物語を信じるとき、現世に変化はあるだろうか。生きている間にはわからないものと対峙するなかで、生きている間にしか持てない想像力が試される。
日 時
10.17(土)19:00
10.18(日)12:00 / 18:00
10.19(月)15:00
※18日18時の回、19日はポスト・パフォーマンス・トークあり
会 場 京都芸術センター フリースペース
上演時間 120 分(予定)
言 語 日本語(英語字幕あり)
※未就学児入場不可
■【ダンス】山下残&ニャー・トゥイェン with プロジェクト・デイ・サン『giọt-giọt | しずくたち』
京都、ハノイ、ホーチミン。
詩と身体の交感から
本を編み、本を踊る
日本とベトナムの3都市で活動するアーティストが出会い、対話や詩、ダンスノーテーション(舞踊譜)を記録した「本」を編み上げ、そこから舞台作品を立ち上げるプロジェクト。表現や言論の自由への希求とともに、新たなクリエーションが生まれる軌跡を映し出す試みだ。
創作を共にするのは、振り付けの方法論に“言語”を用いてきた振付家の山下残と、ベトナム・ハノイを拠点とする詩人・作家で、独立系出版社を主宰するニャー・トゥイェン、ホーチミンのアーティストとプロデューサーによるコレクティブのプロジェクト・デイ・サン。彼らの鮮烈な感性が響き合う創作のプロセスに、ホーチミンでのリサーチを通して出会った新世代の表現者たちの実践やグルーヴも加わっていく。
タイトルの「giọt-giọt」はベトナム語で一滴一滴のしずく、ぽたぽたと、という意味。静寂のなかで観客がめくる本、その一枚一枚のページの音が、まるで水滴のようなリズムを刻む。その合奏に導かれ、ダンスや朗読、対話の時間がひらかれる。
日 時
10.22(木)14:00
10.23(金)19:00
10.24(土)11:00
10.25(日) 6:00 / 12:00
※23日のみポスト・パフォーマンス・トークあり
会 場 京都芸術センター 講堂
上演時間 60-90 分(予定)
※未就学児入場不可。
※開演後は途中入場不可。床に座ってご覧いただく作品です。
主催:KYOTO EXPERIMENT、国際交流基金、共同製作:KYOTO EXPERIMENT、国際交流基金
*令和8年度国際交流基金舞台芸術国際共同制作事業として制作
KYOTO EXPERIMENT × 国際交流基金「Sequence」事業
■【展示】Kansai Studies 石原菜々子、金子仁司 / kondaba『コンダバ川の地形図』
リサーチから作品ができるまで。
ひらかれた実験と思考のプロセスから見えるものとは?
Kansai Studiesは、フェスティバルが根ざす関西圏を対象としたリサーチプログラム。アーティストが行うフィールドワークを通して、身近な地域が内包する文化や風土に光を当て、これからの芸術表現の「原石」としていくものだ。2026年度は、京都・中書島(ちゅうしょじま)を舞台にした新作演劇『コンダバ川日誌』(p.29)を上演するkondabaの石原菜々子と金子 仁司が登場。壮大な野外劇で知られる劇団「維新派」出身の二人が実践してきた、地域リサーチから作品を立ち上げるプロセスに迫る。
「島」という字を冠した地名から、すでに物語の気配を感じるように、中書島は豊臣秀吉が築いた伏見城の旧城下町であり、大阪湾へつながる淀川の水運を支えた港湾都市としての歴史も持つ。「淀川水系の成り立ちに興味があります。それから河川敷という場の特殊性、“淀川ワンド” と呼ばれる地形特有のビオトープについても調べたい」と、初期のリサーチ構想を語った二人。日々のフィールドワークの様子は
noteにて随時公開中。また、活動報告としての展示を京都芸術センターで開催する。リサーチから作品化に至るまでの思考と実践の一端を、観客がリアルタイムで目撃できるのは今回が初となる。どうかお見逃しなく!
