「みどりのものさし」によりグラングリーン大阪の環境価値を包括的かつ視覚的に評価・可視化 自然の力を取り込んだ都市開発を推進し、環境課題に貢献する

 株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦、以下「日建設計」)は、本年9月6日に先行開業予定の「グラングリーン大阪」においてランドスケープ・建築設計、都市計画に加え、事業全体のデザイン統括を担当しています。その一環として、このたび、緑がもたらす環境価値を包括的かつ視覚的に評価し、本質的な役割を可視化する手法を策定しました。都市に質の高い緑を取り戻すためのアクションとして、これまで見えづらかった緑の環境価値を、5つの指標「みどりのものさし」を用いて具体的な数値、ビジュアルでパッケージして評価することにより、地球環境に貢献する社会創造を目指す取り組みとなります。
※本プレスリリースにおける「緑」「緑化」「みどり」は、屋上緑化や壁面緑化など物理的に植物を増やすだけでなく、環境保全や持続可能な社会創造を実現する緑豊かな都市のオープンスペース創出を含む概念として表現しています。
図1. 「みどりのものさし」による評価結果(グラングリーン大阪)

■策定の背景・日建設計としての取り組み
 
近年、SDGs をはじめとする地球環境への配慮が叫ばれるなか、2030年までに生物多様性の保全を目指す「30by30」、2050年のカーボンニュートラルの実現を目的とする「Carbon Neutrality by 2050」など、世界的な取り組みとして地球規模で進行している環境問題を食い止めようとする動きが年々活発化しています。こうした気運のなか、ニューヨークやパリなどの世界主要都市では、豊かな緑を都市に取り戻すことがさまざまな環境 課題の解決のみならず、人間生活のQOLや不動産価値の向上に繋がり得ると捉え、公園などのパブリックスペースを起点とした都市開発における「みどり」の価値が見直されています。

 「みどり」を都市に取り戻す動きがグローバル規模でのトレンドとなっている一方で、「都市の緑」の有する多面的な価値や質を誰にでも分かりやすく伝えることが難しいという状況から、都市緑化は人や社会、都市に対してもたらす価値が見えづらく効果が理解されにくいという課題がありました。

 そこで、先行研究の調査を通じて日建設計は緑が持つ環境価値(温室効果ガスの削減、空気の浄化、温熱環境の改善、生物多様性の促進、雨水流出の抑制)をもとに、5つの指標「みどりのものさし」を策定しました。これまで総合的に評価・分析する手法が困難だったなか、5つの観点から緑の環境価値を数値やビジュアルなどで具体的に可視化することにより、緑化による環境への貢献度がより明確化され、環境課題に対して都市開発の側面からアプローチできる質の高い緑の導入がより促進されることのきっかけとなることを見込んでいます。

■「みどりのものさし」の特長概要
 緑がもたらす5つの環境価値を評価項目とし、集計データをもとに算出およびシミュレーションを行う評価方法を設定。5つの指標から、客観的な視点で都市緑地の価値を可視化します。
図2.「みどりのものさし」評価項目および方法の詳細について

「みどりのものさし」を用いた評価事例:JR大阪駅前で開発進行中のプロジェクト「グラングリーン大阪」
 JR大阪駅北側にてうめきた2期地区の都市再開発プロジェクトとして進行中の「グラングリーン大阪」では、4.5haのうめきた公園を中心に街区全体で1,600本以上の高木の緑を導入しており、緑陰や植栽・水景等の蒸発散による微気象調整効果で都心のクールスポットを創出しているとともに、公園と民地一体で雨水流出抑制やCO2固定、生物多様性への配慮を行っています。今回策定した5つの指標を用いて、このような環境価値を具体的に数値・ビジュアル化し、グラングリーン大阪の環境への貢献の可視化を行いました。
 なお、グラングリーン大阪は、米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な環境性能認証制度「LEED(リード)」の街づくり部門「ND(Neighborhood Development:近隣開発)」の計画認証と、ランドスケープのサステナビリティを主に評価する環境認証「SITES® (The Sustainable SITES Initiative)」の予備認証において、西日本で初となるゴールド認証を同時取得しました。

<グラングリーン大阪における評価および成果概要>
※「みどりのものさし」による「グラングリーン大阪」の環境価値評価詳細
https://www.nikken.jp/ja/dbook/midori_no_monosashi/
※「グラングリーン大阪」 西日本初となる「LEED-ND 計画認証」および「SITES 予備認証」を同時取得(ともに GOLD 認証) 
https://umekita.com/teaser_assets/c_assets/topics_pdf/240717_LEED_release.pdf
※インタビュー記事「都市における緑の価値を可視化する、5つの指標」(うめきた2期公式HP内)
https://umekita2.jp/focuson/1434/


1. 温室効果ガスの削減
 樹木の樹種・本数・胸高直径からグラングリーン大阪敷地全体の樹木による年間のCO2固定量を算出。年間の総CO2固定量は35.9t※1という結果となり、これは車の走行による排気ガスに換算すると地球約6.7周分※1、出力370Wの太陽光モジュールが発電する時に削減できるCO2に換算すると約190枚分※2に相当します。1,600本以上植栽されている樹木はカーボンニュートラルに貢献するだけではなく、緑視率の効果として「イノベーション」の拠点にふさわしい  創造性や記憶力の活性化にも寄与することが期待されます※3※4


