保険業界が抱える5つの問題とAIが果たす役割

SAS、保険業界の専門家による、
業界リーダーたちを悩ます技術的課題とその解決方法に関する調査結果を発表

データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下 SAS)は、保険業界が抱える難題とその解決策に関する業界の専門家による調査結果および見解を発表しました。

現在、保険会社には何十億もの人々が自らの生命と日々の生活を託しているなか、業界そのものが存亡の危機に直面しています。頻発する深刻な自然災害による記録的な損失は、保険料と免責額を高騰させています。契約者が見放された高リスク市場で補償を見つけようと躍起になるなか、保険会社は大きな反発に直面しています。アナリストは、こうした市況を乗り切るための保険料引き上げやノーレートの保険引き受けは、長期的には持続不可能であると警告しています。

回避策を求めて、保険業界の一部のリーダーたちは手っ取り早い手段として生成AIに望みを託しています。しかし、欠陥のあるアルゴリズムが不当な保険金支払い拒否を行っているという疑惑は、すでに問題が山積している状況に、AIがさらなる問題を上積みしただけだと主張する批評家を勢いづける形となっています。

SASのリスク・不正対策およびコンプライアンス担当シニアバイスプレジデントであるスチュ・ブラッドリー(Stu Bradley)は、述べています。
「保険業界のリーダーたちは、AIを用いて分析成熟度を高める中で、確かに何らかの障害に直面することでしょう。しかし、AIそのものが問題なのではありません。むしろ問題の根源は、組織が自らのデータについて、またAIで予期せぬ結果が生じる可能性について理解していないことです。適切な倫理的ガイドラインと人による監視があれば、"信頼できるAI"こそがソリューションとなり、業界を再定義するために必要な知見と敏捷性をもたらしてくれます」

まさに転換点となりうる今、SASのエキスパートは保険業界が抱える問題のトップ項目5つ( https://www.sas.com/en/whitepapers/top-5-insurance-problems-and-ai-isnt-one-of-them-113861.html )について調査を実施し、見解を発表しました。保険業界が現在抱える技術的な課題に取り組むことは、AIの可能性を最大限に引き出すだけでなく、業界の将来を支えることにもつながります。

1. データの混乱には法律と秩序が不可欠
データポイントの収集が個人情報の収集と同一である場合、現在のような人工知能(AI)( https://www.sas.com/ja_jp/insights/analytics/what-is-artificial-intelligence.html )の利用を管理する法律や規制の欠如は、特にコンプライアンス業務や規制当局への報告業務が多い業界にとって、不安を引き起こすものです。EUのAI規制法、中国の暫定弁法、NAICのAIモデル公報は、保険業界にAIガイドラインを確立するための最初の取り組みですが、規制環境が流動的な中、保険会社やインシュアテックは、自主的なガバナンスの提案によって補填しようとしています。

SAS UKおよびアイルランドのAIおよび倫理担当リードであり、保険請求に関する自主的なAI行動規範( https://insurance-edge.net/2024/05/20/why-is-an-ai-code-of-conduct-needed-in-the-insurance-industry/ )の著者を支援したプラティーバ・クリシュナ(Prathiba Krishna)は、次のように述べています。「来るべき規制基準を満たすための基盤を確立するためには、保険業界も銀行業界と同様、AI機能の中のデータリネージ(データ系統化)とガバナンスを最優先にする必要があります。保険会社にとって、大規模なデータセットから貴重な知見を抽出することが重要であるのと同様に、データからエラーや不整合を一掃することも重要です。これはデータの再利用性の確保し、意思決定の精度を高め、結果の信頼性を向上することに大きく貢献します。AI教育もまた、AIの導入や、将来のコンプライアンスに対応するために、大きな決定要因となるでしょう。組織全体でデータリテラシーを向上させることで、倫理的なAI活用について全社で議論し、理解した上で、最終的に導入することができるようになります」

