1945年以来毎年、偉大なアーティスト達がそのラベルのデザインに携わってきたシャトー・ムートン・ロスチャイルド。2013ヴィンテージのラベル用イラストレーションは、リ・ウーファン氏により手掛けられました。
1945年以来毎年、偉大なアーティスト達がシャトー・ムートン・ロスチャイルドのラベルのイラストを手掛けてきました。そして、年を重ねるごとに、コンテンポラリー・アート界の偉大なアーティストたちがそこに加わってきました。2013ヴィンテージのラベル用イラストレーションは、リ・ウーファン氏(1936年生まれのアーティスト・フィロソファー)に託されました。彼は、天然の素材とシンプルな形状を好み、瞑想、壮大なパワーを有する彼の魅力を織り込むこと、調和と抑制といった、人々を魅了する効果を創造しています。ムートンのための彼の作品の中では、最初ははっきりとしない紫色の線描が、徐々に鮮やかさに満ちたものとなり、それはちょうど醸造所の神秘の中で、ひたすらにその完成形へと向かっている偉大なワインのようです。
リ・ウーファン
リ・ウーファンは、1936年に大韓民国の山村で生まれ、伝統的な教育を受けながらも、西洋文化に触れていました。彼は1956年、彼の育ての国とも言える日本に移住。東京の日本大学で哲学の学位を取りました。それ以来、彼のアートは、自分自身と他人や物事との関係性、独自性、他者との相違点といったことへの一定の価値観により醸成されてきました。
彼の絵画と彫刻のキャリアは、まさに「もの派」または1960年代後半のムーブメント「School of Things」の中でスタートしました。「School of Things」は、抽象的なミニマリズムを表現し、自然の素材を用い、イタリアのアルテ・ポーヴェラと類似性があり、英語圏では、先進的なアートと捉えられています。彼は、程なくして非常に主観的で審美的な言語を発見し、表現しました。空間に於いて、彼の彫刻は、そのままの石と鋼の板やガラスを結びつけます。一方、絵画においては、単色使いのシンプルな形でありながら、様々な影が長いストロークでキャンバスに配置されたり、またはランダムな点の上に集められています。これらは、ただ一つのクリエイティブな行いの中での独創を表現しています。
彼はこうして、瞑想に資する魅了するような効果、非常な強烈性のあるアートと彼の魅力を織り込むこと、調和、そして抑制へと到達しました。
今や世界的に有名なこのアーティストは、数々の権威ある賞を受賞しています。2000年の上海ビエンナーレでのユネスコ賞や、2001年のジャパン・プレミアム・インペリアーレ。ベニス・ビエンナーレ、パリのジュ・ド・ポーム美術館、ニューヨークのグッゲンハイム美術館とニューヨーク近代美術館では、彼の作品が展示されました。日本の直島にある安藤忠雄氏が設計した、彼の作品を高く評価した美術館が、2010年に落成されました。
また、2014年には、ヴェルサイユ広場に多数の彼の作品が展示されました。彼が手がけたムートンの2013ヴィンテージのための作品では、最初ははっきりとしない紫色の線描が、徐々に鮮やかさに満ちたものとなっており、それはちょうど醸造所の神秘の中で、ひたすらにその完成形へと向かっている偉大なワインのようです。
ムートンは不変なり
ボルドー随一の成長企業、シャトー・ムートン・ロスチャイルドは、メドック ポイヤックの84ヘクタール(207エーカー)のブドウ畑から成っています。
カベルネ・ソーヴィニヨン80%、メルロー16%、カベルネ・フラン3%、プティ・ベルド1%
そのワインエステートは、土壌のクオリティやブドウの場所、日照など、ひときわ好条件のそろった自然環境の恩恵を受けています。
伝統への尊敬と最新の技術を合わせ、エステートは高い技術を持つワインメーカーや、それぞれの畑に責任を持っている栽培家からの注目を集めています。
ブドウは、手摘みされ、小さな柳かごに入れられ、振動するテーブル上で選果後、ワインを新しいオークの大樽で熟成し、その後透明な板のついたオーク樽で発酵されます。
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド(1902-1988)とその娘のバロネス・フィリピーヌ(1933-2014)という2人の類まれなる人物により、ムートン・ロスチャイルドは、アートと美の世界にも導かれました。その壮観な風景で知られるグレート・バレル・ホール、ワイン美術館、2000年に渡るワインに関係する貴重な収集品の数々、そして2013年に完成した素晴らしい新しいワイナリー。
現在、バロネス・フィリピーヌの3人の子供、カミーユ・セレイス・ド・ロスチャイルド、ファミリー企業であり、シャトーを経営するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の監査役会の会長であるフィリップ・セレイス・ド・ロスチャイルド、そしてジュリアン・ド・ボーマルシェがムートン・ロスチャイルドのオーナーとなっています。彼らの祖父と母の偉業に献身・結束し、3人全員が、急成長を実現させた「ムートンは不変なり」という哲学を永続させると決心しています。たとえ転換期のさなかにあったとしても!
