with Blue : SDGs取り組み企業インタビュー vol.5 株式会社建設技術研究所
「リアルタイムの水害リスク把握 ~RisKmaが支える防災・減災の最前線~」
あおぞら銀行の「with Blue」では、社会のサステナブルな発展に貢献する企業の応援記事を投稿します。毎回の記事を通してサステナブルな社会について話すきっかけをつくること、そして、サステナブルな社会の実現について考えたり話したりすることが日常として根付くことを目指しています。
第5回目は、株式会社建設技術研究所(以下(株)建設技研)を紹介いたします。
(株)建設技研は、社会インフラ整備において、国や自治体などの発注者の技術パートナーとして、企画・調査・設計・施工管理・維持管理等を請け負う、いわゆる「建設コンサルタント事業者」として国内大手の一角を担う企業です。特に河川分野では、長年業界トップの座を占め、洪水・浸水被害が増加している昨今、非常に重要な役割を担っていらっしゃいます。
今回は、同社が建設コンサルタント事業者としての知見を活かして開発し、サービスを展開する水害リスクマッピングシステム「RisKma」についてお話を伺いました。
記事を読み終えるまでの時間:5分
目次
深刻化する水害
RisKmaの開発
RisKmaの広がり
(株)建設技研が見据える未来
結びに
深刻化する水害
インタビュアー:
近年、水害が増えているとよく耳にします。
(株)建設技研 東京本社 水システム部 矢神主任技師長(以下、「(株)建設技研 矢神氏」):
気候変動の影響で、降雨が局地化、激甚化することが増えました。今まであまり雨が降らなかった場所に大量の雨が降ることもあります。
昔は山に降った雨が川に集まって氾濫するのが典型的なパターンでした。しかし今は平地でいきなり強烈な雨が降ることも珍しくありません。
インタビュアー:
自治体による水害対策は進んでいるのでしょうか。
(株)建設技研 矢神氏:
ハード面の対策としてはダムや堤防、下水道の整備等が挙げられます。当社の河川計画系の部署では、まさにダムをどこに造るか、堤防の高さをどうするかなどを考える業務を行っています。
これらの効果は大きいものの、整備には多額の資金が必要になります。都市部でない地域では、河川の整備が行き届かず安全度が低い場所もあります。
ですから、自治体へ情報を提供することで対応を迅速化したり、住民への避難勧告に繋げたりするソフト面での支援も重要となってきます。
RisKmaの開発
インタビュアー:
そうした中でRisKmaを開発されたわけですね。きっかけは何だったのでしょうか。
(株)建設技研 矢神氏:
私たちは従来から国土交通省や都道府県に水防警報を出すシステムを提供する等の洪水対策に関する業務を行ってきました。
こういった取り組みを広く国民に還元できないかと考えて開発し、2017年から提供を始めたのがRisKmaです。
RisKmaは日本で初めてリアルタイムの内水(※1)リスク予測を提供したシステムです。従来は大雨の発生は予測できても、実際に浸水が起こるのか、内水リスクがどの程度かといった情報を得る手段がありませんでした。RisKmaの公開により、これらの情報を誰でも確認できるようになりました(※2)。自治体向けのサービスも展開しており、導入初期には自治体と連携しながら、浸水や水位の予測について共同研究のような形で取り組みを進めてきました。こうした積み重ねを経てサービスは広がり、現在では全国20の地方自治体にRisKmaをご利用いただいています(※3)。
インタビュアー:
水害リスクの分析には御社が河川分野で積み上げてきたノウハウが生かされているんですね。
(株)建設技研 矢神氏:
昨今はAIの発達により、河川に詳しくなくともある程度水位を予測することができるようになりました。しかし、河川の特性を理解し、注意すべき点をしっかりと把握していないと、AIによる予測が正しいかどうかの判断はできません。
インタビュアー:
例えば、台風とゲリラ豪雨を比べると予測の難しさは違うものでしょうか?
(株)建設技研 矢神氏:
大きく違います。洪水を予測するためには雨の予報が正確である必要があります。台風の予報は概ね当たりますが、ゲリラ豪雨だと一時間先でも予測することが難しいこともあります。天気予報の精度が向上することにより、洪水予測もより洗練されていくことが期待できます。
※1 内水とは、雨水などが排水しきれずに、住宅地や市街地にたまって起こる浸水のこと。
※2 RisKmaサービスサイト:https://www.riskma.net/ja/top
※3 自治体への導入事例:
①柏市管路内水位観測システム https://kashiwa.riskma.jp/
②静岡市巴川浸水情報システム https://tomoegawa-system.jp/
RisKmaの広がり
インタビュアー:
洪水予測はRisKmaのメイン機能なのですか?
(株)建設技研 矢神氏:
当初は予測機能を中心としていましたが、現在では詳細な洪水予測をあえて導入しないケースも増えています。これは、自治体の皆様の声を踏まえ、まさに水害が発生するタイミングでの対応に課題が多いことが明らかになってきたためです。気象庁や各種団体が雨量や水位のデータを公開していますが、一刻を争う場面でこれらの分散したデータを整理・活用することは容易ではありません。RisKmaではこうした公開データに加え、当社独自の分析データを一元的に表示し、自治体の迅速な意思決定を支援しています。また、既存データだけでは現場の状況を十分に把握できない場合もあり、現場確認の時点ではすでに水が引いていたといったケースも少なくありません。そこで、「みるわん」という高感度監視カメラや水位計、冠水センサー等を組み合わせたパッケージを開発しました。これによって各地域のより詳細なリアルタイムのデータをRisKmaに取り込むことができ、パトロール等の負担軽減に繋がっています。
インタビュアー:
RisKmaをシステムの基盤として機能を拡張していくことで、顧客の声に応えているんですね。
みるわんを導入することで現地の正確な状況を把握することができる
(株)建設技研が見据える未来
インタビュアー:
最後に、今後の展望を教えてください。
(株)建設技研 矢神氏:
まず、RisKmaの展開に関しては、民間への導入を広げていきたいと考えています。
自治体向けと比べるとまだ実績は少ないのですが、特に川の近くに大きな工場を構えている会社等から強い引き合いを受けています。
また、より大きな枠組みとしては、従来から注力している「災害が起きないようにする」という事前防災のコンサルティングに加えて、RisKmaを始めとするサービスを通じて「目の前の危機に対応する」ことを支援するコンサルティングを推し進めていきます。
建設コンサルタントとして技術的な知見を持って顧客の相談に乗り、困りごとにワンストップで対応できるという我々の強みを活かして、今後もインフラを支えていきたいと考えています。
結びに
今回は(株)建設技研の取り組みについて、RisKmaを中心にお話を伺いました。
RisKmaは建設コンサルタントとしての河川や都市への知見を基に開発され、現場の要望に応じて次々と機能が拡充されていることが分かりました。
人手が足りない中で防災対策を推し進める必要がある自治体や、BCPを強化したい企業にとって有力な選択肢となるでしょう。
気候変動やインフラ老朽化を背景に防災・減災の必要性が今後も増していく中で、(株)建設技研の今後のさらなる活躍に期待できそうです。
写真提供元:株式会社建設技術研究所