2. AIへの頼りすぎがリスク管理を圧迫
業界の急速なデジタル化により、AIや生成AI( https://www.sas.com/ja_jp/insights/analytics/generative-ai.html )が爆発的に市場に浸透し、ビジネスリーダーが我先にとAIの生産性向上を長期的なビジネス価値につなげようとする中で、リスクマネジャーは当然のことながら、ロボットアルゴリズムがもたらす予期せぬ結果に懸念を抱いています。

試用段階では有望に見えても、AIを本稼働させるには、責任ある安全な展開を保証する強固なインフラが必要です。一方、カスタマイズが限定的な「ブラックボックス」型AIソリューションは、一見シンプルであることが経営陣にとっては魅力的かもしれませんが、透明性と説明可能性の欠如によって組織は深刻なAIリスクにさらされることになります。

SASのリスクモデリングと意思決定担当のグローバルリーダーであり、『Risk Modeling: Practical Applications of Artificial Intelligence, Machine Learning, and Deep Learning.(リスクモデリング:人工知能、機械学習、ディープラーニングの実践的応用)』の著者であるテリサ・ロバーツ(Terisa Roberts)は、次のように述べています。「保険会社は、全社的なAI戦略と強力なガバナンスを両立させながら、実業務の中でAIを既存のシステムに統合することの重要性を深く掘り下げる必要があります。さらには、大規模言語モデルだけでなく、より広範な生成AIの活用を検討する必要もあります。たとえば、合成データ( https://www.sas.com/en_us/insights/articles/analytics/harnessing-synthetic-data-to-fuel-ai-breakthroughs.html )生成を効果的に適用することで、プライシング、リザービング、保険数理モデリングを最適化しながら、データプライバシーを強化することができます」

3. 視野の狭い補償活動が進歩とパートナーシップを停滞
保険業界においては、パラダイムシフトが起こりつつあります。ただしそれは、業界が必要なクリティカル・マスに達した場合です。IT業界は、保険会社が受け身的な補償業者から、保険契約者、消費者、企業にとっての積極的なパートナーへと進化すると予見しています。

次のような事例を、考察してみましょう。世界保健機構(WHO)は最近、世界のがんによる死亡の30%超、慢性疾患の80%は、予防可能な生活習慣に起因していると報告しました。一方、保険会社はすでに、適切な保険商品を提供するために顧客から膨大な量の健康データを収集しています。にもかかわらず、なぜこのデータを活用しないのでしょうか。

SASのEMEAおよびAP地域保険業務担当リーダーであるアレーナ・チシュチャンカ(Alena Tsishchanka)は、次のように述べています。「保険会社は、スマホアプリのような既存チャネルを通じて顧客にAIによる健康指導や個別のアドバイスを提供するなど、従来のカスタマー・エクスペリエンスを刷新することで、保険金の支払いを軽減することができるかもしれません。保険会社は、ウェルネスサービスだけでなく、気候変動やESG( https://www.propertycasualty360.com/2024/04/11/how-esg-could-transform-insurance-into-a-more-sustainable-sector/ )に関するパートナーシップのような市場ポテンシャルも真剣に検討すべきです。そのような取り組みは、保険会社の支払能力の問題への対処に役立つだけでなく、保険業界に対する世間の認識が大きく向上する可能性もあります」

適切な倫理ガイドラインを導入すれば、パートナーとしての保険会社というモデルは現実的になります。これに似た最先端のインシュアテックやパラメトリック保険と併せて、先進的な保険会社の新たな道として注目されています。

4. 隠れたデジタルリスクには一元的ソリューションが必要
今や偏在するスマートフォン技術により、今日の保険会社はネットが存在するところなら世界中どこでも市場にも参入できます。顧客の保険料負担増を軽減したい保険会社にとって、デジタルへの移行に投資することは、現代の顧客に適合した現代的な商品を投入することにつながります。

しかし保険会社がデジタル市場で勝ち残るには、ますます個々の契約者に向けてカスタマイズした保険商品とサービスを提供する必要があります。こうしたオーダーメイドのサービスと、オンラインで簡単に申し込める手軽さは、良くも悪くも、多くの潜在顧客を引き寄せています。

