低圧でも感電事故に注意!

独立行政法人製品評価技術基盤機構

~需要設備における低圧での感電事故の傾向を解説。高圧より多く死亡事故が発生~

 
 独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、需要設備※1における感電死傷事故※2について注意喚起し、事故を防ぐポイントをお知らせします。
 自家用電気工作物※3を対象に、需要設備で発生した感電死傷事故を感電時の電圧ごとに分析しました。2020~2025年度の間に発生した感電死亡事故は、高圧※4で13件、低圧※5で16件と、低圧の方が多くの死亡事故が発生しており、低圧であっても注意が必要です。
 低圧での感電死傷事故が発生した時の作業内容としては、電気工作物の修理・点検や、電気工事などの電気作業が中心ですが、建設・建築・土木作業などでも発生しています。
 電気主任技術者等の管理者や設置者、工事等の受注者、作業者の方々におかれましては、電気工作物の電圧区分に関わらず感電事故の危険性を認識し、管理者および作業者間での危険箇所の確認、絶縁用保護具の着用といった対策を講じ、未然に感電事故を防ぎましょう。

※1 需要設備:電気を使用するために、使用場所と同一の構内(発電所又は変電所の構内を除く。)に設置する電気工作物
※2 死傷事故:死亡事故と負傷事故(入院を伴う負傷者の発生した事故)を併せたもの。
※3 自家用電気工作物:ビル・オフィス・工場など、電気を多く使用する施設に設置されるような、高圧で受電する需要設備や、一定以上の出力を持つ発電設備(電気事業で用いられるものを除く)。
※4 高圧: 直流では750V、交流では600Vを超え、7,000V以下の電圧。ここでは、7,000Vを超える特別高圧も含む。
※5 低圧:直流では750V以下、交流では600V以下の電圧。

1.需要設備における感電死傷事故の状況(分析結果)

感電死傷事故件数について

 需要設備における感電死傷事故について、低圧と高圧に分けて分析しました(2026年4月時点のデータで分析)。
 図1に2020年度から2025年度における、需要設備の感電死傷事故件数を感電時の電圧別に示します。低圧での死傷事故は65件発生しており、高圧の156件と比べると少ないですが、死亡事故は低圧で16件(電圧の内訳100V:3件、200V:12件、400V:1件)、高圧で13件発生しており、低圧の方が多く発生しています。これらの結果から、低圧でも油断せず、しっかりと感電対策を講じることが重要です。
 
[図1] 需要設備における感電死傷事故件数(2020-2025年度)


事故発生時の作業内容について
 図2に低圧での感電時の作業内容の内訳を示します。電気工作物の修理・点検や電気工事といった電気作業が50件、それ以外の作業が15件となっており、電気作業を中心に事故が発生していますが、建設・建築・土木作業など、電気作業以外でも発生しているため、注意が必要です。
[図2] 低圧での感電時の作業内容の内訳(2020-2025年度)


感電死傷事故時の被害状況について
 感電死傷事故時の被害状況について、充電部への接触などによる感電(以下、「接触による感電」という。)と「アークによる火傷など」の二つに分類すると(図3)、「アークによる火傷など」の割合が低圧では高圧に比べて高いことが分かります。
 なお、感電死亡事故に関しては、過去6年間、いずれも「接触による感電」により発生しています。
 図4は、月ごとの低圧での感電死傷事故件数を、負傷内容別に算出したものです。「アークによる火傷など」については、月ごとの件数の寡多は顕著ではありませんが、「接触による感電」は7~9月の夏季に多く発生しており、特に8月に突出して事故が多いことが分かります。
[図3] 需要設備における感電死傷事故の被害状況
(2020-2025年度)
[図 4] 月ごとの低圧での感電死傷事故件数
(2020-2025 年度)