2. 樹木による空気の浄化
 樹木による年間の大気汚染物質(SO2、NO2、O3)の吸収量を推計し、大気の浄化効果を算出。高木植栽により、年間の総SO2吸収量、NO2吸収量、O3吸収量はそれぞれ、4.2kg、10.7kg、16.6kgとなり、NO2吸収量は車の走行による排気ガスに換算すると、年間では地球を約3.1周走行するときに排出される量に相当します。幹線道路周辺等から発生される大気汚染物質の吸着・吸収など、グラングリーン大阪の樹木はSO2、NO2、O3を吸収し、公園内や地域の快適な生活環境の形成に貢献することが期待され、さらには森林浴効果によりNK細胞(免疫細胞の1つ)の増加や副交感神経の活性化が示唆されます※5※6

3. 温熱環境の改善
 気象条件をもとに大阪の夏期の体感温度と表面温度をシミュレート。夏の日射の厳しい時間帯(15時)で緑陰の効果により体感温度が4~6℃、表面温度が13~16℃程度下がることが確認できました。高木による緑陰は表面温度と体感温度を下げるとともに、夜間には周辺へ涼しい空気がにじみ出すと考えられ、ヒートアイランド現象の抑制にも寄与する都心の貴重なクールスポットとなることが期待されます。




4. 生物多様性の促進
 衛星画像の解析による樹林地データをもとに現況とグラングリーン大阪完成後に予想される生態的ネットワークをbefore-afterで可視化。グラングリーン大阪は樹林率を12%まで増加させ、樹林率の増加が大阪の生物ネットワークの形成に寄与し、周辺の動植物生息地ネットワークを含むネットポジティブインパクトが期待されます。都心の一等地に多様な生物が生息する環境を整えることで、来訪者が生物と触れ合う機会を提供し環境教育の効果を生み出すとともに、鳥のさえずりや生物の多様な音色が人々のストレス緩和や脳機能を高めることが示唆されます※7※8

5. 雨水流出の抑制
 雨水の貯留施設や浸透トレンチ、砕石貯留槽などの雨水流出抑制施設の効果や緑の大地の浸透能力を可視化。年降雨量の約半分(約73,500m3/yr)を流出抑制施設等により貯留コントロールしているとともに、一部雨水は植栽灌水用として有効活用されています。雨水の浸透は約34,500m3/yrに達し、緑の大地を通した浸透や蒸発散による水循環の健全化にも寄与し、土壌や空気の環境を改善されることが示唆されます。
※年降水量は大阪平年値 1,338mm/yr(1991~2020年の30年間平均値)を使用
※蒸発散量は一旦浸透した雨のうち、植物等を介して蒸発散する水量を示す


■今後の展開
 緑は環境的な価値創出に繋がるだけでなく、ストレスを軽減し幸福度を増やす※9、創造性(知的生産性)を高める※3、記憶力を向上させる※4など、人に対するポジティブな効果が期待されています。このため、今後は環境価値だけでなく都市緑化が人にどう作用するのかといった社会価値を可視化していくことも重要と考えています。都市緑化の価値を多角的に評価し分かりやすく伝え、量だけではない質の高い緑を増やし、環境問題の解決に貢献する社会創造を目指す考えです。「社会環境デザイン」を掲げる日建設計では、今後も環境や社会の課題解決に向けた取り組みを推進してまいります。

※1:CO2排出原単位出典:国土交通省HP  https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html (参照2024-03-01)
※2:建築設備設計基準 令和3年版(https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=366563
※3:Jie, Yin; Nastaran, Arfaei; Piers, MacNaughton. et al. Effects of Biophilic Interventions in Office on Stress Reaction and Cognitive Function: A Randomized Crossover Study in Virtual Reality. Indoor Air. 2019
※4:Jie, Yin; Shihao, Zhu; Piers, MacNaughton. et al. Physiological and Cognitive Performance of Exposure to Biophilic Indoor Environment. Building and Environment. 2018, Vol.132
※5:https://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1013-b1.pdf , (参照2024-03-01)
※6:森林総合研究所(2017) https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2017/20170309-03.html , (参照2024-03-01)
※7:Proceedings of the National Academy of Science, Canada. 2021
※8:https://www.env.go.jp/nature/nats/sound/pdf/panel_hypersonicsound.pdf ,(参照2024-03-01)
※9:Chalmin-Pui, Laurianne Suyin; Roe, Jenny; Griffiths, Alistair. et al. “It made me feel brighter in myself”- The health and well-being impacts of a residential front garden horticultural intervention. Landscape and Urban Planning. 2021, Vol.205


グラングリーン大阪について
「グラングリーン大阪」は、三菱地所株式会社を代表とする「うめきた2期地区開発事業」の一部で2024年9月6日に先行開業を予定しています。西日本最大のターミナル・JR大阪駅のすぐそばに位置する約11.8haの大規模複合開発で、都市公園「うめきた公園」を中心に、緑と融合した生命力あふれる都市空間を目指し、オフィス、商業施設、住宅など、さまざまな機能を有しています。日建設計は、「グラングリーン大阪」のランドスケープ・建築の設計や都市計画などの幅広い領域において「境界を越えたデザイン」の実現に貢献しています。今回の取組みも日建設計がリードし、敷地や空間の境界を越えてグラングリーン大阪全体の環境価値を可視化しました。
※プロジェクト概要:https://umekita2.jp/about/#project


9月先行開園に向けて工事中のうめきた公園 ©Akira Ito(aifoto)

■日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来124年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
URL:https://www.nikken.jp/ja/
本件に関するお問合わせ先
株式会社日建設計  広報室  Tel. 03-5226-3030  e-mail:webmaster@nikken.jp

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この企業の情報

組織名
株式会社日建設計
ホームページ
https://www.nikken.co.jp/ja/index.html
代表者
大松 敦
資本金
4,600 万円
上場
非上場
所在地
〒102-8117 東京都千代田区飯田橋2丁目18番3号
連絡先
03-5226-3030

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