ワインラベルのための絵画
1945年以降、シャトー・ムートン・ロスチャイルドのエチケットは、毎年偉大なコンテンポラリーアーティストのオリジナル作品を用いて描かれてきました。
1924年には、バロネス・フィリピーヌ(1933-2014)の父であるバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド(1902-1988)は、シャトーのファースト・ヴィンテージに敬意を表し、著名なポスターデザイナー ジャン・カルルにムートンのラベルの作成を依頼しました。その先も、この孤高の独創性は今に続いています。
1945年には、平和が戻ったことを祝うため、バロン・フィリップはラベルに、若手画家フィリップ・ジュリアンが描いたヴィクトリーの「V」を載せることにしました。この比類なき出来事が伝統のさきがけとなりました。1946年以降も毎年異なるアーティスト達がラベルのためのオリジナル作品の依頼を受けました。元々は、バロン・フィリップは、ジャン・ユーゴ、レオーナール・フィニ、ジャン・コクトーといった彼の友人の画家達に依頼していました。1955年、ジョージ・ブラックがその年のためのイラストを描くことに同意しました。その後、その時代時代の偉大なアーティスト達、ダリ、セザール、ミロ、シャガール、ピカソ、ウオーホール、スーラージュ、ベーコン、バルテュス、タピエス、ジェフ・クーンズが彼に続くこととなり、毎年新しい作品が加わっていくことで非常に魅力的なコレクションが生まれることとなりました。
現在は、ムートンのオーナーである、カミーユ・セレイス・ド・ロスチャイルド、フィリップ・セレイス・ド・ロスチャイルド、ジュリアン・ド・ボーマルシェが、自由な創作に敬意を表しつつ、アーティストの選定を担っています。多くのアーティスト達は、ワイン、お酒を飲む楽しさ、ムートンのエンブレムである羊といったテーマに魅了されています。アーティストへの作品に対する報酬はありませんが、『彼らの』ヴィンテージであるということはもちろん、ムートン・ロスチャイルドという栄誉を手にすることになります。
1981年、バロネス・フィリピーヌのイニシアティブのもと、このコレクションの展示「ムートン・ロスチャイルド、ワインラベルの絵画」が巡回するまでになり、世界中の多くの美術館で開催されました。そしてそれらは今やバロネス・フィリピーヌにより2013年にシャトーの中の醸造所と、よく知られているワイン
美術館との間に創られた壮麗な空間で常設展示されています。
2013ヴィンテージ
■天候条件と収穫
2013年の天候は、変わりやすく移ろいやすかったと記憶されるでしょう。
寒くて湿気の多い冬。冷涼で雨の多い春だったため、植物の循環がうまく行われず、開花にも影響を及ぼしました。対照的に、7月と8月は特に熱く日照量も多く、平均よりかなり少ない降水量でした。7月後半には激しい嵐が原因となり、38度の最高気温を記録しました。
水不足が9月も続いたことで、ブドウがムラ無く熟すこととなりました。カベルネは、とてもよい出来で、総じて糖度も十分で良質な酸味もたたえています。
ムートン・ロスチャイルドの収穫は、記録的な早さの9月30日から10月9日の間に、ファミリー企業バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドの従業員達の多大なサポートにより終えられました。従業員達は、畑に招かれ、摘み取り業者に加わりました。130名以上のスタッフ達が要請に応え、10月9日には695食が収穫者のためのカフェテリアでサーブされ、これは空前の記録となりました。
丹念に選果され、ブドウは柳カゴから、ムートン・ロスチャイルドの非常に大きなバット・ルームの中の桶に運ばれました。大きな変化の中でも、透明な桶用のフタを用いることで、技術スタッフは発酵の過程を微細に観察することができます。
収量は、過去40年の中でも最も少ない部類に入りますが、厳格な選定により高い品質が保たれました。
2013ヴィンテージは、ブドウを最高のものに仕上げるために注意深く取り扱われ、造り上げられ、調整されてきました。
■収穫
9月30日から10月9日
■味わい
色彩は、深紅がかった強く深い赤色。
まず最初にブラック・チェリー、ラズベリー、ブラックベリーのアロマが感じられ、空気に触れることでスパイシーで繊細なロースト香の複雑味のある香りが開いてきます。
アタックは、クリーンでフレッシュで濃厚。口の中にヴァニラ、チョコレートのニュアンスが広がり、洗練されたタンニンが味わいを支えています。
骨格はしっかりとした丸みを帯びており、深く強い香りとともに余韻が長く続きます。