北翔大学(北海道江別市)生涯スポーツ学部の黒田裕太准教授と中京大学教養教育研究院(名古屋市昭和区)の紙上敬太准教授らによる共同研究グループは、学力と競技スポーツの成績の関係について研究。47都道府県のテニス競技における団体戦の勝敗と高等学校の偏差値の関係を調査し、高校の偏差値とテニス競技における団体戦の成績が関わっていることを明らかにした。この結果は「文武両道」が成り立つことを支持するものであると考えられる。なお、研究成果は2023年9月9日付で『Trends in Neuroscience and Education』オンライン版に先行公開されている。
【研究成果のポイント】
●47都道府県のテニス団体戦の勝敗と高校の偏差値の関係を調査。
●勝った高校の偏差値は負けた高校の偏差値より高かったことが示された。
●この結果は、文武両道が実現可能であることを示していると考えられる。
【背 景】
過去15年間にわたる研究によって、運動習慣を身につけて体力を高めることが認知機能の健全な発達、ひいては学力の向上に重要な役割を果たすと考えられるようになっており、現在の高校の保健体育の教科書には「運動・スポーツが脳を育てる」として、学力と体力の関係(体力が高い子供ほど学力テストのスコアが高かったこと)を示した研究が紹介されている。
しかし、競技スポーツに注目した研究は少なく、学力と競技スポーツの成績の関係は分かっていなかった。そこでこのたび、黒田准教授と紙上准教授らの共同研究グループは、高校の偏差値とテニス競技における団体戦の成績の関係を調べる横断研究(注1)を行った。
【内 容】
研究グループは、47都道府県の全国選抜高校テニス大会各地区大会・全国高等学校テニス選手権大会各地区予選会における4,870試合(のべ数(注2))を対象に、勝った高校と負けた高校の偏差値を比較。その結果、勝った高校の偏差値が負けた高校の偏差値より高かったことが示された(図1A)。こうした競技成績と偏差値の関係は、男女別(図1B, C)、大会別(図1D, E)でも認められ、文武両道が成り立つことを支持していると考えられる。
【今後の展開】
この研究には、テニス競技のみに注目したこと、テニス部の生徒の学力ではなく学校単位の偏差値を用いていること、変数間でタイムラグがあること(高校入試の偏差値と入学後の競技成績)など、いくつかの研究の限界がある。そのため、今後、これらの限界を打破する研究が行われることが期待される。
【研究者コメント】
本研究は、横断研究であるため、テニス(スポーツ)をすれば学力が上がることを示しているものではありません。また、学力が高い生徒はテニスの上達が著しいことを示しているものでもありません。文武両道が成り立つことを示唆する研究結果として解釈するのが妥当だろうと考えています。
【用語解説】
(注1)横断研究
ある集団のある一時点のデータを収集し、関心がある変数間(ここでは偏差値とテニスの勝敗)の関係を調べる研究デザイン。変数間の因果の方向は分からない。
(注2)のべ数
本研究では、のべ数で4,870試合を対象としている。例えば、3回戦で負けた高校は、1・2回戦は勝った高校、3回戦は負けた高校として分析に含まれている。
【論文情報】
・雑誌名: Trends in Neuroscience and Education
・タイトル: Balancing academics and athletics: School-level athletes' results are positively associated with their academic performance
・著者: Yuta Kuroda(1), Toru Ishihara(2), Keita Kamijo(3)
・所属:(1)Department of Sport Education, Hokusho University 、(2)Graduate School of Human Development and Environment, Kobe University 、(3)Faculty of Liberal Arts and Sciences, Chukyo University
・DOI: 10.1016/j.tine.2023.100210
▼研究内容に関する問い合わせ先
<北翔大学>
生涯スポーツ学部 スポーツ教育学科 准教授 黒田 裕太
TEL: 011-386-8011(代表)
E-mail: kuroda@hokusho-u.ac.jp
<中京大学>
教養教育研究院 准教授 紙上 敬太
TEL: 052-835-7111(代表)
E-mail: k-kamijo@lets.chukyo-u.ac.jp
▼報道に関する問い合わせ先
<北翔大学>
総務部総務課
TEL: 011-386-8011(代表)
E-mail: research@hokusho-u.ac.jp
<中京大学>
広報部広報課
TEL: 052-835-7135
E-mail: kouhou@ml.chukyo-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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