保険会社は、申請の量とスピードに追われています。残念なことに、保険を承認するか否かの作業に忙殺され、保険会社には詐欺を働く可能性の高い顧客や好ましくないリスクをもたらす顧客を適切に調査し、特定するための十分な時間がありません。従って、保険会社は概してこれらの顧客と、彼らがもたらすリスクを引き受けてしまっています。

不正行為やその他脅威を大量かつ正確に特定するための技術インフラを構築することは、従来の保険会社だけでなくインシュアテック企業にとっても同様に、依然として大きなハードルとなっています。また、保険金詐欺や望まないリスクを引き受けることは、保険会社の損害率や合算比率の上昇を意味し、最終的には顧客の保険料の負担増につながります。

SASのリスク、詐欺、コンプライアンス・ソリューション部門の保険リーダーであるトーステン・ハイン(Thorsten Hein)は、次のように述べています。「保険会社がデジタルで成功するには、顧客を獲得して適切なサービスを提供し、顧客がもたらすさまざまな種類のリスクとのバランスをとるための取り組みを、統合されたクラウドベースのエコシステムの中で行う必要があります。アクチュアリー、アンダーライター、不正アナリストの業務を一元化することで、保険会社はリスクに見合った顧客を相手に利益を上げることができ、同時に顧客が必要とするサービスを的確に提供しながら、顧客を守ることができるのです」

5. 生命保険:新たな脆弱性を抱えながらも、なお不可欠な存在
生命保険には、今日の保険業界を苦しめている要素が凝縮されています。生命保険会社は長い間、その収益を商業用不動産に頼ってきました。しかしコロナ禍以降、それらの資産価値は急落しています。この業界は、新たな機会を創造する必要があります。

SASのプリンシパルグローバル保険アドバイザーであるフランクリン・マンチェスター(Franklin Manchester)は、次のように述べています。「保険に加入できる権利について話すとき、車や家屋といった守るべき資産を持っていない人も存在しますが、命は誰しもが持っています。健康データ機関によると、2050年までに世界の平均寿命は78歳を超えるそうです。ポリクライシス(複合危機)により世界中でリスクが高まる中、生命保険会社は前向きな変化を促す役割を担っています。たとえば、世代を超えた貧困の連鎖につながる恐れのある多くの要因のひとつは、家族の死と、それに伴う収入の不足や扶養の欠如です。最悪の場合、扶養家族は収入ゼロという厳しい現実に直面します。生命保険はこうした経済的な困難を大幅に軽減することができますが、残念ながら、保険に加入しやすい機会がなかったり、社会的に疎外されてきたりしたために、保険から大きな恩恵を受けられるはずの人々が無保険となっています」

今こそ、標準化されたデータを組み込み、原則的な枠組みの中で保険料を決定する必要があります。デジタルプラットフォームのグローバルな展開によって、保険会社はより多くの人々に手を差し伸べ、何世代にもわたる苦しみの連鎖を断ち切ることができるかもしれません。

文脈の中で保険を再構築
保険が直面する環境的、経済的、倫理的課題に対処するには、人ならではの創意工夫が必要です。AIや他のテクノロジーは、保険業界にとってより公平で気候変動に影響されない軸となり、従来の保険会社にもインシュアテックにも競争上の優位性をもたらすことができます。

保険会社が現在の保険市場において、どのように学び、適応し、競争していくことができるかについて、さらに詳しく知るには、Top 5 insurance problems — and AI isn’t one of them( https://www.sas.com/en/whitepapers/top-5-insurance-problems-and-ai-isnt-one-of-them-113861.html )をダウンロードしてください。

*2024年8月20日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリース( https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2024/august/insurance-problems.html )の抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。

SASについて
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意思決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。

*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。

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この企業の情報

組織名
SAS Institute Japan株式会社
ホームページ
http://www.sas.com/jp
代表者
手島 主税
資本金
10,000 万円
上場
非上場
所在地
〒106-6111 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー 11F
連絡先
03-6434-3000

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