会期:10.3(土)–10.25(日)10:00–20:00
会場:京都芸術センター ギャラリー南
料金:無料
■【展示】Future Dictionary
アーティストのアイディアが凝縮された単語を収集し、新しい辞書をつくるプロジェクト「Future Dictionary(フューチャー・ディクショナリー)」。翻訳の過程で失われてしまう微細なニュアンスも含めて共有してきたこの企画は、2023 年に上海拠点のキュレーター、オフェリア・ジアダイ・ホァンが発案し、KYOTO EXPERIMENT と協働で展開してきた。今回は、創作にまつわるさまざまな言葉が収蔵されている京都芸術センターの図書室で、アジア圏のアーティストたちと編んできたアーカイブを紹介する展覧会をひらく。
日時:10.3(土)-10.25(日)10:00–20:00
会場:京都芸術センター 図書室
料金:無料
■【トーク】ケアと(エクスペリメンタルな!)表現のあいだで
奈良県を拠点にアートとケアの視点から多様なプロジェクトを展開するたんぽぽの家は、2024 年に障害のあるパフォーマーを公募する「S-1 グランプリ」を始動。障害、ショー、スタート、スターなどの意味を込めた「S」を冠に、近畿各地から集まった新たな才能と既存の価値観を覆す作品を紹介している。ケアと実験的な身体表現のあいだでいま何が生まれつつあるのか?たんぽぽの家の取り組みを中心に、表現の現在地をめぐるトーク。
日時:10.14(水)19:00–20:30
会場:京都芸術センター ミーティングルーム2
ゲスト:森下静香(たんぽぽの家/ Good Job !センター香芝)
聞き手:KYOTO EXPERIMENT 共同アーティスティック・ディレクター
料金:無料
アーティストプロフィール
■ 南野詩恵 / お寿司
劇作家・演出家・衣裳作家。“必要とすれば誰もが立てる場” として舞台を捉え、あらゆる場所や人との創作・鑑賞の形を追求する。「私は舞台作品を通じて、悔しかったことをやり返しています。創作で復讐/復習を果たしているのです。生きていく上でやり直したいことや、考え直したいことを、暴力という方法ではなく、作品の力を使って舞台の上でやり返したいと考えています。」という信念のもと、個人の切実な問題を粘り強く捉え直し、その人自身の生を社会的応答へと昇華した作品を発表している。2016 年に立ち上げた舞台芸術団体「お寿司」では、作・演出・衣裳を南野が担当し、生地と文字を媒体として、演者の内外からアプローチを試みる。2019 年度ロームシアター京都×京都芸術センターU35 創造支援プログラム“KIPPU” 採択。第15 回せんがわ劇場演劇コンクール劇作家賞受賞。公益財団法人セゾン文化財団2026 年度セゾン・フェローⅠ。
■山下残
1970 年大阪府生まれ。代表作に、出演者による人生の大切な一冊をダンスとして紹介する『詩の朗読』、100 ページの本を配り観客がページをめくりながら舞台が進行する『そこに書いてある』、スクリーンに映写される呼吸〈すう・はく〉の記号と俳句の引用から成るテキストを身体とリンクさせる『せきをしてもひとり』、ダンス作品をどうやって作ったらいいのか分からない毎日の声の記録『横浜滞在』、揺れる舞台装置の上で4 人のダンサーが振付の自由と不自由に挑む『船乗りたち』、本物の線路の上を往来し断片から成る世界の事象を妄想的につぶやく『大行進』、打ち捨てられたゴミを集めて繰り広げる身体コミュニケーションのネットワーク『庭みたいなもの』、インドネシア・バリ島からのオンラインレッスンを通じて先生からバリ舞踊の教えを請う『悪霊への道』、伝承の現場を疑似ドキュメントする『左京区民族舞踊』、無血革命と呼ばれたマレーシアの政権交代を現地にて選挙立候補者と共に行動・記録・再現をした『GE14』、身振りや台詞の全ては対面する相手からの承諾を得てこそ実行可能な『インビテーション』等々。
■ニャー・トゥイェン Nhã Thuyên
ニャー・トゥイェンは、ベトナムのハノイを拠点に活動する詩人、作家、編集者。20年間にわたり、執筆と本の出版に注力しながら、朗読会や上演、詩の交換、交流にも活動を広げている。何冊もの著作があり、英訳されたものに『呼吸する言葉、別の場所の生き物』(原題『từ thở, những người lạ』、2015)、『(非)殉教者ーベトナムの詩の世界で(自ら)消えた存在』(原題『bất\ \tuẫn: những hiện diện [tự-] vắng trongthơ Việt』、2019)、『狂気を隠さないで』(原題『đừng giấu cơn điên』、2024 年)が