【用語の解説】
 「アークによる火傷など」は、いわゆる感電とは大きく異なり、爆発に近い現象で引き起こされます(図5)。低圧の導体間の短絡であっても、瞬間的なkW級の大電流のアークが発生し、金属の溶滴や蒸気を含む高温ガスが人体に吹き付けられることがあります。
 また、極めて高輝度の閃光による眼球や皮膚の損傷が起こる可能性もあります。
 これまでの事故において比較的多く見られる事例は、手に持った工具などで誤って端子等を相間短絡させてしまい、顔面を含む上半身を中心に広範囲に火傷を負うというものです。直接的に死に至ることはほとんどないものの、思わぬ重傷となることがあります。
 一方で、「接触による感電」は、電圧がかかっている導体に接触することで、接触箇所から接地された導体に接触している部位に向け、体内を電流が流れることにより、体内に様々な影響を与えるものです(図6)。特に、心臓付近を電流が流れた場合、低圧であっても比較的小さな電流で心臓に深刻な影響を及ぼし、死に至ることがありますので、十分な注意が必要です。
[図5] アークによる事故の概念図例
[図6] 接触による感電事故の概念図例


2.低圧での感電死傷事故の事例

事例1 事故発生年月 2025年8月 
【作業内容】電気工事の事前調査
【被害の状況】感電による心停止→死亡

当該事業場の設備工事の事前調査の際、作業員が計画外の作業として低圧分電盤内の負荷電流測定を行っていたところ、誤って充電中の二次側銅バーに接触し、感電した。
【事故の原因】
計画外作業(電流測定)が発生した際に、具体的な作業方法等の打合せを実施しておらず、また、素手で活線近接作業をしており、感電防止措置を実施していないことから感電したと推定される。
【対策例】
管理者への事前確認、停電作業、革手袋等の低圧用保護具の着用

事例2 事故発生年月 2024年8月
【作業内容】配管作業
【被害の状況】感電による心停止→AEDにより蘇生

雨天時に屋外にある配管のメッキ削り作業をするため電気式ディスクグラインダー(AC100V)のスイッチを入れたときに感電し、意識および呼吸停止状態(心停止)になったが、心臓マッサージとAEDにより蘇生した。
【事故の原因】
・機器の接地をしていなかった
・機器を接地していないことを当該事業場の担当者は確認していなかった
・当該機器の給電ブレーカーが漏電遮断器付きではなかった
・雨天時に屋外で機器を使用した
・当該事業場の工事担当者が雨天・屋外での電動工具の使用不可を下請け作業者に伝えていなかった
【対策例】
機器の使用上の注意の再確認、社内ルールの徹底、絶縁用保護具の着用

事例3 事故発生年月 2023年10月
【作業内容】電気工事
【被害の状況】感電による筋肉収縮(けいれん)に伴う骨折

工場内制御盤の修理中に、電気工事の作業員が誤って制御盤内の別電源の活線部(200V)にふれてしまい感電した。
【事故の原因】
防護手袋等の対策をとっておらず、一つ一つの回路を検電しなかったため活線部を見落とした。
【対策例】
活線作業の原則禁止、検電の徹底、防護器具の使用、作業手順の遵守

事例4 事故発生年月 2023年6月 
【作業内容】電気工事
【被害の状況】アークによる火傷

当該事業場の電気設備工事において、作業員が、誤って持っていた圧着端子を充電中の低圧動力盤母線(銅バー)上に落下させ、相間短絡により発生したアークにより、火傷負傷した。
【事故の原因】
当該事業場の電気工事において、現場代理人は、事業場が稼働中で停電が困難と考え、充電部を保護して作業可能と判断したが、保護しないまま充電部に近接した作業をさせた。
また、事業場連絡責任者は、電気主任技術者に連絡せず作業内容への助言や立会いも求めず作業を実施させたところ、作業員が誤って持っていた圧着端子を充電中の低圧母線(銅バー)上に落下させ、相間短絡により発生したアークにより、負傷したと推定される。
【対策例】
電気主任技術者への事前連絡、停電作業

