【城西大学】患者と薬剤師の認識のギャップが示す、薬剤師の役割転換 薬学部が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前後における薬剤師の役割に対する、患者と薬剤師自身の認識の変化を調査

城西大学

城西大学薬学部(埼玉県坂戸市)薬学実務教育研究部門の研究グループは、このたび、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前後における薬剤師の役割に対して、患者と薬剤師自身の認識の変化を明らかにした。今回の調査では、コロナ禍前(2017年)とコロナ禍(2021年・2022年)における患者・薬剤師へのアンケート結果を比較。薬剤師の対人業務や専門性、かかりつけ薬剤師としての役割など12項目について分析した。その結果、患者の薬剤師に対する認識には、パンデミック前後で大きな変化はみられなかった一方で、薬剤師においては「医師よりも薬の専門家である」という自己評価がパンデミック前と比べて有意に低下していることが判明した。 【ポイント】 コロナ禍前(2017年)とコロナ禍(2021年・2022年)の患者・薬剤師へのアンケート調査を比較 患者の薬剤師に対する認識は、コロナ禍を経ても大きな変化はみられなかった 薬剤師においては「医師よりも薬の専門家である」という自己評価が有意に低下していた 地域住民の健康維持への貢献については、患者の期待が薬剤師自身の認識を上回り、患者が薬剤師に地域の公衆衛生への貢献を期待している可能性が示唆された  城西大学薬学部薬学実務教育研究部門(薬学実習教育推進室、薬局管理学研究室、薬剤作用解析学研究室、栄養治療学研究室)は、基礎研究に加え、薬剤師が地域社会で果たす役割に着目した応用研究を10年以上にわたり進めている。  このたび研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前後における薬剤師の役割に対して、患者と薬剤師自身の認識の変化を明らかにした。  同研究グループは、パンデミック前の2017年と、パンデミック下の2021年および2022年に、患者と地域薬局勤務薬剤師を対象としたインターネットアンケート調査を実施。薬剤師の対人業務や専門性、かかりつけ薬剤師としての役割など12項目を解析対象とし、パンデミック前後で比較可能な11項目について比較・分析した。  その結果、患者の薬剤師に対する認識には、パンデミック前後で大きな変化はみられなかった。一方、薬剤師においては「医師よりも薬の専門家である」という自己評価がパンデミック前と比べて有意に低下していた。また、「かかりつけ薬剤師」として患者に認識されているという自己評価も低下傾向を示した。さらに、地域住民の健康維持への貢献については、患者の期待が薬剤師自身の認識を上回ることも明らかになった。  本研究は、パンデミック下において患者の薬剤師に対する認識は大きく変化しなかった一方で、薬剤師自身の職業アイデンティティーが弱まった可能性を示唆するものであり、患者と薬剤師の認識の違いを明らかにした。 【研究の背景】  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでは、医療従事者の重要性が社会的に注目され、地域薬局の薬剤師も医薬品の安定供給やワクチン調製、学校保健活動の支援など、公衆衛生に関わるさまざまな役割を担った。  一方で、このような社会情勢の変化が、薬剤師の役割に対する患者と薬剤師自身の認識にどのような変化をもたらしたのかについては、十分な検証が行われていなかった。  研究グループはこれまで、社会学の「役割理論」に基づき、患者と薬剤師双方を対象に薬剤師の役割認識を調査してきた。その継続調査として、本研究ではパンデミック前後で役割認識がどのように変化したのかを検証した。 【研究内容】  調査は、楽天インサイトの登録モニターを対象として実施。パンデミック前の2017年、パンデミック下の2021年および2022年の患者と地域薬局勤務薬剤師を対象に、薬剤師の役割に関するアンケートを実施し、比較・分析した。  調査項目は、患者とのコミュニケーション、生活習慣や服薬状況の把握、副作用への対応、かかりつけ薬剤師としての認識、薬の専門家としての評価など12項目に及ぶ。 【研究成果】 ●患者の認識はパンデミック前後で大きく変化せず  患者を対象とした解析では、薬剤師の対人業務に対する評価は、2017年と2021年、2022年との間で統計的に有意な差は認められなかった。  薬剤師とのコミュニケーションや服薬指導、専門性に対する認識は、パンデミックを経ても大きく変化していないことが示された。 ●薬剤師において専門職としての自己評価が低下  一方、薬剤師においては、「医師よりも薬の専門家である」という自己評価がパンデミック前と比較して有意に低下していた。  研究グループは、感染対策によるコミュニケーション機会の減少や、公衆衛生分野に対する自信の低下などが背景にある可能性を考察している。 ●患者の期待と薬剤師自身の認識にギャップ  地域住民の健康維持に対する薬剤師への期待については、患者の期待が薬剤師自身の認識を上回った。これは、患者が薬剤師に地域医療や公衆衛生へのさらなる貢献を期待している一方で、薬剤師自身はその期待に十分応えられていないと感じている可能性を示している。 【今後の展開】  本研究は、パンデミックという社会的変化の中で、患者の認識以上に薬剤師自身の職業意識に変化が生じた可能性を示した。研究グループでは、本研究成果を踏まえ、今後は次のような方向性が重要になると考えている。 ●薬剤師が専門職としての自信を取り戻すことが重要  コロナ禍における自己評価の低下は、特殊な環境下で生じた心理的反応である可能性もある。一方で、患者からの客観的な評価は維持されており、その結果を踏まえた職業意識の再構築が期待される。 ●薬剤師の役割を再定義  従来の「薬を渡す専門家」から、「地域の公衆衛生を守るゲートキーパー」へと役割を発展させていくことが求められる。 ●患者の期待に応える新たなプロフェッショナリズムの確立  感染症対策やワクチン、健康相談などを通じて、薬局が地域全体の健康づくりに貢献し、患者の高い期待に応える新たなプロフェッショナリズムを確立していくことが期待される。 【論文情報】 論文名: 地域における薬局薬剤師の役割に関する認識―新型コロナウイルス感染症パンデミック前とパンデミック下の患者と薬剤師比較― 掲載誌: 社会薬学(2025年44巻2号 p. 60-69) 著者: 高橋 直仁,吉田 暁,堀井 徳光,大嶋 繁,三ヶ田 潤哉,大島 新司,小林 大介 DOIリンク: https://doi.org/10.14925/jjsp.44.2_60 [関連する過去の研究成果] 1)Identification of the discrepancies between pharmacists' and patients' perception of the pharmacist's role as an advisor on drug therapy based on social science theory ・掲載誌: Biological & Pharmaceutical Bulletin ・DOIリンク: https://doi.org/10.1248/bpb.b15-00565 ・公開: 2015年12月 2)Discrepancies between patients’ and pharmacists’ perceptions of the role of community pharmacists as advisors on the use of pharmaceuticals in Japan: a comparison prior to and following revision of the Pharmacists’ Act ・掲載誌: SAGE Open Medicine ・DOIリンク: https://doi.org/10.1177/20503121198387 ・公開: 2019年3月 ▼本件に関する問い合わせ先 <研究に関すること>  城西大学 薬学部教授 大島 新司  E-mail: soshima@josai.ac.jp <報道に関すること>  城西大学広報課  住所: 埼玉県坂戸市けやき台1-1  TEL: 049-271-7543  E-mail: koho@stf.josai.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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