SNS上の『不満』分析から導く、金融機関における顧客エンゲージメント戦略とは

株式会社NTTデータ経営研究所

このたび、株式会社NTTデータ経営研究所(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、 以下 当社)は、SNS上の投稿の中で表現される金融機関に対する「不満」に注目し、X上で発信された顧客の声の分析とその結果(以下、本調査)をまとめましたので、お知らせします。

今回明らかになった主なポイント(ファクトベース)
  • SNS上に投稿された顧客の「不満」を分析した結果、顧客の不満は「金融機関に対する全体的な不満」と「商品・サービスに対する不満」に大別され、後者が全体の約7割を占めた。商品・サービスに関するものとして「機能やUI/UX」に関する不満が全体の約46%に達しており、デジタル顧客体験(CX)が極めて重要な課題であることが明らかになった。
  • 預金取扱機関の区分別に比較したところ、投稿件数の差異はあるものの、不満のカテゴリーの傾向は、大手行、ネット銀行、地方銀行で大きな差は確認できなかった。
  • 商品・サービスに関する「機能やUI/UXの不満」要因として、「支店・ATMの設置数の少なさ/営業時間の短さ」や、「認証やアカウント管理に関する不便さ」、「アプリやインターネットバンキングの挙動不安定」が主要因として確認された。
  • 「金融機関に対する全体的な不満」の要因として、セキュリティ対策や個人情報管理に関する「不透明性」が主要因として確認された。
【調査目的】
顧客の満足度やロイヤリティを高めるため、金融機関が取るべき具体的なアクションに関する示唆を提示することを目的に、一般顧客が金融機関の各種サービスに対して抱く「不満」「不快」「不便」といったネガティブな感情を分析し、投稿に潜むその要因や課題を明らかにした。

【分析対象】
X(旧Twitter)上に、2025年9月までの過去1年間に投稿された、国内の預金取扱機関15行(大手行、ネット銀行、地方銀行)に関する日本語の投稿のうち、以下の分析手法に記載した手法で抽出した投稿(全29,302件)。

【分析手法】
本調査のために独自に設計したキーワード(金融機関名や各種商品・サービス名(通称含む)、不満や不快等のネガティブな感情を示す用語など)を用いて、SNS分析ツール「Talkwalker」を通じて該当する投稿を抽出し、「Talkwalker」の主要機能のワードクラウドや生成AIを用い、投稿内容の分析を行った。
 抽出結果を踏まえ、スパムやボットによる投稿、企業の投稿(広告)などのノイズデータを除去のうえ、分析を実施した。また、本調査において「単なるニュース記事等の拡散」にあたる投稿は投稿件数のカウントから除外している。

【背景】
X(旧Twitter)は、日本国内で月間6,800万人以上が利用する、情報のリアルタイム性と拡散性が高い主要なソーシャルネットワークサービス(以下、SNS)の一つです。この巨大なプラットフォーム上で日々交わされている顧客などのリアルな声について、その実態を正確に把握することは、現代の金融機関において顧客満足度やロイヤルティなどを向上させるために不可欠な要素となっています。
従来、SNS上のネガティブな投稿は、企業の広報部門が対応すべきレピュテーションリスクとして、主に「ソーシャルリスク」や「炎上対策」などの「守り」の文脈で管理されることが主流でした。しかし、SNSに投稿される顧客の自発的・リアルな意見は、一般的なアンケートなどの調査からではとらえきれない、潜在的かつ本質的な課題を浮き彫りにする可能性があります。そこで、我々は、SNS上の投稿の中で表現される顧客の「不満」に着目し、本調査を実施しました。
なお、本調査は、ソーシャルメディア分析ツール「Talkwalker」を用い、国内の銀行預金取扱機関15行に対してX上で発信された顧客の声の分析結果をとりまとめたものです。
X上のネガティブ投稿の分類結果


【主な考察】
不満の構造分析において、顧客のネガティブな感情は主に金融機関に対する「組織への信頼性」と、商品・サービスに係る「機能・UI/UX」「コスト」「サポート」の4領域に集約された。特に「組織への信頼性」においては、金融機関側が十分なセキュリティ対策を講じていても、その対策内容や実施状況が顧客に正しく伝わっていないことに起因する不安(情報の非対称性)が主要因である。
これらの領域の構造的な課題を解消し、不満をエンゲージメントへ転換するための方向性として、以下の3つの主要課題に取り組むことが重要である。
  • 第一に、「顧客とのコミュニケーション・情報発信の変革」である。セキュリティ対策状況や手数料の使途に関する透明性の高い情報開示、フィッシング詐欺等に対するプロアクティブな注意喚起体制の構築等を行い、顧客の安心感を醸成する必要がある。
  • 第二に、「DXおよび技術基盤の整備」である。レガシーシステムの近代化を通じて、既存の業務プロセスだけではなく、顧客の手続きのDX化およびデジタル完結の実現を推進すべきである。
  • 第三に、「データ活用とパーソナライゼーション」である。SNS分析に加え、多様な外部チャネルから「顧客の声(VoC)」を組織的に収集・統合するデータ基盤を整備し、AI等を活用して顧客一人ひとりのライフステージや文脈に即したパーソナライズド・サービスを提供することが、持続的な信頼関係構築、顧客満足度向上の鍵となる。

【担当者コメント】
■金融政策コンサルティングユニット マネージャー 戸田 幸宏
「本調査では、X上に投稿された顧客の不満を分析し、その不満を生み出す原因を明らかにするとともに、その不満の解消に向け金融機関が取り組むべき課題について提言しました。SNS上の不満は一見するとネガティブな情報ですが、適切に活用することによって、顧客からの期待に応えるとともに、信頼関係を強化するための重要な資産と捉えることができると考えています。おり、本レポート調査から導き出された課題は、各金融機関がおかれている状況や問題意識等と照らし合わせて、優先順位をつけて取り組んでいくことが必要と考えています」

 

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