事例5 事故発生年月 2025年7月 
【作業内容】足場設営作業
【被害の状況】感電による落下

当該事業場の設備工事用の足場設営作業中、作業者がホイスト電源線充電部に触れて感電し、転落、負傷(骨折等)した。
【事故の原因】
当該事業場の設備工事用の足場作業では、ホイストの電源を切っていなかったため、作業者が誤って触れて感電し、安全帯は着用していたが、フックを手すり等にかけていなかったため、転落したと推定される。
【対策例】
停電作業、充電部の保護、保護具の適切な使用


需要設備における低圧での感電死傷事故を防ぐために特に注意したいこと

管理者・設置者の皆さまへ
  • 活線作業(電気が流れている状態での作業)を避けましょう
    低圧でも、感電による死亡事故や、アークによる火傷などの負傷事故が発生しています。電気作業は、可能な限り停電状態で行うことを検討してください。
  • 高温などの過酷な環境下での作業を避けましょう
    感電死傷事故は、高温・多湿である夏期(7~9月)に多く発生しています。原因として発汗により作業員の体表や衣類の導電性が著しく上昇することが挙げられます。作業の時期・時間の見直し、空調設備の活用、スポットクーラーやファン付き作業着の導入などにより、作業環境を整えてください。
  • 作業中の危険について情報共有を行いましょう
    作業を行う設備において、感電などの危険がある場合は、事前に作業者に情報共有を行いましょう。
  • AEDの設置や、講習の実施について検討しましょう
    感電直後に意識や呼吸がない場合、AEDを使用することにより、救命できる可能性があります。
    万が一に備え、AEDの設置と、関係者への使用方法の周知や講習の実施について検討してください。

作業者の皆さまへ
  • 検電を怠らないようにしましょう
    低圧でも、感電による死亡事故や、アークによる火傷などの負傷事故が発生しています。導体に触れる前に、検電器を用いて、無電圧であることの確認を怠らないようにしましょう。
  • 作業中の感電や危険に感じたことについて情報共有を行いましょう
    作業中に感電した場合や、危険を感じた場合(ヒヤリハット)は、作業責任者や安全管理者などに報告しましょう。
  • 作業時には、手袋などの絶縁用保護具を身につけましょう
    電圧に応じた絶縁性の手袋を両手に着用することで、万が一、充電中の導体に接触しても、感電を防げる可能性があります。手袋が破損・劣化している場合などには絶縁性能が下がるため、注意してください。
    また、アークによる火傷や失明などへの対策としては、現場の状況に応じて保護面(フェイスシールド)や保護めがねなどの着用も有効です。
  • AEDの使用方法や設置場所について把握しておきましょう
    万が一に備え、作業関係者間で、AEDの設置場所(事業場に設置されていない場合は近隣の施設も含む)と使い方について把握しておきましょう。
 経済産業省から発出されている感電死傷事故に関する注意喚起や、感電死傷事故防止のための主なチェックポイント※6も、安全対策にご活用ください。
 NITEから2025年度6月に発出した情報共有に起因した感電死亡事故に関する注意喚起※7もご参照ください。

【安全対策に関係する用語】
検電     :検電器を用いて、電気回路や電気配線が電気を帯びているかどうかを判別する安全行動です。
検電器    :電気が通っているかどうかを確認するための機器です。高圧用・低圧用があります。
絶縁用保護具 :電気用帽子(ヘルメット等)、電気用ゴム袖・ゴム手袋・ゴム長靴などの作業者が身体に着用する感電防止のための安全装備をいいます。高圧用・低圧用があります。

【参考リンク】
※6 出典:「感電死傷事故に関する注意喚起」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2026/06/20260615.html
※7 出典:「感電死亡事故の8割が危険箇所の“情報共有不足” に起因 ~作業者が感電事故を防ぐポイントは?~」(NITE)
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/prs250630_00002.html



参考情報
〇詳報公表システムについて

詳報公表システムは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)が一元化された国内初のデータベースです。2020年度からの事故情報について順次公開を行っております。本システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。

< 詳報公表システム >
 https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html
 
[図7] 詳報公表システム概要


〇NITE 電力安全センターについて
NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持および運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年4月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資する様々な業務に取り組んでいます。

< NITE電力安全センターの業務紹介 >
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html
 

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