伯鳳会グループとシーメンスヘルスケア、MRI装置の電力消費量削減に向けたモニタリング・分析を実施
~大阪暁明館病院での電力消費量モニタリング・分析に基づき、ソフトウェアアップデートによる電力消費の削減可能性を可視化~
背景
人命や医療の安全を最優先とする医療機関は、他業種と比べ止められる電力が圧倒的に少なく、安易な節電は医療リスクにもつながります。一方で、近年の電力料金の高騰は、大型医療機器を多数運用する医療機関にとって、経営面での大きな負荷となっており、必要不可欠な医療機器の安定稼働を維持しつつ、電力消費をいかに抑えるかが重要な課題となっています。
MRI装置は、脳・神経疾患や整形外科領域、がん診断などに不可欠な画像診断装置であり、近年はアルツハイマー病治療薬の使用に伴う脳浮腫や微小出血の経過観察など、治療の安全性を支える役割も担っています。一方で、MRIは他の医療機器と比べて電力消費量が大きく、1台あたりの年間消費電力量はCTの約5倍に及ぶとされ※1、CTとMRIを合わせると病院全体の電力消費の約5%を占めるとの報告もあります※2。
このような背景のもと、伯鳳会とシーメンスヘルスケアは、MRI装置の運用における電力消費量削減の余地を探り、他の医療機関にも応用可能な改善策を模索することを目的に、MRI装置の電力消費パターンのモニタリングに取り組んでいます。今回はその第一弾として、大阪暁明館病院においてモニタリングを実施し、ソフトウェアのアップデートを行うことによる削減可能な電力消費量の試算を行いました。
モニタリングの概要
- 実施施設:社会福祉法人 大阪暁明館 大阪暁明館病院(大阪市此花区)
- 対象装置:Siemens Healthineers製 1.5T MRI装置「MAGNETOM Avanto fit Upgrade」
- 計測方法:装置への電力供給系統に計測機器を設置し、電力消費データを実測するとともに、装置の稼働状況データを重ね合わせて分析
- 主な評価軸:部位別・撮像モード別の電力消費、待機(電源ON/OFF)差分、曜日・時間帯別負荷
- 計測期間:2025年10月20日〜2026年1月20日
- 期間中に実施されたMRI検査:1,175件(HEAD、SPINE、PELVIS、KNEE等の合計)
モニタリングの目的
- ユーザーインターフェースの変更や放射線技師への追加トレーニングに要する時間を考慮した上でソフトウェアのアップデートの是非判断ができるよう、アップデートによりどの程度の電力消費削減効果が得られるのかを明確にすること
- 夜間にMRI検査が実施できる体制整備を検討するにあたり、装置の電源をONにしたまま待機させる場合の増加コストについて、即応性と省エネのどちらを優先すべきかの判断ができるよう、そのトレードオフを可視化すること
- 日中の電力プロファイルでは、特に高分解能拡散強調画像(DWI)撮像時に電力ピークが生じる傾向が明瞭となった。
- 待機電力は、電源OFF時≒10kW、電源ON時≒14kWと計測された。
- これらを踏まえ、拡散強調画像を含む撮像時間の短縮および夜間などの待機電力を減少させることにより、電力消費の削減が期待できる。
ソフトウェアアップデートによる電力消費の削減可能性の試算
1.撮像分解能の最適化
| 一晩当たりの電力消費量 | 年間の電気代 | ||
| 現行ソフトウェアで「Eco Power Mode」を使用せず | 夜間電源ON | 196kWh | 2,146,200円…① |
| 夜間電源OFF | 140kWh | 1,533,000円…② | |
| ソフトウェアアップデートにより、「Eco Power Mode」を使用 | 夜間電源ON | 167kWh | 1,824,270円…③ |
| 夜間電源OFF | 119kWh | 1,303,050円…④ |
「Eco Power Mode」を使用することで、夜間の検査依頼に対応するために電源をONにしたままでも、現行の夜間電源OFFの運用からのコスト増は、291,270円/年(③-②)となります。これに人件費等を加えることにより、夜間の検査に対応する場合の実質コストを可視化できました。また、夜間の検査対応を行わない場合でも、「Eco Power Mode」を導入することで、229,950円/年(②-④)の電気代削減につながります。
これら1と2による削減効果と合計すると、ソフトウェアのアップデートにより、年間約290千円のコスト削減が見込めることが分かりました。
今回のモニタリング・分析の結果について、伯鳳会理事長の古城資久は以下のように述べています。「MRIは、患者さんに質の高い医療を提供する上で欠かせない一方、運用に伴う電力負荷が大きい装置でもあります。今回、電力消費の実測データに基づいた分析を通じ、検査や診療の質を損なうことなく省エネを推進する具体的な選択肢を確認できたことに大きな意義を感じています。医療の価値と病院経営の持続性を両立させる取り組みとして、今後も必要なアクションを進めていきたいと考えています。 」
シーメンスヘルスケア株式会社の事業開発部長鎌田素子は、以下のように述べています。
「医療機関の持続可能性を高めていくためには、装置そのものの性能向上に加え、実際の運用データに基づいた現実的な改善の積み重ねが不可欠だと考えています。今回、伯鳳会グループ様とともに取り組んだMRI装置の電力消費モニタリングでは、現場の運用を丁寧に可視化することで、診療の質を維持しながらエネルギー負荷を抑える具体的な選択肢を示すことができました。今後も医療現場と協働しながら、品質と効率の向上、環境負荷低減を通じて価値を提供してまいります。」
両者は今後も、実装、院内研修、効果検証など後続フェーズを着実に推進するとともに、ヘリウムフリーMRI装置の電力実測・従来装置との比較検討など、より先進的、実効的なテーマに取り組みます。
※1 Heye T, Knoerl R, Wehrle T, Mangold D, Cerminara A, Loser M, et al.
The energy consumption of radiology: Energy- and cost-saving opportunities for CT and MRI operation.
Radiology. 2020;295:593–605. doi:10.1148/radiol.2020192084
※2 U.S. Department of Energy, Medical imaging equipment energy efficiency. Better Buildings Fact Sheet. DOE/GO-102024-6385; September 2024