ある。2014 年には、オンラインと紙面上で詩の場所を創り、時には小さな集まりも開催するバイリンガルな小規模出版活動として、AJAR を共同設立した。彼女の作品は、「Asymptote」「Cordite Poetry Review」「The Margins」「Words Without Borders」「Jacket 2」「Gulf Coast」「The Kenyon Review」「Modern Poetry in Translation」といった専門誌に掲載されている。また、詩の作品は英語、ドイツ語、オランダ語に翻訳されており、様々なカフェやアートスペースで朗読上演された。また、アジア太平洋地域やイギリス、ヨーロッパ各地の国際フェスティバルにも出演している。2022 年のロッテルダム国際詩祭と 2023 年 DAAD(ドイツ学術交流会)ベルリン芸術家プログラムでの受賞歴を持つ。現在は、RMIT 大学(オーストラリア)での実践研究に参加するとともに、次の詩集「水の味覚」(原題「vị nước」)の刊行を待っている。
■プロジェクト・デイ・サン Project Đẩy Sàn
プロジェクト・デイ・サン(PĐS)は、ホーチミン市にて行われている協働型プロジェクトで、新進気鋭のベトナム人パフォーマンス・アーティストたちによる学び、協働、実験を推進している。2024 年に、Đoàn Thanh Toàn、グエン・ハイ・イェン(レッド)、Nhật Huỳnh-Vũ、Trà Nguyễn といった独立系のアーティストやプロデューサーが、ゲーテ・インスティトゥート・ベトナム|ホーチミン市の支援を受けて設立した。プロジェクト・デイ・サンの文字通りの意味は「地面を押す」であり、追求すべきモデルやトレーニングの機会、そして方法が欠如しているという現状認識のもと、すでにあるものを批評的な姿勢で活用するための道具を提案している。
PĐS は二つの特徴的でありながら補完的な要素によって、成り立っている。一つ目は、協働型の能力開発ワークショップ「Rèn」(鍛造する)。もう一つは、ワークインプログレス過程にある作品のためのインキュベーションとショーケースのプログラム「Dựng」(構築する)で、ベトナム人アーティストのために、パフォーマンス創作の道具を獲得するための様々なチャンネル、そして観客に向けて上演を行う上での他にはないサポートを提供している。これまでの 2 年間、PĐS では、プロジェクト・アドバイザーとして、ワークショップ・コーディネーターとして、アーティストとして、あるいは共同プロデューサーとして、ササピン・シリワーニット(タイ)やマーク・テ(マレーシア)、Lina Oanh Nguyễn(ドイツ)、Young Boys Dancing Group(スイス)、contact Gonzo(日本)などの国際的なアーティストと協働している。
■kondaba
2018 年1 月に劇団維新派の元劇団員であったメンバーによって結成。現在、石原菜々子と金子仁司の2 名が所属。「場所」と「遊び」を創作のテーマに掲げ、都市の中に上演場所を探し、その場所で「遊ぶ」ことから創作をスタートする。
その場所の柱や壁、天井などの構造や質感から場所の持つ規則性や特徴を読み取り、身体と場所との関係性を探ることを「遊び」と呼ぶ。遊びから得た身体性とその土地が積み重ねてきた時間のリサーチ、地域住民への聞き取りなどをもとに作品を創作する。これまでに細野ビルヂング、生野地方卸売市場跡地、大内木工所跡地、Creative Center Osaka(名村造船所旧大阪工場跡地)にて公演。2025 年に上演した『棟梁ソルネス』(演出:kondaba、作:ヘンリック・イプセン)では第四回関西えんげき大賞優秀作品賞受賞。
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2026
主催: 京都国際舞台芸術祭実行委員会、京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、京都芸術大学 舞台芸術研究センター、THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)]、一般社団法人KYOTO EXPERIMENT
WEBサイト https://kyoto-ex.jp/
京都芸術センター
京都芸術センターは、芸術文化の振興を目的に2000年4月に開設されました。若い世代を含む多様な芸術家の制作支援を軸に、芸術文化に関する情報発信や、芸術家と市民の交流促進に取り組んでいます。芸術家が創作活動を行い、その成果を発表するための制作室の提供をはじめ、展覧会、演劇、ダンス、音楽、伝統芸能などの公演やワークショップを実施。芸術家の発掘・育成や伝統芸能の継承、国内外の芸術家を受け入れるアーティスト・イン・レジデンス事業にも力を注いでいます。これらの活動を通じ、京都における都市文化創造の拠点として、芸術の新たな価値を社会に開く場づくりを進めています。
